出逢い…27

お父さんお母さん、お元気ですか？

私達はみんな元気よ。

私ね…そっちに居た時は、毎日をただなんとなく生きていただけだったけど、こちらの世界は毎日、映画の中に居るみたいで…。生きてる事が本当に幸せなんだと実感出来るわ…。

この間ね…はっと思い出した事があったの。恭愍王暗殺事件…。多分そろそろじゃないかしら…。

なんであんな大事な事を私は忘れて居たの？

きっと魯国公主が産めなかったはずの子供を産んで、生きているからすっかり運命が変わったと勝手に想っていたのよね。本来ならとうに亡くなって居るはずだから…。

王妃様がご無事で、子供も居るから王様の心は壊れていないし…シンドンもこの少し前から表面に現れてくるはずなのに、政(まつりごと)はしていないのよ…。だいぶ、私は歴史を変えてしまったみたいなの…。

もしかしたら、もう大丈夫かと思ったけど、でもやっぱり心配だからチェ・ヨンには話したの。自分の知っている歴史を…。もし王様と王妃様に何かあれば彼が1番苦しむことになるから…。

本当なら王妃様は子供を産めず、そして出産時に亡くなってしまうはずだった事も…。昔、1度徳興君に王妃様が誘拐された時、本当に王様お辛そうだったけど…あれ以上に心は壊れ、政が出来なくなってしまう位に王様は苦しむのだと…。そして、本来の歴史には、シンドンと言う人が現れ、政を納め、チェ・ヨンも何かの折に、その人に投獄されたはずだと…。

恭愍王は確か親元派の宦官、崔万生に暗殺されたはず。でも、そうでなかったという史実も見た様な気がしたわ。あ～やっぱりもっと歴史を勉強しておくんだったわ！

チェ・ヨンは怒ったような顔をしていたわ。あなたはそんなに大事な事を一人で抱え込んで、何故言ってくれなかったのか。また、俺のためですね？と…。

だって、とても大きく歴史を変える事になってしまった私に、天から罰が下るかもしれない。どんな罰でも受けるつもりよ。

それでも王様と王妃様には、私達の様に子を持つ幸せを感じて欲しかったの。全て私のせいなの。だから罰も私だけに下されるものにしたかったから…。あなたには言えなかったのよと。

チェ・ヨンに、崔万生に気をつけていてねと言ったわ。そいつは今、確かに王様の近くに居たから。

彼は、私をギュッと抱き締めてくれた。イムジャの知っている歴史を使い、手立てを立てているのは自分なのだから、あなたのせいなどではない。罰が下ると言うのなら、数え切れぬ程、人を殺めたこの俺が、甘んじて受けよう。チェ・ヨンは、そう言ってくれた。

彼に辛いことを言わせてしまったわ。チェ・ヨンのせいではないのに…。国のため…王様や私を守るため、彼は人を殺めるわ。それが彼の仕事なんだもの。

不思議ね…人の命を救う医者の私と、国のため、人を斬らなきゃいけないチェ・ヨン…。私達って、正反対の2人なのね…。

600年の時代(とき)を超え、何億と言う輝く星の中から、出逢うはずのない2人が巡り逢えた奇跡…本当に私は幸せよ…。

この間ね、ミンジュンが迂達赤の入隊テストに受かったのよ。新人の迂達赤を何人かボロボロにしちゃったらしいわ…。ふふ！最年少の入隊なのよ！血は争えないわね。もしかしたらチェ・ヨンよりも強くなるかもしれないわ。身長ももうすぐチェ・ヨンに追いつきそうなの。今はね迂達赤の兵舎に住んでてね。

一人、また一人と巣立って行ってしまうわね…。嬉しいけれど淋しさの方が大きいわね。2人も私が大学の寮に入ってしまった時、こんな気持ちだったのかな？チェ・ヨンにね、淋しいって言ったら、ちょっとムッとした顔で、俺が居ても淋しいのですか、俺はずっと一緒にいますって。チェ・ヨンはいつも私の言って欲しい言葉を口にしてくれるのよ。素敵な旦那様でしょ？

追伸～暗殺事件はなくなったのかもしれないわ。今はね、恭愍王は世子様に王位を譲られて魯国公主と絵を描きながらのんびり暮らしていらっしゃるわ…。本当に良かった。

また手紙書くわね。

1374年 12月ウンス

ーそうね…あなたが寮に入った時はとても淋しかったのを思い出したわ。

ーあぁ、ずっと3人で過ごしてきたからな…。

ーでも、今は逢えなくても淋しくないわよ。ウンス…。あなたのお陰ね…。諦めないでくれてありがとう…。