lavaの創作ストーリー用ブログ

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lavaの創作ストーリー『LAVARATORY』を小説化したものを載せています。
厨二病なバトル小説書いています。

「もうお喋りはいいだろう、さぁザイディン、殺しの時間だ。」
「………!」
露にした右眼に炎を灯すザイディン。
…本気だ。
すると、いきなり炎で創られた鳥を3羽程飛ばし…
「!!!」
足に炎を灯してルダへ瞬間的に高速で接近する。
そこに、ルダはすかさず鉄球で攻撃し…ザイディンに掠める。
小さく鈍い音が鳴る。
衝撃波がザイディンの身体中に伝わったと思ったその瞬間…
「紅鎌無双」
「!!?」
赤色の鎌が無数に空から落ち、ルダを蹂躙する。
赤色の武器…まさか…
「Λ覚醒っ…!」
隣にいるファルギアがそう呟いた。
そう、Λ覚醒は赤を基調とする覚醒で、戦力拡大効果があり…限られた人物のみが有する覚醒。
そのトリガーとして、覚醒の準備を備えた状態で、ある程度の攻撃を受ける事が条件…
ザイディンは、予めΛ覚醒を予定し、態とルダの攻撃を掠めた、という訳だ…
覚醒により、顔面等に赤いラインが入るなど、その変化した姿の見てくれからは、「グロテスク覚醒」とも呼ばれる。
この世界ではしばしば使われるこの覚醒。
戦いの中では莫大な能力を備え、重要な役割を担うが…ファルギアは過去に蹂躙された経験があるからか、この覚醒を忌み嫌っているそうだ。
すると…
「…ふん、面白い。」
「!!!」
その声が聞こえたかと思えば、砂埃の中から衝突音と共に、地面を伝って振動が響く。
その瞬間、ザイディンの足元を次々に鉄球が襲い、後方へ後退りしていく彼の居場所を追うかのように攻撃が連続し…そのまま鉄球が止まる。
鋭い目付きで砂埃の方を見るザイディン。
すると、目の前に鉄球が横向きに弧を描いて飛び出す。
ザイディンは直ぐに屈んで避ける。
そこに…
ザイディンが地面に刺した鎌の鉤部分。
その場所から鉤が飛び出すと同時に赤い針のような物が無数に飛び出す。
血針乱舞だ。
その間も炎の鳥は旋回し続け、ルダの体力をじわじわと奪う。
しかし…
「…!」
砂埃が次々に切り裂かれて、少しずつルダの姿が目視できる。
鉄球を回し続け、ザイディンの攻撃を阻んでいるようだ。
掠り傷はあれど、ルダはほぼ変わらぬ立ち振る舞いのまま。
そこで…
「天カラノ鉄槌!」
「!!!」
ルダが空中に放り投げた鉄球。
その瞬間に、ザイディンの周囲を止めどなく叩き潰すように、無数の鉄球が落ちる。
「…ぐっ…」
俺の視界にギリギリ映るザイディンは、両手を交差させて、数多の鉄の立方体を頭上に召喚して、攻撃を妨げているようだ。
だがあまりの鉄球の数と質量に、ザイディンに響く衝撃が尋常じゃない。
直接的な攻撃だけは防げているが…果たして。
あまりの攻撃を目の当たりにし、俺はふと短剣を構えてしまう。
少しでもルダを止めるフォローができれば………
鉄球の落下が止み、衝突音の余韻だけが耳に残る。
しかしそこに…
ルダによる追加の鉄球攻撃が、ザイディンの横から襲いかかる。
まずい。
今からでは短剣の攻撃はルダに届かない。
Λ覚醒していれば短剣の瞬間移動機能があるのだが…
鉄球がザイディンに漸近する。
だがザイディンは、さっきと同様の防御をしない。
…それどころか、口元は…
歯を見せて笑っているように見えた。
ルダの鉄球が、ザイディンに当たった…かのように見せて、反発される。
「!!?」
あれは、自身の周囲を透明な立方体で包み攻撃を阻むザイディンの技、リバーススクエアか…!?
…いや、それにしても以前使用していた時より防御力がかなり高い。
攻撃力の高い攻撃にはあまり通用しなかった上に…その防御壁が可視できなかった。
…まさか、多方向への防御を極限まで薄くして、ルダの攻撃にだけ防御を一点集中させた…?
ルダが一歩退いたその瞬間…
「!!?」
何者かがルダを襲う。
「…あれは…!?」
クリーム色の長髪、垣間見える三つ編み…
そして、腕に装着した、万年筆の筆先のような刃物の武器…
ルダの身体を少しずつ切っていく。
その顔は…
右眼に眼帯、左眼にモノクルを装着し、あまり見えないが…顔立ちは良さそうだ。
…と思ったその瞬間…
ルダの攻撃がその姿を露にしていく。
「…っ!」

吹き飛んだモノクル。
その眼は大きく、紫色の輝いた瞳。
その時。
「フレイムサイズショット。」
「!」
ザイディンの、炎を纏った小型の鎌が数個程、ルダに投げられる。
「ふん。」
ルダは一歩退いて着地する。
ザイディンも直立し、構え直す。
…突然現れた女性は…?
「…やっぱりお前だったかザイネ、こんな所で何してるんだ?」
…ザイネ?
「…にっ。」
呼ばれた女性は立ち上がる。
「あんたが狙われてるって聞いてね。…私は心配でならなかったって訳よ。」
明るい表情で、そう話した。
「…ったく…」
呆れたように、ザイディンは呟いた。
…なになに、知り合いなん?此奴等。
そう思っていたその時、ザイディンは此方に向き直る。
「…あー、不審がらせて悪い。此奴ぁ、俺の彼女…と言ったらいいんか、名をザイネ。」
「は!?彼女!?」
ま、まじか…
あんな斬新な格好の奴が…
「…そんな事より、今はディヴィラルを…!?」
そう言って視線をディヴィラルに写したザイディン。
そこに映ったのは…
「あれは…!?」
「確か…レイ!!!」
ディヴィラルを抱えて、黒いマントの男が立っていた。

かと思えば、直ぐにその姿はディヴィラルを抱えたまま、去った。
半年前の惨劇に見たあの姿…
名は、レイだったはず…
だが、あの頃の彼奴は、心を操られた上で敵の団体に所属…
メタリルやレルから聞くに、今は何やら軍の立ち上げに忙しいと…
どうして…此処に…
「…確か、ディヴィラル…彼奴も新しい軍の構成員として呼ばれていると…」
「なっ!?」
ザイディンはそう呟いた。
まさか、レイはディヴィラルを助けに…?
それならば、ディヴィラルの安否はきっと、委ねても良いのだが…
その瞬間。
「!!!」
ザイディンに、再びルダが襲う。
鉄球の攻撃をザイディンが鎌で応えようとしたその時…
ザイネの武器が、ルダとザイディンの間に入り、攻撃を阻む。
「…ちっ。」
ルダは舌打ちをし、また一歩退く。
「…この場に4人もいては、あまりにも分が悪すぎる。…今のところ手を出していない、そこの2人も…そのうち反旗を翻してきそうだしな。」
「………。」
ふと横を見ると、ファルギアもしっかりと武器を握って構えていた。
今にも攻撃を始めそうな勢いだ。
「…ふん、最後の一人は、楽しみに取っておくさ。…軍を準備して、お前達を抹殺する。首を洗って待つがいい。」
そう言い捨て…ルダは止める間もなく足早に去った。
「…ちっ。」
4人が立ち竦む中…ザイディンの舌打ちが、からっ風の吹く丘に一つ、残された。

続く。
『…なるほどな。つまり事件の首謀者ルダは、何かを繁栄させないために誰かの仲間を根絶やしに…。それが奴の目的だと…』
「あぁ、そう言っていたらしい。」
…やっとこの秀才、エイトに情報を伝える事ができた。
それにしても、ただでさえ情報が多いというのに…此奴に全てを伝えるのにはかなり徒労するものがある。
常人なら聞き取れるはずの単語を聞き間違えて、逐一聞き返してくるのだから。
「…それで、何か気付いた事は?」
ザイディンがそう口を挟む。
『…うーん…7~5を示す図形が残された場所は孰れも戦闘痕に共通点があり、『痕同士に距離が空きすぎている』…4を示すのはイグラスが襲われた時…同様に3はフィートさん、2はリドル…』
「うんうん」
『…それでいて首謀者のルダといえば、あの『古の廃墟』でレルが言っていたように、ハクアを師匠としており…そのハクアは…まさか…!?』
エイトが何かに気付く。
「どうした!?…何か分かったのか…!?」
『…あぁ、きっとこの事件のキーパーソンは、アクトだ。』
「アクト…!?」
「兄貴!?」
ザイディンも一緒に驚く。
それもそうだ。
実の兄の名前が突然、キーパーソンとして挙げられたのだから。
『そう、アクト…。ザイディンには耳の痛い話だろうが、ルダは数ヶ月前に自分の師匠であるハクアを、アクトに殺された。それをきっかけに、ルダはアクトに恨みを持ったんだ。』
「なっ…!?」
「な、なるほど…」
「だがどうして、それがこの事件に繋がるんだ?」
『あぁ…まだ推測の域を出ないが、ルダはアクトに恨みを持つだけでなく、アクトの周囲の人物…それも、空間技を持つ人物に対して、何らかの私怨を持っている。奴は、空間技そのものを根絶やしにしようとしているんだ。』
「空間技…!?」
一体どうしてアクトだけでなく、空間技を…
『先ずその根拠として、事件現場の共通点、『痕同士に距離が空きすぎている』…これは、空間技での戦闘そのものを暗示している。空間技は、空間と空間を繋ぐ技。それを繰り返し利用していたら、結果的に戦闘をした場所が断続的になるだろう。…きっと7~5の数字を示す図形が残されていた被害者達もまた、アクトの弟子なのだろうな。』
「な、なるほど…確かに、この特徴から空間技が浮かび上がる…」
『そして、フィートさんは元々、固有の能力を授けるカード7枚を、前のボス、フィアラルティリアさんから受け継ぎ管理していた。そしてその中の闇のカードによって、フィートさんにも空間技が発現していたとしたら…』
「確かに…ボスが使用しているのはこの目にした事がないが…カードの所持期間が長いとその能力が定着する…条件としては合致している…!」
『あぁ、おまけに、病院に残された10と9の数字を示す図形…きっとアレは、あの病院で亡くなったとされる人物の中で、空間技を扱える人物…。それも、先ず一人は、昔の白軍のボスであるフィアラルティリアさん…そして、もしかしたら昔の白軍に、フィアラルティリアさんが空間技を授けた人物が一人、いたんじゃないか…?…それもきっと、ザイディンやアクトの師匠にあたる人物…とか。』
そうエイトが発言すると、ザイディンは口を開いた。
「…あぁ、兄貴の師匠にあたる人物が一人…それもフィートさんの戦友にあたる、旧白軍の一員、その名は、キリア。」
「…!」
『やはりな…そうなると、時系列順に考えて、10と9は、キリアって人とフィアラルティリアさん。8は警察に残っていた事から、今も収容されているアクト本人。その証拠に、奴の本命を示すかのようにあの図形だけ黒く塗り潰されている。』
「た、確かに…」
『そしてそのまま、7,6,5…と来て、4のイグラス、3のフィート、2のリドル…と続く。』
流石はエイトだ。
この短時間でここまで解き明かすとは…
「しかし、何故ルダは…アクトではなく、空間技に焦点を当ててこの事件を起こしたんだ…?」
『その真意はまだ分からないが…太陽の図形が、それを暗示している。太陽…つまり、その図形自体を漠然と捉えると、それは、星。カウントダウンを経ると同時に、星の図形は周りの線の数を減らし…その様子はまるで、星が輝きを失っているようだ。星が輝きを失うといえば…星の寿命。その中でも、星自身の重力に耐えきれず潰される超新星爆発、そしてそれによって生み出されるのが、ブラックホール…。そう、ブラックホールと極めて酷似した見た目をしているのが、空間技だ。あの図形は、空間技そのものを暗示しているとも見て取れる。』
「な、なるほど…」
確かに、そう考えると、全てに合点がいく。
だが、一体…その真意とは…?
『此処で一つ。未だ疑問が残る。』
「…何だ?」
『ツェーンとザイディンと一緒に『古の廃墟』に向かった際、どうしてルダ達がザイディンの居場所を知ったのか、だ。…その後にザイディンが向かった場所にも、すぐ部下を送る事ができたのにも、疑問が残る。』
「…確かに。」
『フィートさんがフィートタワーにいる事くらいなら、フィートさんがボスを務める白軍の拠点がフィートタワーなんだから、容易に想像つくし…反して、『古の廃墟』の時は、奥にある部屋で俺達が話し始めてそれなりに時間が経ってから奴等は現れたし…ザイディンの居場所が分からないはずなのに、奴等は一直線に『古の廃墟』に来た。』
「そ、そうだな…確かに妙だ。」
『何か、ザイディンの居場所を掴んだ術が…あったのか?』
そこに残る謎。
まだこの事件の完全解明には程遠いようだ。
「…うん?」
「どうした、ザイディン。」
「…いや、もし本当に空間技を狙っているのだとしたら、まだ残っている二人のうち、一人は俺だとして…」
「うん。…あっ。」
「もう一人って…」
「まさか…」
『いるのか?…ザイディンの近くに、空間技を得ている人物が…』
「あぁ、何年か前までライバルとして切磋琢磨していて…兄貴の弟子だった、ディヴィラル…」
「…次に狙われるのは、きっと彼奴だ…!」
そうだ、ザイディンとは長い付き合いで、アクトの弟子だったディヴィラル。
この推理通りなら、次に狙われるのは、彼に違いない…!
「行くぞテン、ディヴィラルの元へ…!」
「あぁ…!」
「そういう事なら、僕も同行しますよ。」
不意に声を掛けたのは…
「ファルギア…!」
「よく覚えていましたね…僕の名を…」
さっきとはうってかわって、元気を取り戻したようだ。
いつもよりテンションが低いのには変わりないが…
「…もう、大丈夫なのか?」
「えぇ、此処で貴方達の行動に同行しなければ…リドルも浮かばれませんからね。」
ザイディンの問いに答えてそう言うと、ファルギアは小さく微笑んで見せる。
「…ふっ。」
「よし…行こう!」
その視界の端…
またしてもあの姿…
クリーム色の髪をした、謎の人物が此方を見ているように見えた。

「…で?、ディヴィラルとは連絡は…?」
俺達3人は走りながら、話す。
俺の問いに、ザイディンは息を荒くしながら答える。
「いや…電話もショートメールも応答無しだ…しかし、位置情報アプリを見るに、何故か『苦境の丘』にいるようだが…」
「は!?おまっ…Z〇nly入れてんの!?」
「い、いや…彼奴にしつこく言われて…いざと言う時にって…まさかこんな時に役に立つとは思わなかったが…」
…世代的にも性格的にも、ザイディンには不釣り合いすぎる…
まさかザイディンが、そんなものを使っているとは…
「…ですが、目的の丘でしたら、もう少々走れば…」
「…そうだな、もうここまで来たら、現着した方が早い…」
只管走る。
連絡がつかず、消息の掴めないディヴィラル…
…まさか、もう…
「…そろそろだ…!」
ザイディンがそう叫ぶ。
丘の方向からは、微かに戦闘音のようなものが聞こえる…
やはり、既にルダの一味が…!
整備されていないガタガタな道を越え、やや急な坂を駆け上がり…
砂埃を立たせながら、丘の頂上でブレーキを掛ける…!
「ディヴィラル!」
ザイディンが叫んだ。
すると…
「…!!!」
目の前には、白髪、黒い布で眼を隠し、棒の先に鉄球がついた武器を持った姿…
紛れもない。
ファルギアからも聞いたこの特徴ある姿…
ルダだ。
その姿の周辺にも僅かに砂埃が立ち込め、その砂埃が晴れたところに…
「!!!」
血塗れで今にも意識を失いそうなディヴィラルの姿があった。
「ディヴィラル…!」
真っ先に走り出すザイディン。
俺とファルギアは、ルダから少しの距離を取って構える。
ザイディンはディヴィラルの傍へ走り、ルダからディヴィラルを守るように屈んで、鎌を構える。
「お前がルダか…貴様っ…!」
「ふん、まさかお前の方から来るとはな…最後の標的、ザイディン…」
「…!」

無表情でザイディンを見るルダ。
それに対し、ザイディンは歯を強く軋って睨む。
その足元には、砂地にやや大きく、血で描かれた丸に…線が、一本。
1を示す、太陽の図形だ。
「助かるぜ、これで俺の使命が遂行できそうだ。空間技を絶ち、征服計画への障害を取り除けそうだ。」
「征服計画…!?」
「あぁ、俺は、俺の師にあたるハクア・コガの仇討ちという私情を踏まえ、とあるお方から、空間技所持者抹殺の命を受けた。それにより、俺は仲間を集め、この事件を起こした。」
「とあるお方…!?」
「…ふん、それは、口を割る事は許されていない…」
「ちっ」
ルダの更に裏に、これを命じた黒幕が…
だから、ただアクトに対しての仇討ちを企んでいるだけではなかったのか…
その黒幕って…一体…

続く。
「ルダ…貴様があの事件の…!?」
「あぁ、ご名答…」
全く表情の見えないルダ。
得体の知れない敵に、僕は武器を強く握り締めます。
同様に、隣のリドルも無言で彼方を睨みつけ、剣を握り締めます。
「何故…何故リドルを狙うのですか!?」
「ふん…それは奴の仲間を根絶やしにするため…アレがこれ以上繁栄されたら、俺達にとっては大問題…」
「奴の仲間…?」
奴とは一体…
「それ以上は今後のお楽しみ…」
「ちっ」
ルダは此処で一度口を閉ざし…それ以上の情報を教えない事を強く暗示しました。
そして…
「さて。」
そう一段落つくと…
ルダは武器を持たない方の手を後ろにし、そのまま前へ戻すと…
「!!?」
現れた人物に、僕は驚愕、そして愕然としました。
「見つけるのに苦労したぜ。」
右眼を隠すように長い美しい金髪に、青いマフラー。
その姿はぐったりと、意識を失っているようです。
リドルは全く分かっていない様子ですが…
「エルナ!!?」
「そう…お前、ファルギアの最愛した女…エルナ・アライプだ。今回は此奴を…」
ルダは持参したその姿を、盾のように前に構えました。
「人質にしてもらう。」
「なっ…!!?」
焦燥と憤怒と絶望と…
様々な感情に振り回され、頭が回りません。
未だ無言ではありますが、リドルも状況が分かったようで、冷や汗を流しているのが横目で見えました。

「いやぁ、リドルを狙うだけでは面白味が無いんでね…ファルギアも動いていると聞いて…彼女の弟さんを脅して情報を盗み、死に物狂いで探させてもらった。」
「何っ…!!?」
知らないうちに、僕は歯をギリギリと軋っていました。
まさかこんな所でこんな状態で再会する事になるとは…
最悪の再会。
お付き合いは続いていないとはいえ、嘗て愛していた人物がこうして人質にされるなんて…
僕は絶対に許せません。
「くっ…!!!」
武器から電撃を強く発生させ、ルダに向かって高速移動します。
だが…
「此奴がどうなってもいいのか?」
「ちっ…!!!」
エルナの身体を盾にされました。
一体、どうしたらいいのでしょうか…
僕は一歩退きます。
しかし…
これでは手が出せません。
すると…
「リドル…?」
リドルが此方を見て、強く頷きます。
…まさか…
途端に、リドルは持ち前の技、空間技でルダの背後を取ります。
その瞬間、ルダは其方を向いて攻撃、リドルはそれを受け止めます。
…なるほど、ルダの狙いはリドル。
彼はそれを利用して自ら囮を買って出たという訳ですか…
僕に背を向けたルダ。
僕はすぐさま、武器の属性引力を用いて高速移動でルダに近づきます。
僕の武器は、予め登録していた属性との引力を発生させます…
リドルの闇属性を利用し、僕とリドルとを繋いだ線分の通過点にあたるルダに、瞬間的に移動しました。
それを予見してか、ルダはエルナを僕の方に向けますが…
未だルダはリドルへの攻防に集中…
僕は、エルナを掴むルダの手首を、強く握ります。
「!!!」
その瞬間、僕の持つ覚醒を踏んで、強力な一撃を準備します。
覚醒によって黒く変化する僕の姿。
身体から放射状に電撃を発するエレクトリックレイディエイションを先に放ち、ルダを眩ませ…
直後。
「エレクトリックランス!!!」
「!!!」

電撃と同時に、力強い一突き。
エルナを片手で守りながらですから、少々力は落ちてしまいますが…
そんな事は当然。
守らずして無神経に攻撃するなんて事は憚られます。
ですがその瞬間…
ルダは屈んで攻撃を交わし、間一髪この攻撃を避けます。
電撃だけ僅かに食らっているようですが…
そして、ルダが避けた事により空振りした攻撃の行き先はリドルに…
しかし、流石の彼。
その動きを予想していたのか、空間技を巧みに扱って僕の攻撃をリドルの向こうへ流します。
直後、ルダの武器が僕の足元へ…
「!!!」
僕は小さく跳ね、電撃製の円形の移動式足場を召喚…
それに脚を乗せて距離を置きます。
その直後…
「ふん」
ルダの攻撃がリドルへ…!
「リドル!!!」
ルダの棒の先端についた鉄球。
それがかなりの質量と速度を持ち、リドルの四肢を高速で壁へ衝突させます。
…リドルがぶつかり、その壁の上部からガラガラと落ちる瓦礫。
あれではきっと、リドルはかなりの体力を削がれたでしょう。
「くっ…」
歯を軋る僕。
これじゃぁ手に負えません。
「…ふん、さぁ、どうする…?」
「…!!!」
エルナの首を圧迫していくルダ。
意識は未だはっきりとしませんが、明らかにエルナの表情が苦しそうです。
「やめろ!!!」
電撃の足場に乗ったまま、ルダの居場所へ高速移動します。
「僕は…彼女に手を出させない!!!」
近づく僕に対して…今度はルダは、エルナではなく、武器を向けます。
僕もまた強力な一撃を向けますが…
ルダの武器の質量には勝てず…
「がはっ!」
身体を吹き飛ばされます。
血を噴きつつも、ゴロゴロと転がされる身体。
そのまま僕は身体を起こそうとしますが…
「ぐっ…くっ…!」
あまりにも強い攻撃を受け、直立をも妨げられました。
それを見て…
「…ふん、此奴ぁもう要らんな。」
「エルナ!!!」
ルダはエルナの身体を投げ捨てました。
そして歩んだ先は…リドル。
武器を構え…そのまま…
リドルの四肢をボコボコに痛めつけます。
「り…リドル…!!!」
ルダは攻撃を止めません。
呻き声すらも発さないほど弱るリドル。
何も出来ない自分にもどかしさを感じつつも、焦燥と絶望が膨らみます。
「やめろぉーーー!!!」
そう叫んだその時…
「…うん?」
ルダは何かに気付きました。
「…ちっ、サイレンの音か。」
そう、僕が隙を見てスマホで通報した警察のパトカーの音です。
警察に僕が喋る事はできませんが、通話を繋いでこの状況を聞かせる事は可能でした。
通話を繋いだまま、付近の音が聞こえる範囲内にスマホを投げ捨て…
それも、信頼の深いスィオリ警部へと。
よく聞くと、救急車の音も聞こえますから、きっとスィオリ警部が手配したのでしょう。
その時。
「ファル…ギア…?」
「エルナ!?」
一瞬だけ意識を取り戻したのか、小さく開くエルナの瞳。
しかし、それは直ぐに閉じ…
またがっくりと首を項垂れます。
「………!」
「…ちっ、仕方ねぇ。」
サイレンを聞いたルダはそう言い、武器を強く掴み…
背を向けたまま、顔だけ此方を向き…
「また、会おう、ファルギア。」
そう吐き捨て、ルダはその場を去りました。
「…よく覚えて…おいてくださいよ…」
徐々にピントが合わなくなる視界…
焦点の安定しないまま…その端に写るリドル。
自身の瞼によって狭まる視界。
リドルのその足元にうっすら見える太陽の図形。
「…僕の、名を…!」
サイレンの音が大きくなりそのまま止まったのを確認し、安心したのか…僕はそのまま、目を閉じてしまいました。

「なっ…」
「ルダ…!?」
エピック病院。
俺達3人は、ベッドに寝かせられた、重体のリドルを囲んで話す。
事件に遭ってボコボコにされた彼の治療は終わったが…それでも、意識が戻るのにはかなり時間がかかりそうだ。
そんな中、さっきあった状況をファルギアから聞いて、俺とザイディンは驚きを隠せない。
「あの『古の廃墟』を訪れた時に聞いた、ルダだったか…」
「まさかとは思ったが、本当にリバース様から聞いた情報が関係しているとはな…」
事態を顧み、呟く俺とザイディン。
それに反して、ファルギアは珍しく意気消沈しているようだ。
…無理もない。
仲間の一人が目の前でこんなにボコボコにされたんだ。
命に別状は無いとはいえ、かなりの重体で意識も戻らない。
身も心も満身創痍。
普段あんなにおちゃらけている彼でも、根はしっかり確立した心持ちを携えている。
そんな彼だからこそ、この状況にショックを強く受けてしまうのには、俺達が同情してしまうのも容易い。
「…それにしても、ルダの今度の狙いはリドルだったか…」
そう呟くザイディン。
それに俺は答えて言う。
「…リドル、彼奴はファルギアを筆頭とする、クロスジーンの意志を継ぐ団体の、一員。深くフードを被り、小柄。その性格は、普段はかなりフランクに話すが、戦闘時だけ寡黙になる…まるで二重人格。一言で言うとその様子はまさに『謎』だが…かなり汎用する技である空間技からも分かるように…嘗てはあのアクトが弟子にして稽古をつけていたという人物…」
「…あぁ、そうだったな…」
アクトの名が出たからか、ザイディンは顔を顰めたように見えた。
「そして、案の定…現場に残されていた太陽の図形が意味する数字は、2。」
「カウントダウンが続いているな…」
「あぁ、これはきっと…この事件の標的がまだあと2人残っている事を示唆する。…そのうちの一人が、きっとお前、ザイディンだろう。」
「あぁ、違いない。…二度ほど襲われているとはいえ、ルダの部下によるもの。…恐らく俺に対しては未だ詮索段階なのか…その証拠に、俺を指す太陽の図形は残されていない。」
「あぁ、そうだな…そして残るあと一人は…」
「あと一人…」
考え込む俺達。
一体それは…
「…首謀者がルダだと分かったとはいえ、その動機が分からないと…」
「…そうだな…だが、直ぐに分からない事をこんな所で長考しても仕方がない。…ファルギアにも悪いし、俺達は一旦退室するとしようか。」
「あぁ、そうしよう。」
立ち上がる俺達。
病室の扉を開き、俺達は廊下に出る。
「…邪魔したな、ファルギア。」
「また今度。」
そう言い、扉を閉める。
俺とザイディンはそのまま、エピック病院の出入口に向かった。

…テンとザイディンが退室し、静寂と化した病室。
残された一人は、徐に立ち上がる。
そして、病院の扉の方へ向かい…
廊下を少し歩いて…
別の病室の扉の前に立つ。
そして、扉の取っ手に手をかけ…
扉を、開く。
その病院のベッドには…
綺麗な金髪、閉じたままの瞼。
さっき人質として捕らえられていた、エルナの姿が横たわっていた。
そして、その姿の前に…
一人の男は、項垂れたまま座った。
「…それが、例の彼女か。」
「…えぇ。」
開いたままの扉の向こうから、別の男が不意に声をかける。
背丈は高く、白い様相に身を包むその男は…
「まさかそんな再会になるとはな…」
「………。」
「…今度はちゃんと、見守ってあげるといい。ファルギア。」
「…えぇ。勿論です。」
人知れず、話し終えたその男は姿を消した。

エピック病院を出てすぐ、俺はスマホを取り出した。
ザイディンと一緒に歩きつつ…俺は『古の廃墟』へ一緒に足を運んでくれた、あのエイトに通話を繋ぎ、彼の持ち前の推理力をまた借りようと思ったのだ。
「もしもし?」
『おぉ、ツェーン!…お前、状況はどうなんだ?』
「実はついさっき、俺達の仲間が一人襲われてな…」
『なっ、また襲われた…!?』
「あぁ、正確には、彼奴の仲間のリドルが狙われ、リドルは意識不明の重体。その彼を守っていたのが俺達の仲間。その彼、ファルギアも一緒に襲われた、って惨状だ…」
『そ、そうか…それはご愁傷様だな…』
「あぁ、そして遂に相手側の首謀者が判明して…」
『何っ…!?』
「それが、あの半年前の惨劇の時の敵の団体の一人の、ルダだ。」
『なっ…ルダだと!?』
「あぁそうだ…それで、俺達が今掴んでいる情報を踏まえて、お前の推理を聞こうと思ってな…」
『なっ…なるほど…いやちょっと、もう既に追いつけないんだが…
「構うか、話すぞ。」
『えっ…』

続く。
「おうザイディン!」
「おう。」
ザイディンが襲われたと聞き、俺は直ぐにザイディンの元に駆けつけた。
丁度、彼は警視庁を訪れ、ハンター警部に事情聴取されていた。
それが終わったのか、2人が対話しているところに、俺は合流したのだ。
「テン、早かったな。」
「あ、あぁ…FCベースの方は、奴等の情報違いで強襲されていただけで…俺が行ったら直ぐに撤退してったよ…」
此処まで走って来たので、少々息を切らしてしまった。
それに対し、ザイディンは依然として落ち着いている。
「そうか…こっちも襲われたとはいえ、相手は3人程だったのもあって、俺の仲間も共闘してくれたし…懲らしめるにはとても容易だったな。」
「あぁ…それだったらいいんだが…標的になってんだし、迂闊にウロウロしない方が…」
「あぁすまん、だが外せない用事だったからな…」
「そ、そうか…」
すると、今度はスマホから通話を繋いだのか、ザイディンは片耳にそれを当てる。
「…どうした、電話か?」
「あぁ、此方の情報を奴にも聞いて欲しいと思ってな…ファルギアに掛けているんだが…」
小さく、コール音が聞こえる。
確かに、ファルギアと合流して分かれてから時間が経っているし、彼奴ともまた合流して、情報を共有したい。
いい加減治療も済んだだろうし…
「…出ねぇな…」
ザイディンはそう吐き捨て、スマホを耳元から離す。
…一体何をしてるんだか、あのナルシストは…
そこに、今度はハンター警部が口を挟む。
「その件なんだが、どうして奴等はザイディンを…」
「さぁ?」
「今迄の被害者と、何か共通点が見つかればいいんだが…」
…確かに。
それが分かれば、何かが繋がりそうな気がするんだが…
今のところは、戦闘した形跡に於いて、『痕同士に距離が空きすぎている』事くらい…
これが何か手がかりになるのだろうか…?
「そうそう。」
「…ん?」
そこに口を開いたのはザイディンだった。
「さっきの戦闘で気になった事が一つ。」
「ほう?…何だ?」
「戦っている最中、俺が放った技に、奴等は強く反応したんだ。」
「強く反応…?」
「あぁ、その技は、兄貴から伝授された技、空間技だ。」
「空間技…」
あの、例の空間と空間を繋ぐという…
ごく一部にのみ伝授され、戦闘法に於いて大きく優位に立てるようになるという、伝説とも称される技だったな。
「あれを使用した瞬間、奴等…目の色を変えやがった。」
「…それはまた何で…?」
「いや、分からん。だがきっと、何か理由があるのかもしれない。
「…そう、か…」
空間技か…
確かに俺にも持ち合わせていたら、戦闘法がかなり幅広くなるだろう。
今日だって、あの『古の廃墟』での戦闘であんなに苦戦する事もなかっただろうに…
…うん?
『古の廃墟』?
「どうした?…テン。」
「あ、あぁ…今日『古の廃墟』に訪れた時、俺とザイディンの2人でそこに向かって…んで、ザイディン、お前が狙われているって判明しただろ…?」
「あぁ、そうだな。…それが?」
「いやぁ、何か引っかかるなと思って…」
「…何がだ?」
「奴等は一直線に『古の廃墟』に来た。…何で予め、奴等は彼処にお前がいるって、分かっていたんだ?」
「…確かに。」
ザイディンが狙われているにしても、一直線にその場に来れるのには、不自然な部分がある。
…それこそ、ずっと俺達を付けてきたとしか…
…俺達を付けてきた…?
「…そういえば、あの時、あの建物に入る時に見ていた奴がいたな…」
「そんな怪しい奴が…?」
その呟きにそう返したのは、ハンター警部だった。
「あぁ。クリーム色の髪に、一部三つ編みをしていたような…もしかして、其奴が俺達をずっと付けてきて、密告したとしたら…
「いや、それは無い。…多分…」
「…は?」
急に否定してきたのは、ザイディンだった。
彼は、此方を見る事もなく、スマホの画面を触っている。
「それは無いって…何でそう言えるんだ?」
「…何でも、だ…そんな気がするだけだ…」
「…はぁ?」
謎の根拠、そして曖昧。
唐突なザイディンの態度に、俺はたじろいでしまった。
彼の視線は相も変わらず、スマホに釘付けだ。
…と、そんなところで。
「お。」
「うん?」
ザイディンが何かに反応する。
「いや、今な、新体制の白軍結成を計画しているんだ。」
「…ほう。」
「その結成の当事者である方と、連絡を取り合っていたんだが…」
そう言うと、ザイディンはメールをガン見する。
「そう、その当事者とは…半年前にあった惨劇で、アラウド達が対峙していた団体の一人。名を、リバース。」
「リバース…」
「…それで、その人が何て?」
ハンター警部は、そう聞いた。
「あぁ…俺達の今関わっている事件に関与するかは、未だ不明だが…もしかしたら手がかりになるかもしれない、ってな。あの団体にいた人物の中で、行方が掴めない奴が一人だけいるみてぇなんだ…」
「行方が掴めない…?」
…あの惨劇…
やはり、今回の事件と何か関係があるのか?そして、ザイディンは続ける。
「あぁ、その人物が…」

「くっ…貴様は一体…!」
「ふんっ」
SOS工場。
リドルと談笑していたその時、大きな音を立てて僕達の目の前に現れたのは、見た事もない人物。

黒い布で目元を隠し、大きな鉄球が繋がった棒を所持。
大きく跳ねる両サイドに、後ろに結わえ長く伸びる長い白髪。
明らかに、只者ではない事が悟られていました。
黙り込み、相手をじっと睨むリドル。
ポケットの中で執拗に震えるスマホにも手が伸ばせない程、僕はこの危機的状況を目の前に、焦りを隠せずにいました。
「一体…何者なのですか!?」
「俺の名は、ルダ。」
「…!?」
「リドルを、殺しに来た。」

続く。
…ここは、ノックスという街。
海沿いに位置するが、近いところに砂漠があるようで、砂混じりの風が吹き荒れる。
他の街との交流も盛んで、それなりに立派に栄えている。
俺が嘗て活動していたナイツロードという団体の、とある仲間がよくいる場所に、俺は足を踏み入れた。
野暮用で、久し振りにその仲間と会う約束をしているのだ。
…テンには、狙われている俺が単独行動を取るのは良くない、と止められているが…俺の今の活動として、欠かせない仕事の一つ…
この今日の予定を蔑ろにする訳にはいかないのだ。
するとそこに、足音が聞こえる。
…その足音は…複数?
「見つけたぞ、ザイディン…」
「…なっ…!」
間違いない。
例の事件の犯人の仲間だ。
こんな場所にまで…!
幸運にも、数は少なく…3人だな。
…見つかったのなら、やるしかない。
武器を、構える。
するとそこに…
銃声が一つ。
「!?」
「ぐあぁぁぁっ!」
敵の一人が血を噴き出し、呻く。
「ここは、ノックス…私のお気に入りの街を、汚さないでいただきたい…」
その声…
茶がかかった綺麗な白髪に、特徴的な糸目。
そしてその手には拳銃。
落ち着いた佇まいと微笑みが、プロフェッショナルな雰囲気を助長する。
「遅くなりました、ザイディン。」
「ゾイロス・イクシオン…!」
丈の長いジャケットを風に靡かせ、頭のてっぺんから髪をぴょんっと飛び出させる。
この彼が、当時の仲間だ。


「…何ですか?…彼等は…」
「実は今、巷で話題になっている事件の一味で…」
「なるほど、そうですか…」
そう言うと、イクシオンは拳銃を腰に仕舞い、両腕を横にしてやや屈み、構える。
「火傷には注意してくださいねっ…!」
すると途端に、イクシオンの衣服の袖から、赤色の帯が飛び出す。
それは熱を発し、まるで鞭のように動き出す。
「うおっ!?」
「うわぁっ!」
焦りながらも避ける敵達。
そこを、今度は俺が追い討ちをかける。
「グラウンドホーミングショット!」
追尾機能を備えた鉤を、地中から連続で飛び出させる。
だが、それを避けつつも武器で何とか阻んでいく。
「…なかなかすばしっこいですね…」
「あぁ…そうだな…」
そう呟き、俺は徐に眼帯を外す。
右眼に赤い炎を灯し、能力を拡張させる。
そして、イクシオンは再び赤い帯を召喚する。
「ふっ」
今度は鞭というより、敵達を囲うように帯を次々に張っていく。
徐々に動きを封じたところに…
「火炎の渦鳥!」
俺は鳥を模した炎を産み、自由な軌道を見せて数羽飛ばす。
その鳥が通過したところから、徐々にエネミーの体力を削っていく。
「ほう、興味深いですね。」
そう言うと、イクシオンも片手を振る。
すると、何と俺と同じ鳥が飛び出す。
「なっ!?」
「炎には別段、特化して器用だと自負していましてね…この程度でしたら…!」
更に手を振っていく。
すると、敵の居場所へ直線距離で鳥が次々に通過する。
「ぐっ…!」
「うぅっ…!」
同時に、相手の視界を奪っていく。
…なるほど、これは面白い。
そのまま、イクシオンが鳥を召喚していくのなら…
「…!…それは…!」
敵の一人が、薄ら目を開けて此方に反応する。
俺は片手を前に伸ばし、空間を一つ産んだのだ。
空間…その見た目はまるで小さなブラックホール。
鳥に気を取られて気付かれにくいうちに、背を向けている方向に、出口となる空間を召喚し…
そのまま、加えて技を召喚する!
「ダークヴァルガハンド!」
闇属性を練って作られた、真っ黒な手だ。
その手は俺の伸ばした手から次々に発射され、空間を通って敵の背後から飛び出し…
次々に貫いた。
「ぐあぁぁぁっ!」
「ぎゃぁぁぁ!」
叫ぶ敵達。
次々に蹲る。
そこに…
空間を通って移動した男の手足が、炎を灯して奴等を襲う。
イクシオンだ。
渾身の手刀や蹴りが、とどめを刺していく…
「ぐはぁっ!」
「がぁっ…!」
「ぐほっ!」
…お互いの戦法を知っているからこそ為せるコンビネーション。
特に苦労する事なく、圧巻した。
そのまま、イクシオンの赤い帯で、敵達を縛る。
「ふぅ…」
「…よかったですね、見た感じ、下っ端じゃないですか?」
「あぁ、そうだな…助かった、ありがとな。」
「お気になさらず。」
衣服に付着した砂埃を叩く、イクシオン。
同時に、俺も武器を仕舞って体勢を戻す。
「それにしても…久し振りですね、ザイディン。先程は事件に巻き込まれているとの一言がありましたが…」
「あぁ、理由はまだ分からねぇが…どうやら狙われているみてぇだ。全く…厄介な事になったぜ。」
「ほう、それまたどうして。あ、そうでした、例の彼は…調子はどうです?」
「あー、いや、特に問題はなく…新しい軍を結成する上で、彼奴の能力もかなり加担してくれるだろう。あの怪力は、侮れねぇぜ…」
「それは何より。嘗て丁度この辺りで彼と知り合ったのですが、あの当時から、あの怪力には圧巻されましてね…何かと貴方とも縁があるみたいですし、彼の面倒は、頼みましたよ。」
「あぁ勿論。任せておけ。」
そう、今現在結成を計画している新しい白軍。
その中の一人に、このイクシオンと深い関わりのある奴がいる。
持ち前の怪力で巧みにハンマーを扱う奴で、その名も取ってつけたように、ハンマーという。
その彼と対話し、『ゾイロス』の名が出た時にもしやと思ったが…
共に旅をした事のある仲間だったようだ。
世間は狭い。
「さて、行きますか。」
「…あぁ。」
こうして俺とイクシオンは、共に近くの喫茶店へと足を運んだ。

「いやぁー、酷い目に遭った。」
「全く。災難続きなところは昔から変わらないんだからー…」
「いやぁ…それほどでもぉ!?」
「褒めてないって…」
治療を終え、充分な休息を挟んだ後、僕は僕達の拠点である場所に腰を据えていました。
此処は、SOS製紙工場。
もう完全に廃れたこの場所は、工場としての役目は無く…我々が隠れ家のように拠点にするのに優れた場所です。
そこで一息つき、僕ファルギアは、仲間であるリドルと笑談を交わしていました。
まだその時は、これから起こる絶望と後悔に苛まれる事など、想像に難かったのでした…

続く。

Special Thanks
登場キャラ[ゾイロス]:Xiba
FCベース、それはその昔、俺がホワイトファントムというところに所属していた時にゆかりのあった場所だ。
だが、その当時にFCベースは荒らされ、別の軍の拠点として奪われ、俺達はこれまたスアッガベースという別の場所を拠点としていたのだが…
それももう、何年も前の話…
一体、何故今更になってあんな場所で戦闘が行われているのか…
散々走り、やっとFCベースに着きそうだ。
すると…やはり、大きな戦闘音が轟いているように聞こえる。
本当に大きい。
かなり大勢の人間がいると考えられる。
ゆっくりと、FCベースに入る。
すると…見知らぬ人間が多数、一点集中で戦っているようだ。
気付かれないように、静かに歩く。
だが…
「おい!此処にももう一人いるぞ!」
「何!?」
「あれって、あの人から報告にあった、ツェーンか!?」
やっべ。気付かれた。
しかも、俺の名前を知っている、だと…?
やはり、あの連続殺人事件の犯人の…
武器を構える。しかし…
「いや、あんなのに構ってる暇はねぇ!…こっちのがヤバすぎる!
「くっ…そうだな…ぐわあぁぁぁっ!?」
此方に気付いて喋っていた一人が、大砲に撃たれて吹き飛ぶ。
あんなの…だと?
いや、実際こんな大人数を一度に相手にしているなんて…
一体どんな奴が…
大砲の攻撃の元へと歩いていく。
…すると、ズラッと巨大な大砲が幾つも並んでいるのが視認できた。
大砲は次々に弾を発射し、襲ってくる奴等を次々に退けていく。
そして、その大砲の陰に…
一人の男が、ビーチチェアのような椅子に寝そべっているのが見えた。
その横には、巨大なスパナの形の武器が立て掛けられている。
こんな大乱闘をしているというのに、途轍もなく暇そうだ。

「ん…?お前は…テンじゃねェか、久し振りだなァ…」
その男は、近付く俺を認識すると直ぐに、そう言った。
白髪にゴーグル…
…あれは…
「メルク!?」
「俺の事は様付けで呼べハゲェ!」
「!?」
急に立ち上がるメルク。
「メルクマグナムゥ!」
ドリルのように回転しながら、俺の方向へ飛ぶメルク。
しかしそれは俺の居場所を大きく外し、そのまま横の壁にぶち当たる。
「話を聞いてくれ。」
「ふははは!このメルクマグナムを交わすとは…!」
いや相変わらずお前のエイムがクソなんだよ。
…そのまま、疑問をぶつける。
「何でお前が此処にいるんだ!?…っていうか、このやかましい奴等は何なんだよ!?」
「俺達の仲間のレグを探しに来てみたら、何か襲ってきてなァ…」
「お前もよく分かってねぇのか…ってかまたストーカーな日々過ごしてんのかよ」
「まーそのうち帰ってくるだろ」
「心配しろよ」
まさかこんな所で昔の知り合いに遭遇するとは…
なんという再会だ。
「だが、此奴等が此処に来た意図…それが分からないと…」
「あー、自由にやってくれ」
「えぇぇ…」
全て投げられ、俺は仕方なく武器を構え直す。
そして、大砲の上に飛び乗り…
「いくぜっ!」
只管大量の短剣を投げる。
「ソードガトリング!」
ガトリング砲のように、100本程度の短剣を飛散させる。
その中の10本に焦点を当て、コントロール能力で自由に操る。
すると…
「うっわぁぁぁ!?」
「なんだなんだ!?」
悲鳴、狼狽える叫び声…
追い討ちをかけ、かなり善戦しているようだ。
奴等の攻撃も弱まっている。
「ちくしょー!こんな事になるなんて!」
「いや、ツェーンなんてどうでもいい!」
「あぁ、核だ!核さえ見つかれば…」
…どうでもいい?
この俺をどうでもいい、だと?
いや、核…?
最優先の目的はそっちか…
…まったく…
「核だぁ!?」
攻撃が少し落ち着き、声が通りやすくなったところで、俺は叫んで答える。
「あぁ!核だ!…此処に大量の核があるという噂を聞いたんだ!」
…ったくいつの話だよ…
「核なんて話、とうの昔に流したガセだ!…此処にはねぇよ!バーカ!」
「はぁぁぁ!?」
核があるなんて話は、それこそ俺がホワイトファントムで活動していた時期…
今更何を聞いてきたんだ…
「く、くそっ…撤退だ撤退!」
「逃げろー!」
「おととい来やがれバーカ!!!」
この地を後にする奴等に、俺は怒鳴る。
なんだってこんな場所に呼ばれなきゃいけないんだ…
「テン、何かあったん?」
「ん?…あぁ、今話題の連続殺人事件について探っていてな…どうやらそれで余計に狙われてしまっているようだ。さっきの奴等も、その犯人である首謀者の部下達だ…」
「なーるほど…」
メルクは、相変わらず寝そべりながら、俺の言葉にそう答えた。
そして、空を見上げ、一言呟く。
「大変な事になりそうだなァ…」

続く。

Special Thanks
登場キャラ[メルク]:亜九静
「此奴等…何者だ…」
容姿は様々。
武器も剣やら鎌やら銃やら…
色んなタイプがいる。
「…アラウドもいてくれたら心強かったが…仕方ない。最早此奴等が何だっていい、こうなってしまったからには、やるぞ…!」
「あぁ…!」
エイトとそう言葉を交わし、一斉に動き始める…!
俺は新規に使い始めたファインダーで、ライフルに装備されているスコープのように、標準を定め、短剣を投げる事ができる。
コントロール可能な短剣と連携させる事で、更に幅広い攻撃が可能になった。
装備に少々時間がかかるので、そこは難点であるが…
ザイディンは、鎌を自由自在に操り、浮遊する鉄の立方体を召喚する事もできる。
更には足から炎を噴射する事で空中をも飛べる。
加えて、兄のアクトから授かった、空間技も自分のものにしつつある。
かなりバリエーション豊富な戦闘が可能だ。
エイトは、両手に炎を灯して炎攻撃、加えて体術でも戦う。
炎から弾を錬成して発射させたり、炎を纏って盾にだってできる。
…他のメンバーに関しては、俺は初見だが…
メタリルは、二種類の蛇を扱って戦う。
炎を吐く蛇と水を吐く蛇だ。
レルは、杖に付属する銃と剣の両刀使い。
さっきの行動を見るに、目を閉じていても尋常じゃない聴力で視覚をサポートできるのだろう。
リモートは、多機能を持つリモコンを向けてボタンで攻撃。
リメアは、剣に加えて蜘蛛の巣のような網で戦闘のサポート。
リクエラは、巨大な手を扱いつつも、体術での戦闘も可能なようだ。
8人の戦士がいて、多種多様。
誰一人として、攻撃手段が在り来りなものだけではない。
向こうとしてはやりにくいったらありゃしないだろう。
攻撃が近づいてきては反撃して、の繰り返し。
向こうも向こうとて、決して戦闘力が低い訳でなく、ただ無鉄砲に数で圧して来た訳では無さそうだ。
しっかり一人一人が強く、それであって俺達へと果敢に挑んでくる。
一進一退のように見えるが…
此処で、俺が一人を斬る。
「!!!」
「っし!」
ガッツポーズを取る。
一方で、ザイディンも一人を斬ったようだ。
「ぐぁっ…!」
大きく血を噴き出し、退いて患部を押さえる。
「ぐっ…」
「ふっ、どうやら、俺達の方が優勢のようだな…」
そう豪語して見せる。
すると…
「…ザイディンさえ仕留めれば…」
「…何っ。」
何やら呟いたのが聞こえた。
「ザイディン…だと?」
こんな時だからか、エイトもしっかりと聞き取れたようで、その言葉に反応する。
すると、それに対して、敵の一人が言う。
「そうさ、俺達は、そこのザイディンだけが目的…ザイディンさえ仕留めれば、此方の勝ちだ!」
「なっ…!?」
驚愕を顕にするザイディン。
その間も、互いの攻防は止まない。
そこに、今度はレルが聞く。
「貴様等は…あの連続殺人事件に関係があるのか!?」
「ご名答…俺達は、ザイディンを倒す命を受け、この場にやってきた。」
「何だと…!?」
命を受けた、って事は…
此奴等の裏側に、この事件や戦闘を企てる首謀者がいるのか…!?
…だがどのみち、この場では…
「ザイディンを守らねば!」
「…あぁ…!」
「了解だよ。」
「そうなるよな。」
俺の掛け声に、エイトとメタリル、そしてレルも返事をする。
リモートやリメア、リクエラも頷く。
ザイディンの周囲を重点的に、奴等からの攻撃を阻んでいく。
目的を顕にしたからか、向こうの攻撃の焦点が明らかだ。
ザイディンのスタミナだけが、みるみると削られる。
此方からも一人、また一人…と、攻撃をヒットさせて徐々に戦力を削る。
しかし…
「がっ…!」
「リモート!」
「ぐはぁっ!」
「リクエラも…!」
此方の人員も、戦力を削られる。
辛うじて、此方が優勢ではあるが…
ザイディンを庇うのに必死だ。
「ぐっ…何故、何故ザイディンを…!」
「…くっ…それはあの人の許可無しには…」
「…ちっ」
「イリフ!」
メタリルの赤い蛇が血を噴き、彼はその名を叫んだ。
互いに戦力を削られつつも、攻防は止まらない。
「ぐっ…!」
「エイト!」
与えられた傷が深かったのか、エイトも患部を押さえる。
「これくらい…!」
患部を押さえた手から、炎を出すエイト。
焼灼止血だ。
「がっ…!」
「リメアまで…!」
このままでは危ない。
…何としても奴等を退けねば…!
隙を見せ、"敢えて"掠り傷を負う。
「ぐっ…!」
「…!…この感じ…!」
流血のような赤いラインと、風変わりの瞳、赤く変化した武器を見せる。
「テン…それは…!」
「Λ覚醒か!」
ザイディンとエイトが此方を見て叫んだ。
「Red confliction swords !!!」
レーザー光線のように、無数の赤い短剣が縦横無尽に飛ぶ。

「ぐはっ!」
「ぐあぁっ…!」
「はぁ…はぁ…よしっ…!」
効果絶大だ。
だが、苦し紛れに放ったこの技。
力の消耗も激しいし、正直これ以上はしんどい。
だが…向こうも此処から更に追い討ちをかけられるほどの戦力は残っていないだろう。
「…ちっ…ここまでとは…撤退だ!」
その言葉と共に、敵の戦士達は足早に去っていく。
…万事…休す、か。
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫か皆!?」
「あぁ…このくらいなら…」
「くっ…なんとか…」
「…それにしても、一体何故ザイディンを…」
「………。」
あれっ…
「どうした、テン。」
「いや…また、さっきの…」
さっきと同じ奴がこっちを見ていたような…
だが、既にその姿は見えない。
「…また誰かがこっちを見ていたと?」
「あぁ…」
ザイディンの問いに、答える。
「クリーム色っぽい髪…一部パーマがかかっていて、編み込んでいたような…」
「…は?」
…すると、今度は間髪入れずにスマホが震える。
「…うん?…エレク?」
…見ると、相手は幼い頃から居候してきた幼馴染、エレクだった。
「…もしもし、どうした?…いきなり…」
『あぁ、テンか!?…今さっきたまたまある場所の近くを通ったんだけど…何やら物凄い戦闘音が聞こえてな…お前なら何か知ってるかと思って…』
「戦闘音…?…何処だ、それ…」
『FCベースだ、ほら、お前昔関わった事あるだろ?』
「は…?」

FCベース…?
何で今更…

続く。

廃墟の中を、只管歩く。

「今日、アラウドは来なかったんだね。」

「あぁ、忙しいみたいでな。都合がつかなかったんだ。」

「そっか…ボクも久し振りに会ってみたかったんだけどな…」

メタリルとエイトが話す。

「それで、例の連続殺人事件とあの惨劇、何か関係があるのか?」

レルが問う。

それに、またエイトが答えて言う。

「いや、分からない…ただ、時期がほぼ合致しているのがただ気になってな…何か手がかりでも無いかなと。」

「そうか、なるほどな。…正直、あの当時の人間はそれほど集められなくてな…ライアートは首謀者だから勿論、幹部だったレイやリバースも何やら手続きとかで忙しいとか何とか…」

「そうか…手続きって…何だ?」

「さぁ…軍を作るとか言ってたような…」

「軍を…作る?」

…知らない面々だな…

俺には全く話が分からない。

「お、そろそろ着きそうだ。」

「おっ、漸くか…」

話している間に、目的の部屋が近づいていたみたいだ。

明るい暖色の光が見える。

「待たせたね。連れてきたよ。」

メタリルが言った。

すると、そこにいた黒髪の男3人が、此方を見る。

焚き火を囲んで椅子に座っている。

「おっ、やっと来たな。」

「どうも。」

「エイトじゃーねぇか。ひーっさしぶりだな。」

一斉に声を発した。

「おう、久し振り!…あ、紹介するぜ。こっちのアホ毛が目立つのがリモート、んで左右の髪が長いのがリメア、そしてスカーフをしてるのが、リクエラだ。」

「ほう…」

「ささ、座って座って!」

メタリルが椅子へ案内する。

 

「うぅ…さっむぅ…」
凍えるメタリル。
「いやぁこんな廃墟で真冬なのに暖房も無いからなぁ…仕方ない。
「んむ…へっくしゅん!」
比較的クールで落ち着いていそうなリメアも、寒さには抗えず嚔をする。
幾ら平然とした佇まいでも、身体は正直だ。
「そーれにしても、エイト達は平気そうだな。」
「まぁな。」
リクエラの問いにエイトが答えると、彼は左手を前に向けて人差し指を立てる。
すると、その指先から小さい炎が出た。
エイトはそれを見せてキリッと口角を上げる。
「あっ…此奴…炎使えるんだった…」
「それを言うならお前、メタリルも蛇が吐く炎があるじゃねぇか。
レルが思い出したように言う。
「いやぁ…この時期だとね、彼等は温かい場所で管理しておかないと弱っちゃって…今はケージの中に篭ってもらってるんだよ。まぁ出そうと思えばすぐ出せるけど…」
「…なかなか世話が焼けるな…」
蛇を戦闘に使っているのか…
なかなか躾が大変そうだ…
まぁ、俺もそれほど寒さに強い訳ではなく、焚き火もなく長時間もこんな場所にいたら凍え死んでしまいそうだ
横にいるザイディンは寒いのには抵抗が無いらしく、平気そうだが…
「それじゃぁ、当時の団体の構成員であった皆について、聞いてみようか。」
エイトが言った。
そこに、レルが答える。
「あぁ、先ずは首謀者だったライアート。言うまでもなく、奴は授かった能力を使って人を操り、アラウドを仲間にする計画に失敗。そのまま刑務所入りだ。」
「…あれは本当に辛い惨劇だった…」
エイトがそう続ける。
そこに、俺は問う。
「授かった能力って何だ?」
「『まずかった暴力』?」
「…は?」
あぁ、そうだ。
エイト…此奴、聞き間違いが酷いんだった。
「授かった能力、だ!」
「あ、あぁ…どうやら、この世界を手にしようとする者に手を貸していたようだ。奴は、上の人間から能力を授かり、能力を使ってその陰謀の一員としてアラウドを引き入れようとしていたらしい。能力の内容は、主に人を操り、強制的に仲間を増やす。それと同時に、操った対象の人間にドーピング効果も付加する。その時、外面の変化として、眼が赤くなる。自身の覚醒というおまけもつくが、人を操ると同時に使う事はできないようだ。また、それを使うと前述と同様、眼が赤く変化する。更には、一度操られた人間には後遺症が一生付き纏い…赤眼になると同時にドーピング効果を得られるという能力が残るが、乱暴に使うとオーバーヒートするといった弊害もある。かなり厄介だ。」
「そ、そんな面倒な能力が…」
「あぁ、そのオーバーヒートによって、当時の仲間だったハクアは命を落とした。」
「ハクア…」
メタリルが、呟いた。
「その、ハクアを追い詰めたのが、同じく当時お前達の仲間だった、アクト、だったな…アクトに抗うため、能力を使って激しく戦った末に、ハクアは、ボンッ…彼はアクトによって殺されたと言っても過言ではない。」
「おい、リモート…」
「…うん?」
言葉を選ばないリモートに、俺は苦言を呈して言う。
「ザイディン、彼奴、アクトの実弟だから…」
「えっ、あっ…」
「えっそうなの!?」
横から聞いていたエイトが驚いて大きく叫んだ。
…此奴め…。
「…ま、まぁ、そんなハクアも元々は敵の団体の一人で…途中で正気を取り戻して脱退したそうだ…そんな彼の代わりに、リバースが加入したと聞く。」
「その通りだエイト。新規加入した奴と言えば、リバースともう一人。当時の団体の一人、エクトリアが亡くなった直後に加入したという、新入りも新入り、ルダがいたな。」
リメアがそう返した。
「あぁ、そーうだ。彼の実力も分からずのまま、取ーり敢えず俺達と同じ下っ端に加入になったが…加入直後にあの惨劇があり、結局のところ彼の実力は分からないまま…」
「そうだったな、リクエラ。だが、彼の実力が掴めるかもしれない情報が一つあるんだ。知ってるか?
レルがそう言った。
「…一体、なーんだ?」
「ルダ、彼はあのハクアの弟子だったらしいぜ。」
「なっ…!?」
リクエラをはじめとして、リモートやリメアも驚く。
それはエイトもだ。
エイトはそのままレルに言う。
「あのハクアの…!?…奴はレイやリバースにも匹敵する程の戦闘力の持ち主…という事はきっと、ルダにもそれ相応の力が…」
「あぁ、可能性は充分にある。」
よく分からないがかなり衝撃の事実のようだ。
「…あと、今此処にいない構成員といえばあと一人…」
メタリルの呟きに、エイトが返す。
「あー。ズィーベンか。奴は今、レストランでバイト中だ。」
ズィーベン…相変わらずだな。
奴は変装がとても得意で、一人なりすます事ができる。
その上、相手の武器をコピーして使用できるという、えげつない能力も持っている。
あとは語尾に「ぜ」がつくのが特徴だ。
奴はバイト先のレストランが好きなのか、常日頃そこで働いては食事もしているようだ。
…まぁ過労バカに関しては、俺の部活友達であるラギンの方が極めて頭おかしいがな…
するとそこに。
「!?」
「なんだなんだ!?」
爆発音。
俺達が入ってきた方から、轟いている。
遠くから、ドタドタと忙しない足音も聞こえるような…
すると、徐にメタリルはケージを開けて叫ぶ。
「リトー!」
そこにいた2匹の蛇のうち、青い方が呼ばれて水を吐く。
囲んでいた焚き火が煙を上げて消えた。
今度は、レルが呟く。
「…そろそろ足音が近い、約100mといったところか…数は…10人ほどか…」
何だ此奴、聴力がめちゃめちゃ良いのか…?
「構えろ、皆!」
エイトが叫んだ。
そして…
レルが叫ぶ。
「来る!」
リモートが武器のリモコンを向ける。
部屋の入口が爆破される。
爆風が視界を奪う。
「くっ…」
「一体、何だ…!?」
ザイディンの首元に刃物が近づく。
「ちっ」
舌打ちをしたザイディンは、武器の鎌を振りつつ、続けて鉄の立方体を召喚して攻撃を阻む。
屈んで、足を横に滑らせ回避する。
そんな俺達を囲うよう、10人ほどの戦士が立つ。
「何だ、此奴等…」
俺は片眼にファインダーを装着し、剣を構える。
他も全員、戦闘態勢だ。
「分からない…だが、やるしかないようだな…!」
エイトが両手に炎を灯し、叫んだ。
「とにかく此処は…」
「ボク達が手伝ってあげる。」
レルとメタリルが構えて言った。
「ふっ…」
笑い、俺は剣を強く握る。

 

続く。

「ふっ、まさかこんなところで会えるとはな…ツェーン。」
「あぁ。相変わらず元気そうだな。エイト。こっちが、俺の長い付き合いの仲間、ザイディンだ。」
「初めまして、宜しく。」
「あぁ、宜しく、俺がエイトだ!」
こうして、俺とザイディンは、エイトと合流した。
「もう1人来るはずだった奴は、色々あってな…怪我の治療にあたっている。」
「そ、そうだったのか…」
ファルギアは思っていたよりも怪我が酷く、俺達との同行をする前に、怪我を治す事にした。
…まさかバイクに引き摺られて来るとはな…
「そっちこそ、アラウドは連れて来なかったのか?」
「あぁ、何やら忙しいみたいでな…報道されまくってたのもあって、何かと標的になりやすいから来ない方が良いだろう、って本人が言ってたしな…」
「そうか…」
成長したアラウド、もう一度会ってみたかったものだったが…
「半年前の事件の時に知り合ったミントも、予定があって来られなかったと…」
「あー、あの賢そうな女子か…いたら力になれそうだったが、まぁ仕方ないな。」
「まぁあんなのいなくても…俺がいれば大丈夫だし…」
「お、おう」
自信満々だな…
「なぁ、エイト。聞いておきたいんだが…」
「ん?何だ?」
唐突に、ザイディンがエイトに話しかける。
「お前もしかして、ギルト先生の息子さん…か?」
「えっ、親父を知っているのか!?」
「ふっ、やはりな…」
ザイディンは、目を閉じて微笑む。
えっ、何?…そこ、そんな繋がりがあるん?
「俺の中学時代、とてもお世話になった先生だ。まさかこんなところで会えるとはな…これも何かの縁だ。これからも宜しく頼むぜ。」
「そうだったのか…親父に宜しく言っておくぜ。」
「あぁ…」
…凄い縁だな…
世間は狭いな…。

「それで、エイト。話はつけてあるのか?…あの場所で、合流だろ?」
「あぁ勿論。あの時の向こうの団体の事情をよく知っている奴等だ。さて、『古の廃墟』へ向かうぞ…!」
「ふっ、あぁ…。」
半年前の惨劇の時に決戦の場所として使われた、あの場所だ。
俺は戦闘が終わった後に訪れただけだったが…
その場所で、当時の敵だった奴等と待ち合わせしているみたいだ。
俺達は、エイトに導かれるがままに、歩を進める。
 
「久し振りだな…!」
「ふっ…あぁ…」
エイトの声に答えたのは、目を閉じて杖をついた男。
そして、モノクルをかけた男も出迎える。
「レル、それにメタリル…!」
エイトが、2人の名を呼ぶ。
すると、メタリルと呼ばれた、モノクルをかけた男が口を開く。
「よく来たね、さぁ、中に入ってくれ。」
「あぁ…!」
…建物の中を眺めると、まるで迷宮のように入り組んでいるように見える。
そういえばそんな場所だったっけな…
開けた場所までは、かなり歩いた記憶がある…
「…うん?」
「どうした?テン。」
ザイディンが問う。
「…今、向こうの物陰から誰かが此方を眺めていたような…」
「えっ…一体誰が…」
「さぁ…一瞬でよく見えなかった…」
「………。」
確かに誰かが此方を…
クリーム色っぽい髪に、眼の辺りは隠れて見えなかったような…
…まぁ、いいや。
「入るぞ、ツェーン。」
「…あぁ。」

 
続く。

2025年になりました。

逍遥メモリー更新進捗ダメでした、すみません…

創作は計画的にやろう。

今年も宜しくお願いします。


















続く。←