さてスピ系の方たちの中でときどき聞かれる「フォトンベルト」という言葉です。もちろん宇宙に関する間違った解釈から生まれた言葉なんですけれど、スピ系の人たちが、まるで事実のように吹聴して回ってるのを見たことがあります。
なので、今回はこのフォトンベルトってのから、彼らがいかに宇宙に関して間違った見方をしてしまうか見てみましょう。
国立天文台も戸惑うスピ系の質問
国立天文台の質問の中に『「フォトンベルト」や「反地球(対地球)」ってあるんですか?』というのがあります。
https://www.nao.ac.jp/faq/a1006.html
まあよくそんなキワモノ質問に真面目に答えるなって、思いますが、でもそういった質問が多いのか、あるいは、疑似科学への啓もうなのでしょう。真面目に答えています。
答えは一言「ありません。」終了。
そのあとに、きちんと説明されています。
「星や宇宙に関係することで、科学的な根拠のないものについてのご質問をいただくことがあります。科学的根拠のないものにはさまざまなものがありますが、例えば、「フォトンベルト」や「反地球(対地球)」などがその例です。・・・(中略)皆さんも、見聞きしたことをそのまま鵜呑みにしてしまうのではなく、言われていることが妥当なのかどうかを検討してみたり、いろいろな意見を比べてみたりして、納得できる説明になっているかどうかを、自分自身でしっかり考えてみる習慣をつけるようにしてください。」
おっしゃる通りなんですが、それをしないからこそ、そういったことを信じる人たちなんでね。すぐ鵜呑みにする。鵜なのか?
ドイツの終末論解釈書籍で始まり、オーストラリアのニューエイジ雑誌で広まったトンデモ天文学
フォトンベルトという言葉はどうもドイツの作家?(エンジニア?霊媒?)パウル・オットー・ヘッセの「Der Jüngste Tag(最後の日)」という作品で最初に使われたらしいです。
そしてこの人は1958年にすでに死去していたにもかかわらず、オーストラリアのUFO団体のニューエイジの雑誌がこの人をフォトンベルトを発見した科学者として紹介。執筆者「シャーリー・ケンプ」は「Der Jüngste Tag(最後の日)」をベースに、次の図のようなフォトンベルトを紹介解説します(ずいぶんひどい図、太陽系もプレアデスの一員?)。
一番外側に太陽系があって、中心がプレアデス星団のアルシオーネがあり、その公転面と直角にあるドーナツ状のものを「フォトンベルト」というわけです。このフォトンベルトに地球が入ると人類が生まれ変わるとしています。
さてベースにあった「Der Jüngste Tag(最後の日)」の中身は、よくあるキリスト教的な終末論に、占星術やら光のリングやら独自解釈を混ぜたものらしいですが、「シャーリー・ケンプ」の記事では、このフォトンベルトに地球が入りつつあるということ、またその根拠としてUFOの目撃情報などを書いています。
「シャーリー・ケンプ」はさらに、マヤの神話なども触れていますから、今のスピ系でフォトンベルトを信じる人たちがマヤ歴と結びつけたがる原型かもしれない(ヘッセは結び付けていない)。この雑誌、またその雑誌を読んで触発されたスピ系の人々の著作によってどんどん広がったらしい、
持ち込み原稿から広まった陳腐な宇宙論
「シャーリー・ケンプ」って誰なのというとどうもはっきりしません。この雑誌の発行団体は、そのことを尋ねた人に対して中年女性と大学生が持ち込んだ記事だったとしています。
つまり、そもそもその出自は、いかがわしい終末論+占星術的解釈の作品を科学としてでっち上げた持ち込み原稿らしいのです。それが、この雑誌を通して世界中に広まり、焼き直しながら、現代のマヤ歴などとも結びついたと思われます。
参照:寺門和夫ブログ「Ganymede’s Garden」
フォトンベルトの源流(1)
http://blog.scienceweb.jp/?eid=53
フォトンベルトの源流(2)