人形 | sphere

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自作歌詞・詩置き場。
’13ブログリより移転しました。

君を愛して

君を壊した。


それはそれはいとも簡単に

ばらばらに

砕けるのだ。


右手に握った銀色が

ゆっくりと君を照らす。

君は笑っていた。

さよならの時間は

あまりに呆気なく

君と世界を切り離した。



永遠が手に入ったなら

どれほど幸せなのだろう。

ずっとそう思っていた。

未来も過去もない

生温い空気の中

君がただ一人を視ていたなら

どれほど、幸せだったのだろう。


他の誰かの指先が

君の肌を滑る度

赤黒く爛れた炎が

視界一面を灼いた。


幾多の目に晒される

それが君の役目。

だけど

誰にも見せたくなかった。



綺麗なシーツを敷いて

君の身体を横たえて

真っ白なベール

真っ白なドレス

紅い薔薇で飾った。

綺麗だねって言ったら

君は幸せそうに笑った。



凍り付いたままの笑顔が

たまらなく愛しくて

たまらなく憎かった。


首筋にキスをしても

指先を切り落としても

君は言葉を紡がない。


断ち切った先の空洞も

流れない涙も血も

本当は知っていたんだ。


何度君を愛しても

何人の君を壊しても

君の愛は見えなかった。


ばらばらに飛び散った破片を

掻き集めても

掻き集めても

君はどこにもいなかった。




ねぇ

応えて

呼んで


笑って。

















20110311
タイトルは日本語にして、最後の方だけ少し改変。
薄暗い部屋に、無数のマネキン(の残骸)が転がっている光景を想像しながら読んでください。(笑)

本当に人形を愛しているのかな、とか
その人形は誰かの身代わりなのかな、とか

未だに色々分からない。