恋の痛みや悲しみの歌を聴くと、

恋をしていた頃の、苦しかったその頃の気持ちや空気の感じを懐かしく思い出すことがある。


例えば、別れを告げられた翌朝も仕事には行かなくちゃいけなくて、身支度をしながら見た、表情のなくなった自分の顔。

表情がないくらいなのに通勤の電車でも涙が出て想いが募って、電車を降りて、うんと苦いものを飲みたくてコーヒーを買って職場に入るときの、朝イチなのに疲れた気持ち。

(これもリモートワークになる前だからの記憶だね。リモートだったら、翌朝もうんと泣いて仕事ほとんどしてないと思うから。)


例えば、自分を大切にしてくれないのに好きでしょうがない人の家から朝帰りするときの、通勤が始まる直前の街の感じ。

夜明けがすぎて白い日差し、早い通勤の人がいたり、スーパーに納品のトラック、昨夜と早朝に出された回収前のゴミにかけられた青いネット、

みんなは新しい朝を始めているのに、私だけ昨日と同じ服、その惨めさと、好きな人と過ごせた嬉しさと。


例えば、別れようって言うためにかけた最後のLINE電話。久しぶりの電話だったのにそれが別れ話でごめんねの気持ち。でもわたし東京楽しくなっちゃった。

それから、ほんとのことは言えなかったけど、好きな人もできたんだ。

ほんとうにごめん、好きだったよ、どうか元気でね、の気持ち。


いくつかの、恋と、その終わりの記憶。

もう遠い遠い昔のことのよう。


そして同時に、結婚してよかったな、

しかもこんなに大切に思い合える人間性の相手と結婚できてありがたいなと思う。



結婚して嬉しいこと、よかったことはたくさんあるが、なかでも意外と世間で言われないことの一つとして


もう恋をしなくて良いこと

恋愛の別れをしなくてよいこと


があると思う。


もちろん離婚はゼロではないし、

すれ違いや喧嘩、超えられない溝はある。


でも、もう、

恋をして、フラれる時の、

引きちぎられるような想い、

こちらから別れを告げるときの、相手を悲しませることのきつさ、

1人に絞ってもらえないときの嫉妬、

そういうヒリヒリする感情

みたいなものは、もうしなくて良い。


あれはかなりきつかった。