コンプリート・アンノウン | ささやかだけれど、役に立つこと

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読書、映画、時事ニュース等に関して感じたことをメモしています。忘れっぽいので、1年後にはきっと驚きをもって自分のブログを読めるはず。

コンプリート・アンノウン(2016)という映画を観た。

 

 

レイチェル・ワイズ、50歳近くなってますます綺麗になった。マイケル・シャノンも相変わらず渋くてかっこいい。二人とも好きな俳優だ。

 

このComplete Unknownという意味深なタイトルは、とある海外サイトによると今年ノーベル文学賞を(恐らく嫌々)受賞したボブ・ディランのLike A Rolling Stoneにある歌詞から取られているらしい。ボブ・ディランについて詳しくないので、ふーんという感じだが、アリス(レイチェル・ワイズ)がComplete UnknownなRolling Stoneのように当てもなく流離っていく、ということを象徴しているとのこと。

 

アリスが偽称しながら世界中を転々としている理由はほとんど語られない。アリスがあまりにも才能豊かで魅力的な女性として描かれているために、ある日突然それまでの人生や友人関係を切り捨てる行為を何度も繰り返しているという事実が、壮絶な孤独感を伴って観ている者に伝わってくる。

 

偽称に伴う軽犯罪はあるかもしれないが、詐欺事件などとは異なりアリスにとっての偽称は自分の利益や他人を傷つけることが目的ではい。彼女は単にそうせざるを得ない、ということが端的に描かれていて観ていて辛い。

 

だがそのアリスにとっても、最初の人生で恋人同士だったトム(マイケル・シャノン)は特別なのかもしれない。ただ、トムが特別なのは彼が偽称を始める前のアリスと関係があったからだ。トムはアリスにとって自分が何者かを思い出す(定義する)契機となる存在なのではないかと思う。トムがいなければ、アリスは単に変化し続ける現象でしかないのだから。