
高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、
苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。
男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男手、奇しくも初恋の夫となっていた。
刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果たすとき、あまりにも皮肉で感動的な結末が用意される。
一度読んだ事のある『宿命』

題を見ても、あらすじを読んでも全く中身を思い出せなかったので、
もう一度読み返してみました

東野圭吾を一番読んでいたのは大学の時なので、
けっこう前ですもんね・・・仕方ないですよね

にしても、東野作品を読むのが久しぶりです


読み出してすぐに、先へ先へと読みたくなる感覚を思い出しました

装飾が少ない文章なのか(もちろん良い意味でです)
展開が速いからか
伏線が興味深くて、先が気になるからか
何だか無性に読みやすいんですよね

特に、伏線が気になるというのは大きいと思います

本作品では、三人の主な登場人物がおり、
学生時代ライバル同士だった男二人で、
一人は医者になり(瓜生直明)、もう一人は刑事になっています(和倉勇作)
そして、一人の女性(瓜生美佐子)、
彼女は和倉勇作の初恋の相手であり、現在は瓜生直明の妻となっています。
この状態でもすでに運命を感じますが
もっと大きな宿命がラストで明らかになります

第一章は "糸" で
瓜生美佐子が「見えない糸の存在」を感じているところから始まります

大手の会社に就職できたり、仕事で大抜擢されたり、
引いては結婚に至るまで、ある時期から幸運ばかりが舞い込むようになりますが
本人は正体が分からず、気になっている状態です

この「糸」の存在は何か?と私も気になり出し始めました


そう思い始めた矢先、事件が起こり、
刑事である和倉勇作が調べていくうち、
ある事実や「糸」との関連が姿を現し始めます

元々ライバルだった男の関連する事件の担当に当たるというあたりなど、
小説的な感じがしなくもないですが
それ以上に、事件の背景や人間関係など興味深く、
ある程度予想していても、さらに意外性を感じられる結末で、満足感がありました

初本版のカバー見返しの「著者のことば」には、次のように記されていたそうです

「犯人は誰か、どういうトリックか――――手品を駆使したそういう謎もいいけれど、もっと別のタイプの意外性を創造したいと思いました。このような題名をつけたのも、そういう意図のあらわれです。そして今回一番気に入っている意外性は、ラストの一行にあります。だからといって、それを先に読まないでくださいね」
確かに、結末は意外性とともに、すっきりできるものでもあり
爽やかな気持ちになれました

やはり面白かったです


