そのせいなのか、俺は自分から人を好きになった事がなかったのだ。
その日、俺は休みでやることもないので、医仙様の所へ行けば、暇も潰せるであろうと出向いた。
…すると、護衛も付けず馬で出掛けようとされているではないか!聞いてはいたが、なんと無鉄砲な方なのだろうか?ご自分の立ち位置がお分かりで無いようだ。大護軍があれこれ心配するのが良くわかる。
ー医仙様、お一人でどちらへ?
ーあら、ジフ君。町に行きたいんだけどね、今日誰も居ないの。だからあの人には黙ってて!ちょっとだけだから!ねっ?お願い!
ー俺が暇なので、ご一緒しますよ。
ー本当に?良かった。また護衛もなしにって怒られるとこだったわ!お願いします。
ジフは、ヒョイっとウンスの後ろに飛び乗って、手綱を持った。
ーでは、参りますよ。そんなに緊張なさらずに、俺に寄り掛かって下さい。
ーありがとう。
あ…これか…トクマンさんが良く言っている良い香りとは…。本当に良い匂いだ…。もっと近くで…あー駄目だ!大護軍に見つかったら殺される。
医仙様は緊張されてるのだろう。お一人でずっと話している。俺は相槌を入れるだけなのだが、それがなんとも心地良い。
町に着くと、あちこちから医仙様医仙様と声がかかる。本当にいつもお忙しいお方だ。
ん?医仙様?どうされたのだ?
ジフがウンスの見ている先を見ると…大護軍が子供を連れて、チェ・尚宮様と女子と一緒に服屋から出てきた所だった。
何をやってるんだ、大護軍は?まぁ、あの人の事だ。他の女になど手を出すとも思えんが…医仙様? あっ…
……俺は何であの時あんな事を…女とはギャーギャー騒いで泣くものとばかり思っていた。今までの女は皆そうだった。泣きながら、他にも女が居るのか、私を好きじゃないのかと、うるさく責めたてられたものだ。
この方は…美しいと思った。見ていると、後から後からポロポロと涙が零れ落ちている。いけない、周りの町民達が騒ぎ出してきた。どこかに連れて行かねば。
腕を掴み、強引に連れて行く。ここなら誰も来ないだろう。振り向いて、医仙様を見ると何も見えて居ないようだ。思わず、抱き締めてしまった。
そんな泣き方しないで下さい、医仙様。こっちが辛くなります。医仙様の香りが俺を誘う…。駄目だ…この方は俺よりずっと歳も上で、あの大護軍がこの国よりも大切にされている細君なのだ。
ージフ君…?
ーさぁ、医仙様帰りましょう。先程の事は何かの誤解です。あの大将軍ですよ。他の女など見向きもせぬ人です。
ーありがとう。知ってるわ。そうじゃないの…。私が来たせいで彼の本来の運命の人が……
俺には、良くわからない事を話して居た。
ー……それでね、天穴に行こうと思って…。ジフ君、ありがとう。じゃあ行くわね。
涙も止まらぬ中、これから天穴に行くだと?無謀な方だ。どれだけ目立つと。
スリバンに大護軍宛の手紙を託し、医仙様の後ろに飛び乗る。
ー俺も行きますよ。
ーチェ・ヨンに怒られるわよ…
ーお一人で行かせた方が怒られます。さぁ…
ー…ありがとう、ジフ君…。
すぐ大護軍が来るだろう…。それまでの間…だけ許されるだろうか?力ない医仙様が落ちぬよう、腰に手を回す。涙を拭うたび、俺にもたれかからせるのだが、またガクンと下を向いて涙を流す。もう泣き止んで下さいと何度も言うが、聞こえて居ないようだ。その姿に思わず、髪に口付けをしてしまいそうになる自分がいる。
背中に射るような視線を感じた…大護軍が来られたようだ。はぁ~俺、殺されちまうかな…。
大護軍が、俺に礼を言った。 医仙様の腕を掴んだ時、思わず反対の手を掴んでしまう所だった…。 先程までの花の香りは、有るべき所へ戻ってしまった。
医仙様が、大護軍の胸の中でようやく声をあげて泣いている。やはり、俺では力不足のようだ。胸の片隅の痛みを無視する。
ー本当に良いご夫婦ですね。俺も早く嫁をもらいたくなりました。
俺もそろそろ本気にならなきゃいけないな。きっと見つかるよな、俺だけの天女が……。いつかきっと…。
ジフは2人が見えなくなるまで、見送っていたのだった…。
おはようございます

まだ同じところでウダウダと

次のお話妄想中につき

しばしお待ちを

今回はジフ君目線でいってみました

今日の仕事が終わらないと、仕事中妄想も出来なくて

今日も一日ファイティン


にほんブログ村