16歳のときからオートバイに傾倒し、30代半ばまで主に重量車であちこちを走りまわっていました。あるいはカメラが好きで、街角スナップというジャンルを追求していたこともあります。
オートバイにうちまたがって、峠道を走るのも、たっぷりフィルムを持って街中を歩きながら、絵になる瞬間が訪れるときを嗅ぎ分けるのも、実は大変内省的な時間です。
エキゾースト・ノートは自分自身の吐いた声のようであり、現像したフィルムには、それこそ完璧に自分自身が写ったものです。
とにかく私は内なる自分に繋がる行為が大好きで、若いときは好きな小説家の作品の中にそれを発見するのに夢中になったこともあります。これはややインナー・トリップしすぎになりやすく、ヘルシーではありませんでしたが、面白かったです
実に贅沢な楽しみでしたが、これらがすっかり忘れ去られた背景には、整体師としての日常があります。
まずクライアントの予約を受け、来院を待ち、施術をし、その後の経過を伺うという一連の流れがある毎日というのは、かつて経験したどんな仕事や趣味よりも、内なる自分自身に思いを馳せることができるという、大変充実した毎日だったのです。
クライアントが改善しないことは、自分自身の怠慢に他ならず、クライアントの喜びは、私自身の癒しにも成り得る大きな喜びだったため、趣味の世界が面白くなくなり、趣味で活動することをやめてしまったのです。
オートバイは売り払われ、戦闘的なカメラは格納されたままになり、蔵書は読まれず、徐々にかび臭くなってゆきました。
ところが最近、写真の世界の大先輩が、facebookにリアリタイムでアップしている、美しい天体写真を観て
「星空を写す作業は真に内省的なのではないか?」と思い、天体写真に興味がわいてきました。
実際には、大変難しい撮影のようですが、齢を重ねて、夜間の患者さんが少なくなれば、思い切って天体写真にチャレンジするのも楽しいかも知れません。
ともあれクライアントをケアする毎日ほど、自分自身を建設的かつ健康的に見直し、向上するきっかけを掴める毎日はなく、私はいたく気に入っています