7.嗔恚 | 信義〜♪ 私の中の3巻…(シンイ・二次小説)

信義〜♪ 私の中の3巻…(シンイ・二次小説)

シンイの二次小説を書かせて頂いております。
読み終わった後に、心がほんわかあったかくなるような、物語を綴っていきたいです。

「イムジャ!何をしておる!?」

「そなた達…何者だ!?」

 

二人が同時に声をあげる。ウンスは直ぐ様、チェ・ヨンの手でこの村の長と言う男から引き離された。

 

あっ…まずいと思った時には遅かった。チェ・ヨンがウンスを自分の後ろに隠し、鬼剣に手をかけようとしていたのだ!

 

「あっ!チェ・ヨン!お願い、待って!」

ウンスは後から彼の右腕を掴んだ。

 

「イムジャ!どういうことなのだ?こやつは誰なのです?!」

顔はこちらを向いていないが、背中から空気が揺らぐ程の怒りが伝わってくる。

 

「…とても大切な…知っている人に似ていただけ…。ごめんなさい」と下を俯く。

風避けを目深に被っているので、その表情は見えない。

 

チェ・ヨンは鬼剣の柄から手を離し、振り向くとウンスの肩を掴んだ。

「抱きつかねばならぬほどの者なのですかっ?!」

 

「今は…話したくないの…でも必ずあなたに話すから…その時まで待って」

 

「イムジャ!俺がどのような想いで…」

「お前たちは何者なのだ?」

 

また、二人の声が重なる…。チェ・ヨンが長の喉元に鬼剣をガッと充てがい

「黙っておれ、今イムジャと話しておる…」ハッと周りにいる者達が息を呑む程の怒気を、チェ・ヨンは身体から放っていた。

 

いけない…その時、ウンスの脳裏には鮮明に1年前のことが蘇ってきた…。自分を守るためだけに命をかけキ・チョルと戦ったチェ・ヨン…徳興君との結婚を止めさせようと助けに来てくれたチェ・ヨン……彼は信じてもらえないことが何より辛いのに…やっと彼の元へ戻って来られた…こんな想いをさせるために1年間死に物狂いで足掻いてきた訳じゃないわ…彼を守りたいから…今言わないと、また彼を傷付けてしまう…

 

「チェ・ヨン…話すから…もうやめて。でもその前にこちらの長の方と話された方が良いでしょ?私の話はそのあとで…ね?」とウンスは肩を掴まれた手を取り、両手で包み込む。

 

「…はぁ…必ずですよ。」

チェ・ヨンは深い溜息をつき、渋々後ろを振り向いてこの村の長と言う男と向き合った。年の頃は40代半ば…髪は一部分が白くなっている。目は切れ長…聡明で温和な印象を受ける。

 

「お主がこの村の長であるか?俺はチェ・ヨンと申す。そしてこの方は医員である。我らは現王、恭愍王に仕えておる者だ。先頃、山賊に襲われたが捕まえてみればただの農民であった。この村のな…話を聞けば、よくよく貧しい暮らしをしておるとのこと…未だ、この地域の郡守からの税の取立てが激しいのか?」

 

「チェ・ヨンさん…王の…えっ?王様の側近のお方なのですか?これは大変失礼を申し上げました。私はこの村の長をしておりますヨンイルと申します…。此度は村人が大変失礼をいたしたようで…心よりお詫び申し上げます。はい…この辺り一体を領地に持つキム・ソンミンと言うものが郡守でございますが…ご覧になって頂ければお分かりかと思いますが…田も畑もこのような状態が何年も続いております。」

 

「なにゆえに、田畑が耕せぬのだ?」

 

「なぜかと申せば、金や銀…麻布や苧麻、熊や虎の革、人参など珍品を持って参れと郡守の要求がこれでもかと年々酷くなる一方で、このような特産物を求め深山に入らねばならなくなり…農業に充てる時も…人もおらぬからでございます」

 

「さようであったか…ここにおる者達は、年寄りが多いように思うが…それに女人もあまりおらぬよう見受けられるのだが…」

 

「…はい…だんだんと要求に答えられなくなって参ると、その代わりにと村の女達や働き盛りの男達を税のかわり搾取して行くのです…私の妻も娘も連れて行かれました…」

 

「そうであったか…キム・ソンミンの事は俺に任せてもらえるか?そのような輩、陛下がお許しにはならぬであろう。その代わり山賊などもう止めるが良い」

 

「はい、税の取立てさえ減り家族が戻って参れば、やりたくもない山賊など…今すぐにでも止めさせましょう…」

 

チェ・ヨンはこの男に対する見方がだいぶ変化している自分に気付く。こんな小さな村の長にしておくのはもったいないような人物であった。…しかし…この男がイムジャの近しい者…誰に似ておると言うのだろう。

 

「大体のことはわかった。悪いようにはせぬ…。しばしこの方と二人話がしたいんだが、どこか場所はないか?」

 

しばらく考えていたヨンイルだったがふと思い立ったようであった。

 

「はい、あちらの家が空家にてございます。そろそろ暗くなって参ります…。何ももてなしは出来ませぬが、どうぞお泊り下さい」

 

「あぁ…悪いな。そうさせてもらおう。トクマン!テマン!火をもらい、持って参った食料で皆に何か作ってやれ!」

 

「はっ!お任せ下さい」

 

チェ・ヨンはウンスの手をぐいぐい引っ張り、ヨンイルの指差した家へと入っていく。


「イムジャ…もう良いか?先程の長が…一体誰に似ておったのですか?」


ウンスの風避けを外し、その表情を確かめながら、少し震える声でチェ・ヨンは聞いた。



はぁとウンスは溜息をつく。

「…父に…お父さんに…似ているの…歳は違うけど、若かった頃のお父さんに…それだけなのよ。不安がらせてごめんなさい…」

ウンスはチェ・ヨンの首にそっと手を回し抱き寄せる。


「父上に…そうだったのですか…。すまぬイムジャ…俺は、あなたの事になると普通でおられぬ…叔母上に言われずとも己でわかっております。あなたの前では…俺は独占欲の強いただのちっぽけな男なのだと…」

チェ・ヨンは、ウンスが自分を気遣い、もう二度と会う事は叶わぬであろう父親の事を言いだせなかったのだろうと、その想いに気付く。イムジャはあの頃より何も変わられておらぬのだ…。


「それだけ私はあなたに、愛されているという事よね…心のバランス…えっと調和が乱れてしまうほど相手を想う事を、心を奪われると言うのよ…さぁ、みんなの所へ戻りましょう」


チェ・ヨンは行こうとするウンスの腕を引き寄せ、強引に唇を割る。ウンスから甘い吐息が洩れ始めるとやっと唇を離す。


「もう少しこのままで…」


コクリと頷いたウンスは、あったかいと囁いてチェ・ヨンに身体を預ける。


チェ・ヨンの想いが触れられたところから全身に流れ伝わり、ウンスの身体中を優しさで満たしていくのだった。











こんにちは


遅くなりました


お孫ちゃんと遊び過ぎ書けず


腕も筋肉痛でございます


次のお話も少し書いて、繋がるか確認の上アップしました


が、本当に繋がるかな


午後からもアジャ












 

 

 

 




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