フェンシング世界選手権で、金メダルを獲得した太田雄貴選手が、オレグコーチに対して、「10年待たせてごめんね。本当にいつも、ありがとうオレグコーチ」と深い感謝のコメントを残していました。
また、太田雄貴選手は下記の記事でもあるように、
太田はロンドン五輪で銀メダルを獲得したあと、テレビ番組で語ったところによると、五輪コーチに就任したオレグ氏と当初は仲が悪く、些細なことでケンカばかりしていた。しかし太田はやがて自分の非を悟り「貴方の犬になりますから、勝たせてくれ」と頼み込み、以来二人三脚で頂点を目指してきたという。
コーチとのケンカが絶えなかった時期もあったそうです。
個人競技ならではの師弟関係に思えますが、
これは、団体競技でも同様に築き上げるべき関係性だと思います。
団体競技になると、
どうしても、「チーム」を優先した考えがスターティングポイントになり、
そこに如何に合わせることができるかという視点で選手を判断します。
もちろん、メッシやCロナウドのように突出した選手がいると多少話も変わってきますが、
日本の場合、その様な選手は中々存在しないので、
基本、チームに選手が合わせることが重要になってきます。
すると、何が起こるのかというと、
その選手のポテンシャルを伸ばすのではなく、
そのチームに必要なスキルを伸ばすことになるのです。
要するに、
会社に飼われた歯車社員と同じ縮図が出来てしまうことになり兼ねないのです。
指導者は、その子どもの未来に責任があります。
もちろん、指導者にはそのチームを勝たせたいという使命があります。
しかし、その使命は、本当に使命と呼べるものなのでしょうか?
太田雄貴選手とオレグコーチのように、
お互いが本気でぶつかり合うことをせず、
一方的に「こうしない」「これはしてはいけない」と決めつけることは、
本物の指導者がやるべきことなのでしょうか。
その子どもの可能性の根本は、
その子の「人間性」と「ポテンシャル」に基づくものであり、
決して、そのチームに必要なスキルではないと思います。
太田雄貴選手とオレグコーチがどのように築き上げてきたか定かではありませんが、
太田雄貴選手の「貴方の犬になります」の一言は、
一指導者として、非常に衝撃的なことばでした。
指導者が「お前らは俺の犬だ」というようなニュアンスのことばは良く聞きますし、
言わなくとも犬になるように仕向けられていると思います。
選手とコーチがぶつかり、
お互いの「本気」を戦わすことは、
指導者が意図して行わなければならない指導技術のひとつだと私は思います。
その作業を省き、強要的に選手を洗脳し、
自分の使いやすいように育てることは、
指導者の「私利私欲」であり、指導者として「無能」を意味します。
太田雄貴選手が金メダルを取ることで、
オレグコーチを金メダリストコーチにしたのです。
コーチが発信し、それを選手が成し遂げる、
そして、その成し遂げた先に、
その選手がコーチを評価することを理解するべきだと思います。
指導者は最終的に、
選手から評価される立場にいるのです。
だからと言って「良い指導者」で終わるのか、
「プロ指導者」として本物になるかは、
その人の立ち位置によって変わると思います。
最後に、世の中を動かすチカラがあるビッグクラブの指導者(バルサ、レアル、バイエルン、チェルシーなど)と、
高校・中学の指導者やジュニアの指導者は、
学ぶべき「必須能力」が異なると思います。
何万人というファンに の「費用対効果」に責任がある指導者と、
目の前の子どもの「未来」に責任がある指導者の、
「指導価値」は全く違います。
学ぶべき指導者の本質を間違わないでください。