せっかくなので、英文がどこまで読めるのかやってみてほしい。
以下の英文は古い英語雑誌(高1から社会人まで対象となっているが、プロ入門レベルと思う)に掲載されていたちょっと長めの文とその訳である。
My father who did well at primary school and was always at the top of his class wanted to go on to middle school, but his parents did not let him.
(父は、小学校の成績がよく、いつも首席で、上の学校に進みたいと思っていたのだが、両親が許してくれなかった。)
英文を読んですぐに違和感を覚えた人はそこそこの実力を持っていると言っていいと思う。
実はこの英文と訳は逆なのである。なだ いなだ著の『親子って何だろう』という本の中の一文を日本語が達者なイギリス人でれっきとした院卒の翻訳家が英文に訳したものだ。つまり日本語が本家になっている。
さて、問題の部分はわかっただろうか?
もし、whoのところですぐにあれっ?と思った人は常日頃から英文に親しんでいる人だろう。そこまででなくてもwantedで、んっ?と思った人もそれなりによく読める人だろう。ここまでヒントがあればかなりわかる人が増えると思う。答えはこの2つの単語の前にカンマが抜けている。えぇっ!そんな細かいことまでわからないって?
高校で関係代名詞の用法をちゃんと学んだ人はご存じの継続用法と限定用法の違いだ。上の文は限定用法を使っていて間違いなのだ。なぜか?普通、常識的には父親は1人しかいないからだ。もちろん、育ての親が別に何人もいる人もいるだろうが、ここではそれはない。
My father, who ...class, wanted...
というのは自分の父が1人だけで、その父親に関する情報として2つのカンマの間の関係節が説明として挿入されたものだ。元の英文は父親が1人のはずなのに、関係節がまるで何人かいてそのうちの1人について限定しているという、意味的に捻じれた英文なわけである(文法上の問題はない)。
whoのところで違和感を覚えても、本当に父親が何人かいるという情報がどこかにあれば、元の英文は間違いではなくなる。しかし、いきなりMy father との出だしをしている以上、通常1人と思うのが当然で(複数の中の1人と示すならOne of my fathersかA father of mineになる。したがって、情報なしにmy friend とやると寂しい人生を送っていることになる)、内容的にも1人しかいないと思えるので継続用法にしないとおかしいわけである。日本語なら外人だと明確にわかるような「てにをは」の間違いといったところか。
この英文はカンマ無しで雑誌の解説の途中で一度出てきていて、最後の全訳文ではカンマがちゃんとついていた。おそらく、原稿を書いた人のミステイクか印刷所の見落としではないかと思う。
解説のところで間違いに気が付き、慌てて最後のところを確認したところ、正しかったので、ああ、何かの手違いだなとわかってほっとしたわけである。もし、この英文を読み切って何の疑問も持たずにいた人は、英語の理解ひいては実力としてまだまだ先が長いということになる。
今回は父親の人数は1人というかなり強固な条件があるからまだ気が付きやすいが、微妙な前後関係を活用した英文を理解するのはやはり骨が折れる。それに向かっていくもよし、こんなのやってられない、いちぬ~けたもよしである。
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文法に厳しい人は示した英文は文法的に重複文と指摘するだろう。タイトルの語呂の関係で1文の意味で単文とした。