情景がしみじみと伝わってくる
なんとも情緒深い一冊でした

おらんだ帽子 / 三浦哲郎 / 新潮社版


表題作は「おらんだ帽子」ですが
舞台はオランダではなく東北のとある町
(作者の出生地と思われます)

私がこの本に出会ったのは
「オランダ/書籍」で検索したのがきっかけ
オランダの民族衣装に興味があった頃です

中古本として販売されているのを見つけ
ネットでの解説を読んだ時点で
オランダの物語ではないことは判りました

それでも何か心を惹かれ
この短編集を読んでみたいと思いました


傷みが目立つ古い本ではあるけれど
ケース付きのハードカバーは美しく感じます


昭和52年発行

東京の電話番号の真ん中がまだ三桁の頃


「最新集」も今は昔ですね…




いかに過酷な人生にも

ふと束の間の平安は訪れる…

どんな穏やかな日常であれ

一瞬の悲劇に襲われる…


帯に記されている解説通り

生きることの微かな慄きや小さなときめきと

静かに向き合うことのできる一冊です


また

生きることの慄きやときめきを味わう

私もそんな年齢になったんだなとも思い

どこまでも感慨深い短編集でした