SPIDER STORY II 最終章 ⑵ | lavaの創作ストーリー用ブログ

lavaの創作ストーリー用ブログ

lavaの創作ストーリー『LAVARATORY』を小説化したものを載せています。
厨二病なバトル小説書いています。

「ヴィーツァ…!?」
「おい…まさか…」
カードが粉砕した…って事は、ヴィーツァの息の根は、もう…
「まさか、ラーヴァお前…!」
「…いや、俺じゃない。」
「…えっ?」
ラーヴァがポケットから出した左手を見ると、確かにそこに持つディステンドのカードは未使用だった。
「じゃぁ誰が…」
「あれ!」
「…!?」
Cの指差す先…
此処からかなり距離はあるが、トーソービルの屋上、身長は低いが、何者か…後ろ姿が小さく見えた。
{47BB011C-672C-48E1-B8F7-A0D8ADC813A0}
白い天然パーマと白いパーカー…
手には…ライフル…!?
銃口からは煙が上がっている。
「間違いない、あの人物がヴィーツァを撃ったんだ。」
「一体、誰だ…?」
…あんな特徴の人物といえば…
「まさか、本当にまだ生きていたなんて、な…」
「…え?」
「皆、お疲れ様。」
久し振りに、無線から声が鳴った。
「ボス!」
「ディラーグ様…!」
「結末がどうであれ、俺の元部下、ヴィーツァをはじめとした奴等を倒してくれた事に変わりはない。本当にお疲れ様。」
「あ、あぁ…」
こんなにも波瀾万丈なバトルだったのに、残ったのは達成感というより疲労感…寧ろ少しやるせない思いが残る。
原因は全て、最後の一撃。
あんな終わりで良かったのだろうか。
「ラーヴァも、最後の最後での処理、ありがとう。」
「いや、俺は大した事してねぇよ…」
…確かに。
突然来てカードを粉砕させただけ…
「ところで、何故彼奴だけ残しておいたんだ…?彼奴も七年前の時にいたし、カードはあるだろ?」
ディラーグがラーヴァに問う。
「『彼奴』…?」
「あぁ、彼の事…だろ?」
ラーヴァが再びカードを一枚出す。
「そ、そういえば…」
「…確かに、まだ此奴だけ粉砕してなかったな。」
あのカードは…
「エグゾンか!」
「その通り…」
「でも、一体どうして此奴だけ…」
「そんなの、簡単さ。エグゾンのカードは残しておかないと…彼等が帰れないだろ?」
「彼等?」
ラーヴァの目線の先には、ラムダやイオタ…CRACKSをはじめとする古代のメンバー。
そうか、唯一時を越える技を持ち合わせるのはエグゾンだけ…
既に粉砕してしまったヴィーツァやディガンマの技は使えない。
予め、それを見越してエグゾンのカードだけ残していたという事か…
「この助っ人達を、過去に戻してあげないと可哀想だろ?戻した後で、このカードは粉砕する。それにもう一人、時を越えて来た人物が…」
もう一人…?
「あ、彼奴か!」
「やっと正気を戻して帰ってきたみたいだな…スペイス。」
成長したスペイスが、そこには立っていた。
「未来のスペイス…!」
「…過去の皆、ありがとう。」
「しゃ、喋っている…!」
「皆のお陰で、本来いるべき時間に帰る事ができそうだ…嬉しい限りだよ。」
ちょっと落ち着いた口調で歩み寄り、スペイスは言った。
その身体には…俺達がつけたと思われる沢山の傷…
とても心が悼む。
「未来の、俺…」
「おう、最後に大活躍したらしいじゃないか、この時代の俺…腹にある痛々しい傷が、それを物語っているよ。」
「いやいやこれくらい…それより、正気を戻せて良かった。」
「ふっ…それは君達のお陰だよ…」
未来のスペイスは、嬉しそうに微笑む。
「そうそう、古代の皆から聞いたんだが、操られたお前と戦っていた時に、ジョーカーが身体を乗っ取って宣戦布告をしに来たと…何か心当たりはあるか…?」
「ジョーカーが、乗っ取って…?いや…俺は分からないな…俺の精神はこの身体に少し残っていたとは言えど…誰かが新たに侵入してきた感じはなかった…」
「そ、そうか…」
疑問が残った、不満気な表情を顕す。
「よし…それじゃぁ、古代の皆も、未来のスペイスも、帰れるって訳だし…一件落着かな!」
ディラーグが再び声を飛ばす。
「そうだな。」
「いやはや、本当に七年間の時を越えてまでのバトル…お疲れ様だわ…」
「あぁ…」
「…ところで、ヴィーツァから取り上げたそのPtソード…どうするんだ?ラーヴァ…」
「俺かよ。まぁいいや、俺が二本管理するとするか…」
「闇落ちだけはするなよ?」
「それはねぇよ!」
途端にこの場が笑い声で満ちる。
まぁ、今回の二の舞になりかねないし、信用できる奴に預けるのが一番…
「さぁ…時を越えし者達、帰るがいい…道は、こっちだ!」
ラーヴァはエグゾンのカードを振り、四次元フレームを二つ登場させる。
「ありがとう、古代の皆!」
「ラムダ、イオタ、オミクロン、カイ…CRACKSの四人。」
「そして、イータ、イプシロン、サンピも…」
「あぁ…俺達の曾孫にも、宜しくな。」
「おぉ。」
…ん?「俺達の曾孫」…?
他の古代の皆なら分かるが、ラムダが言うってなると、彼の曾孫って…?
「そして、未来のスペイスも…」
「この時代の仲間達…とても感謝し切れないさ。ありがとう。」
言葉を遺し、八人は四次元フレームを潜る。
「ありがとう…!」
この時代の戦士から、感謝の言葉が飛び続ける。
…やっと、これで終わったんだな…
俺自身も、そう実感できる雰囲気だった。
「にしても、良かったな…七年間を経てやっとヴィーツァによる操りを解く事ができた…彼にとっては過去となるこの時代に連れて来られ、本心に戻ったスペイス本人としては三年前に来たような気分…未来に戻る方が気が引けそうだが…」
「どのみち、それが彼のいた場所なんだ。狂った時間軸は、戻してあげないとな…」
ザイディンと俺は、そう言葉を交わす。
「そうだな…彼も相当苦しかっただろう…未来のヴィーツァに監禁され技コピーでマインドコントロール…別のパラレルワールドに導かれた今では、未来もきっと平和だろう…」
「安心だな…あれ…うん?」
「…どうした?ツェーン…」
アハトが問う。
「考えてみれば、七年前に行ったあの未来で過去の皆が助けに来てくれる直前…助けられた未来のジェイト、言っていたんだよ。ヴィーツァの技コピーによってマインドコントロールで操られたというのを逆手に取って、ジェイト自身のマインドコントロールでヴィーツァ達を止める事はできないのか未来のザイディンが訊いた時に。ヴィーツァ達はそれを想定して操られない錠剤を既に含んでいるから無理だと。結局マインドコントロールし返す事はせずに戦い続けたんだ。」
「…それのどこに、疑問が…?」
「その錠剤は、薬剤師の資格を得たスカイカットが独自に開発したもの…つまり俺達の側にしかそれを所持している者は、いなかった…ヴィーツァ達が持っている筈がない。」
「…確かに」
つまり、あの錠剤を含むどころか、そもそもヴィーツァ達に行き渡っていたという事自体がおかしい。
…あの時は気付かなかった疑問…
今更ながら、どうして…
「それ、本当なのか?それを見たのはお前しかいないのだが…」
「本当だよ。そんな無駄な嘘つく訳…」
「…見つけた。」
「なっ!?」
突然、目の前を物凄いスピードで鎖が飛ぶ。
先には、手錠だ。
その標的は…
「兄貴っ…!」
「アクト!」
「…ちっ、侮ったか…」
それにこの攻撃は…
「警部…!?」
「久し振り。」
あの時空き地でも会った、ドットって警部だ。
その隣には…?
「悪いな、亡き上司の力を、助手に借りさせてもらった。」
「亡き上司…?助手…?」
「あぁ、突然登場させてびっくりさせたかもしれない。スィオリ警部のメカを発動させて脱獄者アクトの捜索をしていたんだ。そしたら何だか大変な事になっていたようで…捜索も兼ねてちょっと参戦させてもらったんだ。」
「あのメカ達の操縦者は…警部だったのか…」
そうか、それで謎が解けた。
道理で操作が不慣れだった訳だ。
「んで、その許可を得るのと、操作方法を教えてもらうのとで、スィオリ警部が科学者として活動していた時の助手を呼んだんだ…知ってるんじゃないか?彼女。」
「えっ…?」
ドット警部の隣に立つ、白衣姿の人に目を移す。
「あれっ…ラクト…!?」
「えっ、嘘!?ラクト!?」
シェルリアが反応する。
間違いなく、七年前の黒軍にいたラクトだ…
まさかファクトの助手をしていたなんて…
「ラクトじゃん、久し振り!」
「シェル…C…ティス…!皆久し振りだね~!」
そ、そうか、数少ない女性メンバー…
数少ないからこそ、仲も良かったような…
「さて、とにかく。」
「…!!!」
再び声を上げたドット警部。
既にその手にはアクトが拘束されていた。
「ザイディン君にとっては、大事なお兄さんかもしれないが、過去に罪を犯した、危険人物且つ脱獄者だ。このアクト・エクストはまた署の方まで来てもらうとする。勿論、その後に懲役刑となるだろうがな。」
「ち、違う、聞いてくれ警部!兄貴はジョーk…」
「いいんだザイディン。」
「!!!」
ザイディンが、口を閉ざす。
「俺が伝えたい情報は全てお前達に渡したつもりだ。俺が正式に釈放されるにも、結局それが解明されて無実の証明にならないといけない。残りは、今後お前達が『奴』を調査し、取っ捕まえるだけだ。期待しているぞ、弟子であり実の弟…ザイディンとその仲間達よ。」
「アクト師…」
「師匠…」
抵抗する気は、全くなさそうだ。
アクトは、ドット警部に導かれるがまま、連行された。
「…親父が見つけ出せなかったのは、心残りだな…」
「…えっ?」
アクトは最後に、ボソッと呟いた。
「ジョーカー…そうだ、ジョーカーだ。」
「…何だ?」
「お前達の今度の標的は、旧黒軍の頂点だったジョーカーだよ!今度はお前達が『奴』を仕留めるんだ!」
こちらを指差して、ラーヴァが言う。
「何だよ…お前に言われなくなって分かっている。」
「そうだな…君達の幸福のためにも、ジョーカーは潰さなきゃならない。」
無線からも、乗るように声が届く。
「黒軍のボスもか…」
「そりゃぁな…こんなにジョーカーの存在が浮き彫りになってしまったなら、標的にせざるを得ないだろう。彼奴は、強いぞ…ヴィーツァなんかの比じゃない。」
「ディラーグ様…ジョーカーを知っているんですか…!?」
「まぁな…どうであれ、今日はさっさと帰って休んだ方がいい。治癒も必要だが、何よりも疲れただろう?本当にお疲れ様。」
「あ、あぁ…」
色々といざこざはあったものの、最終目的、ヴィーツァ達を倒す事は達成した訳だ。
七年前からの無念…やっと終わらせる事ができた。
これからはまた別の標的に目を向けていかねばならない。
俺達のボス、フィートさんも助け出さねばならないし…
再逮捕されたアクトも救い出さなくては。
恩をもらった俺達が、今度はそれを返す番。
待っていてくれ…皆、そしてジョーカー!
手掛かりを見つけ、推理していく所から始まる事になるが…
それはまた、別のお話。
「それでは、白軍黒軍共に七年間…お疲れ様!解散だ…!」
無線がまた、声を伝えた。

…その頃。
「…あれっ?おかしいな…」
陰でディステンドのカードを何度も振るラーヴァ。
それと別の、罅一つ入る事のないカードをまじまじと見つめ…疑問と汗を浮かべる。
「こっちからカードの粉砕ができないって事は…遅かったか…」

続く。