特許の英語 | An Ulterior Weblog

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自分が出した日本での特許を海外でも出すことになったのが昨年の初め(出す出さないの決定権は私に無い。国内含め特許にすべきではないと意見したのだが)。出したのはいいが、拒絶理由が何度も飛び込んで来る。


出した先は欧州、北米、中南米、アジア、ロシアである。困り者がアメリカの審査官。本職の範囲ではないのか移ってきたばかりか新人か、とんでもなく技術把握が低く、つまらない難癖ばかり。そのために、教科書的な解説を作る羽目になっている。

現地の代理人も文系のネイティブだから、当然、技術的なことを知らない。説明文を日本語で書いて東京の特許事務所に英文におこしてもらって代理人に伝えてもらうことも可能だが、結局のところ、はっきりしない部分が出てくる。知っているのは自分であり、英文を書くこと自体は簡単ではないが、ほかにわかってる人がいない以上はやるしかない。


日本語の特許の明細書を読んだことのある人も一般には少ないだろう。同じ言語かというほど堅苦しく不自然だが、実は英語でも同じである。一般に英語の方がわかりやすくなることが多いのだが、こと特許に関しては当てはまらない(おそらく特許の独特の書き方は欧米特許の翻訳から来たものだろうから、当たり前なのだが)。1文が5行に渡るのはどうということはなく、長いと10行を超える。しかも、関係節、挿入修飾、分詞構文などなど複雑で堅苦しい文ばかり。単語も熟語もコチコチに硬い。日常的なものはこれっぽっちもない。英文の向こう側に人柄なんか全く感じられない。まともな著者ならどんな科学論文でもこんなことはない。コンピュータかロボットみたいだ。

こういう硬い文章なのに、見かけないものもある。強調構文とか、It を主語とした文、省略や倒置も無い様である。


As to で始まる英文は記憶にない(文中ならある。As for もある)。ameliorate という単語も初めてお目にかかった。普通は硬い文面だと improve とか refine だが、逆にそれを関連特許分では見かけなかった。ちなみに手近のいくつかの和英辞典で、改善とか改良とかを調べても ameliorate は記載されていなかった(和英大辞典でやっと)。POD5版にも記載されているからそれほどの難語ではないのかと思ったが、やはりちょっと特殊なようだ。vicinity なんてのも記憶にない。nearness や proximity ならある。一応、基本語の範囲らしいが、TIhe Economist あたりでお目にかかったかどうか。。。

the above-described ○○○というのも初めて見た。大辞典にもない。above-mentioned は何度かある。普通は○○○ described (or mentioned) above とする。これを発展させればすぐにできるが、あまりにも頭でっかちで重苦しい。大辞典にもないのだから少なくとも一般的ではない。大体、the があればこんな言葉を使わなくて済むようにするのが最も一般的だし、読者への親切というものだろう。すっきりとわかりやすく書くという対極にあって、とにかく付け入る隙を与えないという感じ。


こういうのはTOEIC対策でどうこうできるレベルではない。重い文章でも平気で読めるような訓練をした人なら最初は梃子摺っても、そのうちすぐ慣れると思うが。

国際弁理士としてでも働く気でもなければ、英語の訓練としては向かないだろう。技術的な面が強すぎる上にあまりに日常性とはかけ離れている。むしろ変な癖がついてよいライティングができなくなるかもしれない。ネイティブの社会人も「特許の英文は。。。」と言っていたのがよくわかる。あとは技術系会社の契約関係とかを担当している人ぐらいか。

高校生も大学生も、理系であっても、文学作品とか報道記事などを読んだ方が英語力をつけるにはずっと向いている。


さて、この返答をしてもまた難癖をつけられてしまうのか。。。

因みに明細書含め関係英文書類は全部で200頁近くある。最初はぎこちなく硬い文体に一苦労したが、今は全体を一通り把握できたのと、文体への馴れでそれほど困らなくなった。でも、もう外国出願は御免蒙りたい。