昨日は朝から札幌でのお仕事のため

バスに優しく揺られての移動。

 

札幌で仕事かぁ…

 

20年前のわたしには到底考えられない毎日を

 

わたしは今、送っている

 

 

 

 

 

 

 

 

23から25歳までの間

とてもお世話になった人がいる

 

昨日はバスに揺られて

何故か思い出した人

 

 

 

食堂のような

喫茶店のような

 

ちょっと不思議なお店で

わたしは縁あって働いていた

 

「マスター」と呼ばれていた社長は

 

強面で

アパートを何棟も経営し

車屋さんをやりながら

飲食店も経営する

 

会う前までは

怖くてちょっと嫌煙しちゃうような

 

そんな人だった

 

 

 

 

 

 

 

 

23歳の時

そのマスターにひょんなことから拾われて

 

わたしはその店で

ウエイトレスになった

 

 

 

ウエイトレスといっても出前もする

 

その出前がまた変わっていて

 

ラーメン一個運ぶのに

マスターの最高級のクラウンに桶を乗せて出前に行った

 

毎回ラーメンがこぼれて汚したら

マスターに殺されるんじゃないかとビクビクしながら運んでた

 

結局怒られるどころか

毎回「ありがとよ」と言ってくれたっけ

 

「みや。お前に車、貸してやる」

そう言って車屋も経営していたマスターは

ホンダのインスパイア→車種、懐かしい

一台、無料でわたしの車になった

 

その借りた車が停車中にぶつけられて壊れた時も

マスターは全く怒らずに笑って許してくれたっけ

 

大雪で遅刻した時も

マスターは大きな除雪機でその日にわたしのアパートまで来て

駐車場の雪、全部除雪してくれてた

 

お店が終わってからは

二人で毎日ご飯を食べに行った

 

わたしが財布を出すことなんて当たり前のように一度もなく

 

毎日マスターの店と

夜のバイトの掛け持ちで

ヘトヘトになってるわたしの愚痴も悪態も

 

マスターは目尻を下げてご飯を食べながら優しい顔で

いつもの瓶ビール飲みながら

「お前ってやつは(笑)」

そう言い笑いながら

聞いてくれてたっけ

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな摩訶不思議なお店をマスターが急に閉めることになり

 

わたしのウエイトレス時代も幕を閉じた

 

マスターの店を卒業してから一年程経ってから

 

久しぶりに会ったマスターは

少し小さくて

少し震えていたように見えた

 

程なくして

 

大好きで怖かったマスターは

天国へと旅立っていった

 

 

 

 

 

 

朝から晩まで仕事漬けで

毎日愚痴か文句しか言ってなかったわたしを

 

お父さんみたいに

目尻を下げて優しい眼差しを届けてくれたマスター

 

あれから20年経って

わたしは自分の好きな仕事をして

 

札幌にまで

お仕事で行けるようになったよ

 

なったんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして急に思い出したんだろ

 

行きからずっと考えていた

 

きっとこの

優しく揺れるバスの振動が

 

あのときのマスターの眼差しに

似ているからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからたくさん色んなことがあって

マスターのお墓にも行けてないけれど

 

わたしはマスターのこと

度々思い出してはニヤけてる

 

マスターと仲良すぎて

再婚した奥さんに激しく嫉妬されてマジで困ったこと

 

マスターが怖すぎてUCCウエシマの営業さんが毎回ビビって腰が引いていたこと

 

ヤンチャで暴れんぼうの裏側が

繊細で誰よりも

誰よりも優しかったこと

 

マスターが

わたしを見るあの眼差しを

わたしが今度は人にする番

 

この振動のように優しくあたたかい

深くて根拠なく安心できる感じを

 

わたしも届けていけるように

頑張るね

 

 

 

 

 

大好きなマスターへ

 

今ならきっと

もっと「大人同士」の話ができたね

 

 

 

 

 

 

43歳になった

たかさかみやより