その頃、王妃が王と話したいとドチへ連絡があり、席を設けられた。
しかし王は、先日の一件以来、まだ王妃を許してはいなかった。
同じテーブルに座りはしたが、直接話すつもりもないようだ。
大きなテーブルにはお菓子が置かれ二人は端と端に座り、真ん中にチャン侍医がおり二人の間の糸電話になるようだ。
後ろには近衛隊副隊長のチュンソクとチェ・尚宮が控えていた。
王「そんなに心配なのですか?と聞きなさい」
チャン「そんなに心配なのですかと質問されております」
王妃「そうだ…と伝えよ」
チャン「そうだと申されました」
王「あ~迂達赤チェ・ヨンがそんなに心配で意にそぐわぬ接待まで用意させたのですか?……さて、何が望みですか?と聞いてみよ。」
ーチェ・ヨンの名を出してしもうた。何故貴女は私よりチェ・ヨンを…
この気持ちはなんであろう。イライラする。
チャン「何がお望みかと」
ーなんで私がこんな目に…何をしたと言うのです?お互いもちろん聞こえておるでしょうに…
王妃「キ・チョルの元へ出向くお許しを。」
間髪入れずに…
チャン「王妃様」
ーなりませぬ。前回で懲りておらぬのですか?
王妃「伝えよ!!」
王「聞いたか?チャン侍医。王妃は正気とは思えぬ。だからチャン侍医を呼んだのです。首の傷が頭を犯したか…実に信じがたいことを言う。チャン侍医が治してやれ」
王妃「王様、私が身代わりになります。」
みんなが一斉に驚きの表情で王妃をみた。
王妃「近衛隊隊長と医仙を帰すよう申し出るつもりです。」
王「通ると思うのか?」
王妃「これでも私は元の王女ゆえ、威勢の良いキ・チョルも私が相手では…用心しましょう。」
王「先日もそのために身勝手に出歩き己が医仙とチェ・ヨンの身代わりになるので、2人を解放しろと頼むつもりだったのか?」
王妃「条件を尋ねるつもりでした。財なら元との貿易権を。権力なら…」
王が突然王妃の肩を掴んだ。
二人が口付けでもしそうな距離に近づいており、チャン 侍医を始め他の二人も、顔を背け下を向いた。
王「一体どれほど余を落としめば気が済むのだ。余は至誠を尽くす臣下を失った。
家臣は皆 余に背を向けよう。その上 王妃も余に失望し何をしようと言うのだ。」
ー涙が出そうだ…余は本当になさけない。
臣下1人守れず、ただ一人最後まで味方で居て欲しい、王妃にまで愛想を尽かされた、王とはなんなのだ。もう私には誰もおらぬのか…
ー王は更に近づき、王妃にしか聞き取れないように、彼女の耳元で囁いた。
王「余は情けないか?あの者を好いてそこまでするのか?」
王妃「王様に…あの者が私より必要だと思いました。」
二人とも泣きそうになるのを堪えていた。
王は王妃の顔を見た…
王「なぜだ?」
王妃「王様はご存知なくご興味もないでしょうが、私は…私は…」
その時、静けさを破って出入り口を守っていた迂達赤の声が響き渡った。
下がりなされ‼︎
チュンソクとチェ・尚宮の動きは早かった、王と王妃を守りに入る。
入り口にはチョ・イルシンと、先程のチャ・ウンが走り寄って来た。
「王様~」
「王様、臣 イルシンでございます。王様、ご無事でしたか?」
王「なんの騒ぎだ?」
イルシン「王様の窮地をお助けせんと駆けつけました。」
チャ・ウン「近衛隊に問う。王様を人質にとるつもりか?」
ーここが演技のしどころである。先程の手紙に近衛隊の1人が、チェ・ヨンの元を訪れ、チェ・ヨンの伝言を託されていたと報告がきた。これを使わぬ手はあるまい。王の周りから邪魔なこやつらを排除して、王を失脚させるのだ。
チュンソクは、なんの話か分からず…
「なんの話です妄言にも…」と聞き返した。
チャ・ウン「王様 近衛隊に脅されたのですか?」
王「何が言いたい?」
チャ・ウン「迂達赤隊長は謀反の首謀者だとか。不穏分子の部下など排除せねば…」
チュンソクは慌てた。ようやくこ奴らの真意がわかった。チュソクを送ったことがわかってしまったのであろう。
「王様、濡れ義務です!!」
王「この者達は余の護衛だ。隊長の件とは無関係ゆえ」
「騙されますな、王様。部下と隊長は密につうじておるのです。確たる証拠を掴み、馳せ参じました。王様」イルシンはいつもの興奮した様子の話し方で切々とうったえた。
ー王様、私はあなた様の一番の臣です。チェ・ヨンなど捨て置いて下さい。この私がおりますゆえに…この私が…
「近衛隊の逆賊め!!1人1人拷問にかけ自白させても良いのだぞ!!どの隊員がチェ・ヨンに会いに行った?このまま王様を人質に取り抵抗するつもりか?」
ーふふふ、もう一押しだ…チャ・ウンはほくそ笑んだ。

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