☆コロナウイルス治療の漢方薬 小柴胡湯の使い方と温病学
本年の営業も終了しまして、少し気楽になりました。
ということで、今日は漢方・中医学のプロとして、今年経験したことをメモ代わりに書き残しておきたいと思います。
22年も、COVID-19に振り回された一年でしたね。
正直言って「まつもと漢方堂」はあまり影響を受けない方でしたが、それでも、「ソーシャルディスタンスを確保するため、講座の人数を絞る」「発熱したご相談者さまがご予約キャンセルされる」など対応した点もありました。
普段からご相談者さまには、「風邪を引いたら、漢方を適切に使うと早いから、『あれっ⁉』と思ったら連絡してね」とお伝えしている積もりでしたが。
それでも、まだご相談を始めて日が浅く、COVID-19に罹患しても「漢方薬!」とは浮かばなかったと、数日ガマンしてこじらせてしまってからご相談……という流れになってしまった方もおいででした。
まだまだ、力不足を感じます。
一方で、お店でご紹介できる処方での対応にも、自信がつきました。
デルタ株までは命の危険がありました。
急速に「痰」が肺胞をふさぎ、酸素の取り入れに支障が出ることがあったのです。
ウイルス増殖前に一刻も早く漢方薬を開始することと、充分な「量」を投入すること、序盤は「湿」だった邪気の性質が数日後「痰」になってしまうので、打つ手を適切に変えなければならないことなど、難易度も高かったです。
オミクロン株は呼吸器の中でも上の方、「のど」や「はな」の粘膜が好きなようで、命への影響が少なくなりました。
ウイルス増殖前に必要量を開始することは変わりませんが、のど・はな(上気道)の炎症を食い止めること、微熱が続いて体力を削るのでこちらを止めることが主となりました。
鼻や耳が「詰まる」、つまり嗅覚・聴覚が低下したり、ふさがった感じがするのを「開く」お手当が必要になる場合も、多く見受けられます。
もちろん、味覚も、ですね。
感染が持続しているときの対応と、感染により破壊された粘膜・消耗した体力を回復させる時期、後遺症への対応と、段階に応じた適切なお手当を選ぶととても効果がありました。
今回のような感染症、とくに炎症の強い感染症の仕組みと治し方は、中医学の中の「温病学」という学説が有効です。
衛気営血弁証、三焦弁証を使います。
COVID-19に関しては、衛気営血弁証の運用でいけます。
途中、特徴的な熱の上がり方が見られることがあり、その際は六経弁証のひとつ「少陽病」として対応します。
具体的にいうと、「まず寒気がして、その後ふわーっと熱感に変って汗ばむ、汗が出ても治りきらない」という状態で、小柴胡湯で解消します。
実際には小柴胡湯だけ、または小柴胡湯加桔梗石膏だけでよいことはなく、その前から引き続き「解表」「清熱解毒」「袪湿」「鎮咳止咳」の手を緩めてはいけません。
ここで、「解表」は必要な表証が残っていたら、「太陽と少陽の合病」ですから柴胡桂枝湯を選択したり、お手当はロジカルに組み立てます。
後遺症の本体は血栓症ですから、活血化瘀が必要です。
粘膜に痛みが出ている段階から「活血止痛」のお手当を組み入れておくことで、極力後遺症を防ぎます。
ホント、COVID-19に、アセトアミノフェンとアストミンだけでいくのって、キッツいと思うわ!
全国各地の先生方が、漢方薬の運用で大いに実力UPされた3年間だったかと思います。
本当に、お疲れさまでした。
自分も含めて。
本当にもう、実力を試されまくった日々でしたよね。
で、厳しいことを言うと、「COVID-19にはこちらの○○○○湯」とかって宣伝をSNSに上げてる先生は、もっと勉強した方がいい。
ひとりひとり症状が違うでしょ。
ってことは、ひとりひとり、やることが違うでしょ。
さらに、数日で症状は変化していくので、3~4日おきにお手当は変えていかなきゃいけないでしょ。
自動的にみんな「○○○○湯」なんて、そりゃ、飲まなかったよりマシだったかもしれないけど、効果を感じられることも少ないんじゃないの。
メーカーの営業さんが「いい」って言ったからって、そのままSNSに上げちゃイカンでしょうよ。
もちろん、ネット上で言ってることは浅くても、実際にお店でやってることは深い理解の上にもっといろいろやってるのかもしれないけど。
少なくとも、一般の方が「○○○○湯ください!」ってドラッグストアに駆け込んじゃったりするような事態は危険ですよ。
(あ、これ、「コロナには小柴胡湯」っていうのも同じコトです)
まあ、軽いひとならそれでもいいのかもしれませんけどね……
どんな病気でも同じですけど。
さあ、いよいよ23年も間近です。
23年、COVID-19はどんな変化を見せるのでしょうか。
ウィズコロナ、上手に漢方・中医学を用いて、乗り切っていきましょう。
全国の先生方、引き続きがんばってやっていこうね!