母は、精神疾患を持つ方に対して非常に強い偏見を持っていた。


たとえば私がまだ子どもだった頃、母と一緒に外を歩いていたときのこと。

見た目や仕草などから、障害があるとわかる方が近くを通りかかった瞬間、母は「あっ、キ◯ガイ」と露骨に嫌悪感をあらわにし、そしてあからさまに避けるような動作をとった。

私は子どもながらに、相手の方の気持ちを想像して胸が痛くなった。言葉では言い表せないほど申し訳なく思った。その人にとって、きっと一生消えないような心の傷を残してしまったのではないかと思う。


私が小学生のときにストレスで抜毛症を発症し、眉や髪の毛が抜けて目立つようになったときも、母は「みっともない💢」「病気の人みたいになっちゃうよ💢」と怒った。

「病気の人」という言葉には、同情でも心配でもなく、ただ拒否や嫌悪の気持ちが込められていた。


母は、「自分とは関係のない世界の人」として、精神疾患や障害のある人を差別してきた。でも、実際には3人目の子ども(私)に障害があり、病気を抱えていた。

きっと、それを受け入れることができなかったのだと思う。まるで「そんなはずじゃなかった」と思っているように感じた。

だから母から「絶縁できないのかな」と言われたことも、ある意味では当然だったのかもしれない。私のような存在とは、縁を切りたいのだろう。


LINEがブロックされていたことは知っていた。母はそれを、軽いノリで「めんどくさいからブロックしちゃった」と笑いながら親戚に話していたという。

そしてある日、携帯電話も着信拒否になっていた。母は本気で、私のことを「他人」にしたいのだと、そのとき理解した。

自分の娘としてではなく、「関わりたくない存在」として扱っていることが、痛いほど伝わってきた。


母にとって、私はきっと「望んだ存在」ではなかったのだろう。


首藤はるか