第二次世界大戦時の苛酷な経験に苦しみもがきながら生きた英国人将校、エリック・ローマクス。
永い年月にもどうしようもできないほど、彼の負った傷は深く、血が流れ続ける。
彼のあまりにも壮絶な人生は、私には衝撃が強すぎて、ほとんど消化できていないと思う。
ただ、彼の人生の泉から溢れる雫を、ほんの一滴だとしても自分の人生に注ぐことが、この映画に触れた私の責任であるように感じるので、ここに書き留めようと思う。
過ちそれ自体は、誰を攻め、どれだけ憎んだとしても、もう消すことはできない。そしてそのやり場のない感情は、どれだけ愛する者の力を以てしても、完全に癒すことはできない。
憎しみは何も生み出さず、対象の相手ではなく、憎しみの感情を抱く自分自身を蝕んでいく。その憎しみが強ければ強いほど、それはいつまでも付きまとい、時間が経つほどますます強固に自分の心を縛り上げていく。
憎しみからの解放は、許すことによってしか成されない。
相手と向き合い、相手を知る。
たとえ相手が相反する考えをもって攻撃してくる敵だとしても、受け入れ許すのだ。
許すのは覚悟がいる。
許した瞬間、自分は身につけた武器を捨て、素手で相手と向き合うことになる。
傷つけられることもあるかもしれない。
それでも許すと強く覚悟したのであれば、その覚悟の瞬間から想いの炎は強烈に燃え盛り、相手のもつ氷の剣をいつか溶かすことができるだろう。
溶けた氷の雫は、和解の涙となり、大地を固め美しい花を咲かすのだ。
許す者が一番救われる。
許すことで幸福への扉が開かれる。
命有る限り、その権限は自分にある。
この命あるうちに、その武器を捨てよう。
