ーイムジャ、少しお待ちを。
チェ・ヨンは、ジオンに今までの経緯を話し、ここから女が何者かに連れ去られたようだと伝える。それと、ここに男の死体があるので禁軍と迂達赤を手配するようにと。それから離れた所に置いてきたチュホンを連れて来てくれ、刀も欲しいと頼んだ。それからもうひとつ。一番大事なことなんだが……
ー良いか?頼んだぞ!誰が何処へ連れ去ったのか調べてくれ、ジオン。そしてもし、お前達だけで出来るのであれば、その女子ヘスと言うらしいのだが、連れ戻して欲しいのだが…。
ー高いわよ~。何してもらおうかしら?
ーあ~うっとおしい!早く行け!
ーすまぬ、着替えさせたいのだが、部屋を借りても良いか?
ーこのような所でよろしければどうぞ。
ーそれと…この家の事で何か変わった事はないか?
ーこの辺りは、ご覧の通りみな貧しい者たちばかりです。食べて行くため、お金を借りる事は良くあり…先日も取り立てが来ており、ヘスを連れて行こうとしておりました。ヘスはなかなか器量良しなのですよ。
ーどこの金貸か知っておるのか?
ーはい…ここより西に行ったパクと言う金貸でございます。
ー……そうか。わかった。では、しばし部屋を借りるぞ。
ーどうぞ…。
ーさぁ…イムジャ、こちらへ。
まだ、力ないウンスの、血にまみれた服を脱がせていく。
下穿きまで全て脱がせる。こんな時なのに美しいとチェ・ヨンは想った…。
あちこちこびり付いている血を拭い、ジオンの持って来たチマチョゴリを丁寧に着せる。
いつも医仙として医者の服を着ているのでチョゴリを着ることは滅多にない。
白い肌に薄紫がよく映え、本当に天女のようだ…。
ジオンのやつ、なかなか良い見立てだなとチェ・ヨンは変な所で感心してしまう。ヨンスをその者に頼み、家路に着く。
ーイムジャ…家に帰りましょう…。
ーチェ・ヨン…?私…。
ーさぁ、もう血など付いておりませんから。
いつの間にか、外にはチュホンが待ってくれて居た。剣を縛り付けられて…。
チュホンの鐙に足を入れてやり、ウンスを持ち上げ自分も後ろに乗る。
ーチェ・ヨン…ありがとう。
ウンスはそう言うと、横向きに座り直しチェ・ヨンの胸に身体を預け目をつぶり、腰に手を回す。
チェ・ヨンは、ウンスの髪に口付けをし、ゆっくりチュホンを走らせる。
途中、周りに家もなくひと気のない所に差し掛かった所で、満月が陰り辺りは一寸先も見えなくなる。それが合図のように、チェ・ヨンがウンスの耳元で、少し急ぎます…。しっかり掴まっていて下さいと小さな声で言った。
と、チェ・ヨンは右手からパチパチと青い光を出し、イキナリ後ろに向け雷功を放った!

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