チェ・ヨンはニヤリと笑う。
ーテマン、トクマン医仙を頼んだぞ!
ーはっ!命に代えましても! イテッ!
トクマンがまたチェ・ヨンに頭を殴られる!
ー何度も同じ事を言わせるな!お前には命が幾つもあるのか?危なくなったら逃げろといつも言っているだろう?今回はイムジャを中心に陣を組む。故に危険は少ないであろうが矢だけ気をつけてくれ!良いな!?
ーはっ はい!
ー皆!盾を持て!奴らは毒を使う。弓にも仕込んであるかもしれぬ。弓隊は、盾を持つ兵の合間から、火を着けた矢を小舟とあの家目掛けて射るのだ!大型船には、捕虜が居ると報告を受けている。あの船は最後に攻める!良いな!では行く…
チェ・ヨンが合図をしようとしたその時、あの黒づくめの男達が建ち並ぶ家の後ろから馬に乗り、影のように静かに出てきた。小舟にも奴らが隠れておったようだ…。ざっと数えると100人程になろうか…。
昨日のあの男が居る。
ー遅かったな。待っておったぞ。お前の家に行ったら、もぬけの殻であった故に、来ると思っておったわ!本当に正面突破が好きらしいの。噂には聞いておる。わざわざ俺の為に医仙を連れて来てくれるとはな!はっはは!手数をかけて悪かったな!
ー何を下らぬ事を!お前などに指一本も触れさせぬわ!行け!
チェ・ヨンが雷攻をその男目掛けて放つ!辺りはものすごい爆音と共に砂煙が上がる。それを合図に弓隊が火の着いた矢を放つ!倭寇の小舟からもヒュンヒュンと矢が飛んで来るが、盾を持った兵がそれを阻む。
奴らが剣を抜いて向かって来た!
ー皆!迎え撃て!
チェ・ヨンがもう一度雷攻を放つ!
あの男は除けたようだが、至近距離からの雷攻でかなりの人数が馬と共に倒れている。
ーくそっ!奴には当たっておらぬか!
辺りを見ると、小舟は赤々と燃え中に乗って居た弓隊が川へ飛び込んでいる。
そこにまた、矢を放つ!
あちこちで剣が合わさる音が聞こえ出した。チェ・ヨンは、崖の頂上目掛けて雷攻を放った!
ーどこを狙っておるのだ!はは!
それを合図に、崖からチュンソク率いる者たちが、馬を駆り器用に崖を駆け下りて来る。
50名は居るだろうか…。馬を操るのが得意な者たちを集め、倭寇の背後から攻める!
倭寇は、後ろは安全だと安心しきって居たので、このまさかの挟み撃ちの攻撃にバタバタと慌てふためき、陣を崩し、一瞬にして勝負 はついた。
ーよし!生きている者たちを捕らえよ!また、毒を喰らう恐れがあるので猿轡を噛ませよ!
チェ・ヨンはあの男を見つけると、口に布を押し込み、刀の柄頭をみぞおちに喰らわせる。
ーふっ残念だったな…。待ち伏せておることなど百も承知の上だ。イムジャ…お怪我は?
ー2人のお陰でなんともないわ!ありがとう!
と、2人にハイタッチしようとしているウンスの手をチェ・ヨンがため息をつきながら掴んだ。
ーイムジャ!おやめ下さい!あなたも本当に懲りないですね。もう俺の妻なのですよ!自覚して下さい。
そこへチュンソク達がやって来た。
ーチュンソク、ご苦労であった!良くやった。
ーチュンソクさん達すごいわね!あんな崖駆け下りるなんて!作戦立てたのは私とチェ・ヨンだけど、本当に出来るとは思わなかったわ。私、高い所苦手だから…。見てたらこの辺がきゅーっとなっちゃった!
ーはい!ありがとうございます!
チュンソクはウンスに褒められ嬉しそうである。
ー良し!あの船に入る!イムジャはこちらでお待ち下さい。
ーわかったわ。怪我をした人を手当てしてるわね。トクマン君、手伝って。
ーはい!
ーチュンソク、船の中に何人おるかわからん…先程の奴らの中で怪我をしておらぬ隊員を連れて行く。
ーはっ!

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