さて、依頼があったのですが、なかなか時間が取れなくて遅くなりました。
よくスピ系の人たちは「アセンション」という言葉を使うようです。聞くところによるとワクチン接種をするとアセンション(成仏、輪廻転生)出来なくなるなど、何か反ワクチンの脅しの武器としても使われているみたいです。
うーん、「成仏」も「輪廻転生」も「アセンション」も全然別概念の宗教の用語なんですけど、ここら辺をつまみ食い的に利用するのがスピ系のいやらしいところで。
ということで、スピ系の言うところのアセンションという言葉について調べました。
元々はキリストの昇天のこと
英語の辞書でascensionを調べてもらうとわかりますけど、元々は「上昇」することを指している言葉で、宗教的にはキリストの昇天を指します。
キリスト教に詳しくない人に説明すると、キリストが十字架にかけられて殺された3日後に復活し、そして40日間あちこち弟子の前に現れて、その弟子たちの前で文字通り天に昇っていったことを指します(ここら辺の解釈は聖書の読み方次第なんでいろいろ)。
そして、昇天する様子が次のような感じ。
「さて、弟子たちが一緒に集まったとき、イエスに問うて言った、「主よ、イスラエルのために国を復興なさるのは、この時なのですか」。彼らに言われた、「時期や場合は、父がご自分の権威によって定めておられるのであって、あなたがたの知る限りではない。ただ、聖霊があなたがたにくだる時、あなたがたは力を受けて、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、さらに地のはてまで、わたしの証人となるであろう」。こう言い終ると、イエスは彼らの見ている前で天に上げられ、雲に迎えられて、その姿が見えなくなった。イエスの上って行かれるとき、彼らが天を見つめていると、見よ、白い衣を着たふたりの人が、彼らのそばに立っていて言った、「ガリラヤの人たちよ、なぜ天を仰いで立っているのか。あなたがたを離れて天に上げられたこのイエスは、天に上って行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で、またおいでになるであろう」。
使徒行伝1章6節~11節
まあ、考えようによっちゃ、この昇天をきっかけに使徒パウロという当時のローマの市民権を持つ国際人の活躍もあり、キリスト教が世界的な宗教になる起点にもなったという、記念すべき出来事でもあるんでしょう。そういった意味でキリスト教にとってのアセンションはかなり重要。まあ、キリスト教徒でなければ信じがたい与太話でもあるんですけど。
宗教用語を無断借用するニューエイジ
さてこのキリスト教におけるアセンションがまたなんでスピリチュアル系の人たちがよく使うようになったんでしょうか。
これについては、はっきりしないんですけれど、あるスピ系の人の意見だと、マヤ歴のブームからじゃないかと推察しています。(本当にスピ系は節操がない!キリスト教でもヒンズー教でもマヤでも仏教でも神道でも、原典を無視してなんでもパクる)
https://attraction-rpg.com/ascension02/
マヤ歴についてはこちらでも考察していますので参照してください。
https://ameblo.jp/spiritual-skeptic/entry-12663338030.html
そして、フォトンベルトなんかも関係しているみたいですね。このフォトンベルトに関する考察は以下です。
https://ameblo.jp/spiritual-skeptic/entry-12661161317.html
現在のスピ系各者が言うアセンションの意味
キリストの昇天を指す用語を、スピ系が自分たちの適当な論理に合わせた剽窃語としてのアセンションの現在の使われ方はどうなんでしょう。
一応、Wikipediaでは「魂または魂と肉体が共に、3次元の物質世界から4次元を経て、5次元またはそれ以上の次元に上昇すること。」としています。
ふーん、5次元ねえ。何それって感じですが。
ほかも見てみましょう。Positive Resonanceという英語圏のニューエイジのポータルサイトではascensionについて正確に解説するという文章が載ってました。
Ascension in the New Age - Positive Resonance
でまあ、ざっくりと要約すると人間はいろいろな段階のイニシエーションで次元上昇し、その第6段階がascensionなんだとか。そうすると肉体の死を経験せずに聖書に出てくる預言者エリヤのように昇天する。
この文章の変なところは、ちょこちょこキリスト教の概念を借用しながら、「カルマ」などキリスト教の概念と対立する概念も併存させて何とも思わないという面の皮の厚さですね。キリスト教の視点から見ると噴飯もの。いやちょっと宗教を深く調べたことのある人間は、すぐに引っかかるんだけど、スピ系の人たちのこの無神経さは毎回よくわからない。
さて日本のものも見てみましょう。Spicomiというまたスピ系ポータルサイトがあるですけど、アセンションについて、ここではキリスト教的要素は漂白されてきれいになくなっています(日本のスピ系の特徴で基本はキリスト教について無知なのでこうなりがち)。
アセンションとは?アセンションする人の特徴12個と症状25個!頭痛?眠い? | Spicomi
ここでは、ちょっとアセンションを終末論的な形で使用しています。以下こんな感じ。
「地球を覆う地磁器が破壊されるということは、宇宙の有害物質が降り注ぐ」
ん?地磁器?地磁気の間違いではないのか?それは地球を覆っている茶碗みたいなものなのか?
もうのっけからこの調子。自分の知らない分野に手を出すから用語がめちゃくちゃです。まあ彼らの他宗教の用語の剽窃もそうですが、科学の分野では彼らの力量の及ばないレベルなのに無理するので理屈以前に用語も破綻してるってのがわかります。
「私たちが観ていた映画だけのフィクションの世界の大津波や、大地震なども起こると言われています。」
誰が言ったんかい!おまえやろ!という世界。もう、一人ノリ突っ込みなのかと思いますが。
「私たちは3次元の中で生活しています。人気アニメの何でも出てくるポケットを持っているのが4次元の世界ですよね。色々な空間をワープしていて、幻想的ですがその上をいく5次元の世界というものが存在しているようです。
想像できない世界ですが、人は、隠れた内面があることで、誤解をすることで争いへと発展しますが、5次元の世界では、意識が共有されることから争いがなくなるとも言われています。言葉を発しなくても、相手の感情を読み取るのはSF映画に出てきそうなシーンですが、5次元への移行によって、人類の集合体意識への影響があると言われています。」
ドラえもんが実際にあるものとして描くって藤子F先生が草葉の陰で泣いていらっしゃる(先生はもっと深く考察しているんですよ)。しかも、すべて伝聞の文章。「・・・ようです。」「言われています。」ってそこは自信がないのかって思いますが。
「私たちは生まれてくるときに、5感という聴覚、視覚、味覚、臭覚、触覚を持って生まれてきています。本来持っていると言われる第6感という能力は、不要だと判断した人の多くは、無意識の中で能力をしまい込んでいます。しかし、アセンションが引き起こることで、その能力を閉まっておけずに、超能力が開花すると言われています。意識を共有することが可能になり、テレポーテーション(瞬間移動)ができるようになるとも言われています。
テレパシーや念力、予知夢などなど、現在このような超能力を持っている人も居ますが、このような特殊な能力を持つ人が当たり前になるとも言われています。」
ここも伝聞情報ですね。それなのに次にアセンションをする方法やアセンションをする人の特徴を根拠もなく自信をもって書くメンタリティの強さは、さすがスピ系。
結局スピ系もわかってないアセンション
結局のところアセンションを使うスピ系の人たちも、アセンションという用語について、うまく定義づけできていない気はします。
一つはもともとキリスト教から来た用語の借用で、欧米圏では、その絡みで何となく定義があいまいでも通用するものが、日本に入ってくるとその下地が無いので、もてあましながら、自分たちの適当な世界観に無理やり当てはめようとしているのが実態なのかなと思います。
なので、輪廻転生や成仏と同じレベルに扱うのも、まあ日本土着の宗教との変な混合みたいなものかもしれません。
結論
アセンションはもともとはキリストの昇天を指す宗教用語。
ニューエイジでは「魂または魂と肉体が共に、3次元の物質世界から4次元を経て、5次元またはそれ以上の次元に上昇すること」。
キリスト教的な背景を持つ欧米のニューエイジの世界観を説明する用語として採用されたらしい。
日本では、キリスト教的背景が無いので、消化不良の状態で使用されている模様。