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肺がん(肺大細胞神経内分泌腫瘍=LCNEC)ステージⅣと診断されたおっさんのゆるい毎日。

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今日はこちら。

白川優子「紛争地の看護師」

国境なき医師団(MSF)の看護師として活動している日本人ナースの白川優子さんが、これまで活動してきた世界中の紛争地での経験や、その経験で考えたこと、感じたことを綴ったドキュメンタリー。
2015年には、ガザでも活動していて、その時のことも生々しく描かれている。

紛争地で生命の危機にさらされている人々は、歴史に名を残すことはなくても、ひとりひとりには愛とともに授けられた名前がちゃんとあって、その名を呼ぶ人が確かにいる。
戦争に巻き込まれた民間人だろうが、銃を撃ち合う軍人だろうが、撃ち合いをさせる政治家だろうが、そこに違いはない。
違うのは、立場だ。
立場だけで物事を考えるようになると、他者への尊厳を、人はどこかに置き去りにしてしまう。

命は地球より重いと、かつて日本の政治家が言ったそうだ。でも紛争地での命は、紙切れほどの軽さもない現実に、時に打ちひしがれ、時にやり場のない怒りを覚えながら、ひたすら目の前の命を救うことだけにエネルギーを注ぐMSFスタッフたちの姿に、圧倒される。
同時に、自分がこれまでどれほど幸福な人生を歩んできたのかを実感する。
断っておくけど、紛争地の人々と日本にいる自分とを単純に比べて、あちらよりマシな人生などと言うつもりはない。
でも、幸せでいられるなら、この幸せを全うしたいと、俺は思う。

昨日は、ワールドキャンサーデーだった。
がんであっても、4期であっても、俺には人生を楽しむための時間が与えられている。
実際、楽しんでいる。
願わくばこの幸せが、名前も知らない誰かの犠牲の上に成り立つものではありませんように。

そんなことを思いながら、数時間で読み切った。
おすすめ度は
☆☆☆☆☆


 

 

 

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