ずいぶん前、日本の大学院で実験助手のアルバイトをしていたことがあります。
物理学系の研究室だったので、周りはサイエンスオタク――いや、彼らにとってはまさに本職ですね――に囲まれて、毎日が刺激的で楽しい時間でした。
その頃、当時助教(もしかしたら講師だったかも…)の先生にすすめられて読んだのが、ジェイムズ・P・ホーガンの「 星を継ぐもの」でした。
プロローグ(Wikipediaより)
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月面で、「真紅の宇宙服を着た人間の遺骸」のようなものが発見された。彼はいったい何者なのか? 各国の組織に照会するも、月面での行方不明者は誰もいなかった。地球に運ばれた遺骸をC14法によって年代測定を行ったところ、彼は5万年前に死亡したとの結果が得られた。チャーリーと名付けられたその人物の正体は、全く謎であった。
初めて読んだときは衝撃でした。
まさかの結末、そして謎がすっきりと説明されていく展開は、SF好き・サイエンス好きにはたまらない内容です。1980年の作品ですが、星雲賞を受賞し「ハードSF」と評価されたのも納得。古さを感じさせないどころか、今でも十分に面白い名作だと思います。
私が読んだのは1997年頃。すでに発表から17年経っていましたが、まったく色あせていませんでした。登場人物のハント博士が、各部署の情報をうまくコーディネートしていく姿に憧れたのですが…今思えば、彼の役割って現代でいう「プロジェクトマネージャー」だったのかもしれません。
そして今年、2025年。長い間「続き」を読まずにいたのですが、ついに三部作を全部読んでみようと思い立ちました。
2作目の「ガニメデの優しい巨人」。
前作では理論上の存在だったガニメアンと、ついに実際に出会うことになります。
彼らとの率直で裏表のないやり取りが心地よく、残された謎がさらに解き明かされていく展開にワクワクしました。
そして最大衝撃だった「巨人たちの星」
そしてシリーズ最大の衝撃作。
ここでは社会科学の要素も加わり、政治の駆け引きやAIテクノロジーが登場。三部作の中で最もアクション映画に向いていそうな内容です。1981年の作品なのに、AIの描写が2025年の今を予見していたかのようで驚かされました。
ネタバレは避けますが、現代の政治や社会に興味がある人なら、映画以上に面白く感じるはずです。本当にびっくりします。
三部作で一区切りついたように見えますが、実は続編として 『内なる宇宙』 や 『ミネルバ計画』 もあるそうなので、ぜひ読んでみたいと思っています。
読みやすさと物語の面白さではアシモフのロボットシリーズが一番好きですが、衝撃度と現代社会とのリンクという点ではホーガンの「巨人たちの星」シリーズが群を抜いています。
SF好きでなくても楽しめると思いますが、このシリーズは前作を読んでいないと次に進めないタイプなので、そこだけは少し大変かもしれません。
ホーガンの「巨人たちの星」シリーズは、科学好きにも社会派にもおすすめできる名作です。
昔の自分が夢中になった作品を、今改めて読み直すと、新しい発見と驚きがある――そんな読書体験でした。
ちなみに、Amazonによると漫画化もされているらしいです。特に三作目は映画化しやすいと思うのですが…されていないのは大人の事情があるのかも、とつい邪推してしまう私でした。



