格差 | はい、がんなんですけど

はい、がんなんですけど

肺がん(肺大細胞神経内分泌腫瘍=LCNEC)ステージⅣと診断されたおっさんのゆるい毎日。

先日、島根県の地元紙に、けっこうショッキングな記事が載った。

 

 

この記事を分かりやすくするために、島根県の地理的事情について少し説明する。

 

島根県は、東を鳥取県、西を山口県、南を広島県と接する中国地方の日本海側に位置する県だ。南側は中国山地で山深く、北側は東西に長く複雑な海岸線をなしている。

国道9号が県を東西に貫く幹線道路で、並行する形で山陰自動車道が鋭意整備中(つまり未開通)。

この他、松江自動車道と浜田自動車道が南北に走り、それぞれ中国自動車道と接続している。

新幹線はない。空港なら3つある。

 

なお、国道9号の県内の東端である安来市から、西端である津和野町までの距離は、約230㎞。その路線のほとんどが片側1車線だ。

 

そんな島根県は、出雲地方(東部)、石見地方(西部)、隠岐地方(離島)の3つの地域に分けられる。この3つの地域には、様々な点で深刻な格差がある。その最も大きな格差が、経済格差と、人口格差だ。

 

今年元日時点での島根県の推定人口は66万人弱なのだけれど、この内、県都松江市と、出雲大社などの有名観光地を擁する出雲市がある東部に、46万人弱が暮らしている。

西部は18万人足らずで、離島の隠岐は、1万8000人と少し。

なお面積は、石見地方の方が広いし、海岸線もずっと長い。

 

この著しい人口格差は、医療分野でも深刻な格差を生んでいる。

もちろん、人口だけで格差が生まれたわけではないけれど、病床数500を超え、医師などの数も多く、設備も整った医療機関は、東部に集中している。

取り分け出雲市は、いずれも病床数600超の県立中央病院と島根大学医学部附属病院があって、医療サービスを受けられる機会の多さという点では、県内で最も手厚い。

 

さて、記事中の浜田医療センターは、県西部の病院だ。

病床数は365床。

がん診療連携拠点病院でもあり、県西部の3次救急医療も担っている。

そんな重要な病院でありながら、今年度限りで常勤の病理医がいなくなるかも知れないというのが、この記事が伝えることだ。

 

俺も、2020年3月に頚部リンパ節を郭清された時、細胞がすぐさま生検に出され(生検のための郭清だったのだから当たり前だけど)、病理医によってがんと診断された。

その時に見つかったがん細胞が

スピンドルセルカルチノーマ

なので、俺はブログで自分をすっぴんどると名乗っている。知ってた?

ちなみに、スピンドルセルカルチノーマは、日本語で「紡錘細胞がん」らしい。なんか知らんけど、珍しいやつらしい。

 

この時もしも病理医がいなくて診断が遅れていたら、治療のスタートも遅れていたと思う。

尤も俺の場合、がんということは分かっても、どこのがんだかすぐに分からなかったせいで、2週間余り、けっこうなストレスにさらされたけど。

 

抗がん剤治療で入院していた時、同じ部屋に県西部在住の人がいた。本人と話すことはなかったけれど、看護師さんとの会話が聞こえてくるし、訛りで石見の人だと分かった。

その人がどこのがんなのかは分からなかったけれど、いずれにしても、自宅のある県西部の病院よりも、東部の島大病院が良いと誰かが判断したから、同じ病室にいたんだろうと思う。

 

もしも、浜田医療センターが今後病理医を確保できず、院内で細胞診断ができなくなってしまうとしたら、県西部でこれからがんと診断される人たちは、診断のためだけに、わざわざ県東部の病院に入院しなくてはならなくなる。これは、大きな不利益じゃないのか。

 

とは言え、離島の隠岐は昔からその状態なので、こんなことで(こんなことでもないんだけど)騒いだら、隠岐の人に叱られるかも知れない。いや、叱られるな。ごめんなさい。

医療も経済活動の一端だと考えれば、人口の少ないところにはリソースを割けないという理屈も理解できなくはないけれど、命の重さを経済効率だけで量ることへの違和感は、やっぱり拭えない。

 

まあ、そのうち人口が減り過ぎて、島根県や鳥取県は、どこに住んでいてもまともな医療なんか受けられなくなるのかも知れないけどね。

 

 

甲子園を走った翌日に、妻と遊んだ六甲山ガーデンテラスで見つけた看板がツボだった。

 

お口直しに大阪湾の俯瞰写真もどうぞ。

 

 

 

 

 

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