第20回読書会をします。今回の選書担当者は私です。
もう日が迫ってますが、下記の通りです。
■日時:2009年9月4日(金)18:30~
■場所:花国さんの2階
■課題図書:『贅沢の条件』岩波新書 735円 山田登世子/著
ご興味のある方は、春光堂まで電話でもメールでもなんでもよいので連絡下さい。
雰囲気等々、気になる方もいらっしゃると思います。
ざっくばらんに意見交換をするので、心配ご無用です。
それでも気になる方はお気軽に聞いて下さい。
今回は花国さんの花を囲んでの読書会です。
その雰囲気だけでも、楽しそうです。
「贅沢」を大いに語り、ラグジュアリーな気分に浸ります。
終了後は、参加者が家に持ち帰って飾ってもらいます。
花を長持ちさせる秘訣も聞けると思います。盛り沢山ですね。
商店街の贅沢ってこういう所にもありますよね。
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さて、今回の選書ですが、昨年参加した商人塾での講義を踏まえて、この本を読みました。
(その商人塾については、以前の記事を見てください。)
クオールエイドの武雄先生より「ラグジュアリー」、「堪能」という言葉を教えてもらいずっと頭に残り続けていました。講義が終わってからも、自店の取り組みや、一緒に参加した商店からのお話(毎月一度集まって、各店の取り組みの話をします。)、そして講義内容も思い出しながら、レジュメを作りました。商店や商店街に限らずに、ビジネス、観光、町おこし等々様々な方面で、「贅沢」というキーワードは、今日において参考になるところがあると思いますので、ぜひご一読してみて下さい。
以下、レジュメ。
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得々読書会0020
課題図書:「贅沢の条件」 岩波新書 山田登世子著
1.選書について
現代は、店余り、モノ余りで一般的な物はどこでも手に入り、低価格指向になりつつある。商店街が昔ながらの同じやり方では、ショッピングセンター(SC)やインターネット購買に比べて良さが少ないので、来街する理由が希薄になっている。しかし一方で、消費者が自分のライフスタイルにあったものにはお金をかける傾向もある。これからは、商店がすべての人を相手にする手法から、特定の消費者を満足させる方向にいく必要があるかもしれない。他では代えのきかないショッピングの実現には、「贅沢」というキーワードは参考になるのではないか。また、観光や町おこしについても、楽しいところが沢山あるのに、「わざわざそこに来る」という意味では、参考になるところがあるかもしれない。
2.全体の考察
本書は「贅沢」を「歴史」、「人」、「ブランド」、「実体験」をベースにひも解き、
それを通して今日における「贅沢の条件」とは何なのかを考える
3.各章の考察
序章 贅沢の近代
身分の表象に代わって、個の卓越性の表象を生み出したP6
「時間の奴隷」の世界をオフにして、ゆっくりと時が流れる「閑暇」に身をゆだねることP10
贅沢は「晴れの日」ではなく、日常ふだんの嗜みのうちにこそあるのだP11
第一章 リュクスの劇場 - きらびやかな男たち
1.ヴェルサイユという劇場
すべてが公的なものであり~私的消費ではなく、歴とした「公務」だったP18
「遊び」と「政治」がわかちがたく結びついていたP20(贅沢を惜しむと地位を失い追放P21)
「閑暇」と「優雅」だけを関心事とした貴族的な精神P32
2.ダンディズムの「喪の作業」
ブルジョアジーによる「新しい貴族性」。「優雅な生活」を好む精神だが、ダークトーンに身を包む
第二章 背広たちの葬列 - ビジネス社会へ
1.タイム イズ マネー
資本主義のエートスP38「暇なし生活」「閑暇」は悪徳P34
2.「富」VS「贅沢」
貴族の浪費からブルジョアジーの労働へ luxe(贅沢)から wealth(富)への転換P44
ぺレール兄弟による動産銀行のセンセーショナルな躍進
パリ万博「フランスの贅沢品をラグジュアリーブランドとして世界にアピール」p58
3.消費する女たち
男たちの勤労の「制服」と対照的に、女性が貴族の領分であった「装飾」を受け継ぐP61
消費が「パブリック」から「プライベート」へ、夫の社会的ステータスを顕示する代行消費P68
贅沢の「即物化」、消費の「感性化」。奢侈は女の領分に移行し、贅沢が「女性化」P66
4スーツを着る女性たち
女性が家庭を出てビジネスに進出、シャネルによる装飾からの解放、「制服」の美学
広くマスにうけたのは、女たちがみな同じようなライフスタイルP78 「有閑階級」が死語
第三章 ラグジュアリーな女たち - さまざま意匠
1.美の驕り
高級娼婦の贅沢 サラ・ベルナール - 天才的な「伝説遣い」の舞台女優
2.贅沢貧乏
森茉莉 - 「贅沢は高価なものを持っていることではなくて、贅沢な精神を持っていること」
堂々と朗らかに「楽しむ」もの、楽しいことを嬉々としてやることP99
与謝野晶子 - 恋という贅沢 精神の貴族性
3.趣味の貴婦人
白洲正子 -「怠けて」暮らす贅沢「遊び」に生きる人
リタ・リディング - 貴族の時代に舞い戻ったかのような贅沢
第四章 禁欲のパラドクス - 修道院という場所から
1.ココシャネルの修道院
シャネルのモダニズム・シンプル、装飾を否定、黒と白 = シトー派修道会の厳格な戒律
2.シャネルの贅沢革命
歳月にたえる、つくりの良いもの、手仕事の確かさ = 修道院の「禁欲」が贅沢のルーツ
3.修道院の美酒
修道院の勤労と労働から美酒ワインの誕生
4.手仕事の贅沢さ
時間をかけるタイムもマネーも忘れた美しい魂。情報化できない「からだで覚える」
5.禁欲と楽園
修道院ホテルのラグジュアリー、プロヴァンス農家の贅沢
終章 贅沢の条件 - 時をとめる術
1.樹齢千年のオリーブ
古いもの、伝統のあるものの価値。「聖なるもの」を無意識に求める畏敬の念。
2.はるかなもの
「はるけさ」-ゆったりした時の流れこそ「贅沢の条件」P187
メディア情報による「贅沢な時間」の喪失-いかにして「時をとめる術」を手にするかP191
4.考えたいこと
低価格の追求は、低賃金雇用や、国外産に行き着く。国内で消費物を売り続けても、働く人が低賃金だったり、作る先が外国だったりするのでは、さらに消費は先細りになっていく。生活の一つの局面として、一般消費物の低価格の方向は止められないが、もう一方で消費者の求める「贅沢」があると思う。様々な方面で、国産や地域産を元に「贅沢」を実現していくことは、新しい方向の内需拡大と、不況を脱していく要因の一つではないか。現代の生活では「タイム」や「マネー」から逃れられないが、生活の一部としての「贅沢」を提供する方向はないだろうか。様々な「贅沢感」や「ショッピング感」の意見を出して、考えを深めていきたい。