夜明けの薄明かりが車内を照らし、私たちはまるで、巣立ったばかりの小鳥のように、慌ただしい朝を背負って旅立とうとしていた。エンジンの脈動が、高揚感を掻き立て、後部座席では、まだ眠気と興奮が入り混じった二つの小さな顔が、窓の外をじっと見つめていた。この密閉された空間は、まるで、正月の玄関に飾られたかど松のように、緊張感と期待で張り詰めていた。
「高速道路を使えば時間は短縮できるけれど、お金がかかるからねぇ」と、妻が苦笑いを浮かべる。
「そうだな。でも、少しでも安く済ませたいところだ」と、私はハンドルを握りしめながら応えた。
長男が、子供らしい好奇心いっぱいの目で質問を投げかける。「高速道路って、どうやって安く使えるの?」
「ETCっていうのがあってね。それを使うと、休日には割引が受けられるんだ。それに、おじいちゃんが教えてくれたんだけど、ETCマイレージサービスに登録すると、ポイントが貯まってさらにお得になるらしいぞ」
妻が微笑みながら、「おじいちゃんは、そういうのが詳しいからねぇ。でも、そのマイレージサービスって、どうやって登録するのかしら?」と、首を傾げる。
「確か、ネットで簡単に登録できたと思うけど、今度詳しく調べてみるよ」
後部座席の次男は、まだ言葉の意味を理解できないのか、ただ窓の外の景色を眺めている。一方、長男は、すっかり興味津々で、「じゃあ、いっぱい使ったら、タダになることもあるの?」と、キラキラした目で問いかけてくる。
「うーん、全部タダになるわけじゃないけど、たくさん使えば使うほどお得になるんだ。だから、賢く使うことが大切なんだよ」と、私は穏やかに答えた。
エンジン音が次第に大きくなり、車は滑らかに動き出した。朝日が道路を照らし、私たちの行く手を明るく照らしている。まだ見ぬ目的地への期待と、わずかな不安が入り混じり、私の心は高鳴っていた。
しばらくして、次男が小さな手でヒナゲシの花を摘み、「これ、食べられる?」と、無邪気な笑顔で尋ねてきた。
「うん、食べられるヒナゲシもあるんだよ。でも、これは観賞用だから、食べないようにしようね」と、私は優しく諭す。
ヒナゲシは、その華やかな姿とは裏腹に、どこか儚げな印象を与える花だ。まるで、この旅の始まりと終わりを象徴しているかのようだった。