『大学への数学』の今昔 | An Ulterior Weblog

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有名国公立大や難関私大への受験でこの雑誌の存在を知らないという理系の生徒は少なくとも今はいないだろう。


高校生のとき、田舎だったせいか、近くの本屋には毎月1冊しかなかった。しかも、なかなか売れていかなかった。当然だ。進学校だと思っているのは教師だけで、嗾けるくせにそういった対策授業はしていなかったし、生徒たちも昼休みなんかで勉強でもしていようものならガリ勉(死語だろう)と思われて馬鹿にされるような環境だった。勉強熱心な連中は周囲には数えるほどしかおらず、日曜に高校の校舎で行われる予備校の模試に参加するぐらいが唯一の受験を意識した行事だった。

小さな町には予備校はもちろんのこと大学受験を対象にした塾さえ現在まで存在したことがないし、人口減少の中、今後もないだろう。


いつからこの雑誌を買ったかは正確には覚えてないが、高校1年の夏休み前だったと思う(本屋で見かけてたが買ったのは高2かもしれない)。それまで大学受験を考えていなかったからだ。大学に行くのは本当に優秀な人材で、専門学校に行くことになるだろうと思っていた。


大数の目玉は何と言っても学コンと宿題だろう。宿題は問題の意味していることを把握するだけでも大変なときが多かった。浪人時代、学コンもそこそこ解けるようになって、宿題を1度だけ出した。正解し、あとでバインダーが届いた。おそらく、自分の出身高校の名前が出た最初で最後ではないかと思う。

ちなみに、いわゆる「レポート」なるものの中身がどんなものかを初めて知ったのは宿題に出てくる投稿者のものだった。こういうのを自分も一度は書きあげてみたいものだと購入し始めた頃に思ったものだ。


そして、あれから何十年も経ったいま、あるきっかけで大数の最近の号を見ることになった。大数模試というのが新たにあり、学コンも3コースに増えている。逆に宿題が2問から1問に減ったようだ。驚いたのはその正解者。受験生は全体の2割以下か。会社員だ塾講師だ公務員だと社会人が圧倒的で、中には教師や東大や京大の大学院生まで入っている。どうしてこのような状況に変わってきたのかは知らないが、まるで『数学セミナー』の「エレガントな解答をもとむ」状態だ。数学オリンピックの問題も扱うようになったことも大きな違いだ。

それだけでなく、雑誌の構成内容にも変化があり、それこそ数セミっぽい部分もある。内容が増えたことでページ数も昔の80頁から100頁と増えている。さらに、増刊号の種類も何倍にもなっている。『新数学演習』とか『解法の探求』とかは定番として、細分化や別の種類の見たこともない問題集がこれでもかとある。逆に『新作問題演習』がしばらく出てないようだ。特に『理系新作問題演習』がないというのはかなりつまらない。


全体として受験生には親切になったのかも知れないが、大学の先生による数学の啓蒙的な連載記事が無いようで、盛りだくさんだが似たものばかりで焦点がぼけた印象を受けた。それにしても毎月この100頁をこなすのは容易ではない。受験生は数学だけが相手ではない。選別すればいいだろうという意見にはたかが雑誌に毎月1200円を払うことを考えると購入後にもそのまま保存できるような内容かどうかが問われる。昔のはその価値はあったが、今のは単なる問題解説集に成り下がった気がする。受験数学オタクの同人誌で学問の雰囲気がしない。何となく違和感を覚えたのはそこが原因だ。『数学セミナー』じゃないと言われればそれまでだが、本誌の方がはるかに早く創刊されていたことを考えると、そう簡単に割り切れる話でもない。このあたり、立上げの苦労話には事欠かない創設者の黒木正憲氏はどう思っていたのだろうか。(しかも、黒木氏は弁護士なのである。数学関係者ではない)

どうも90年代あたりから、装丁に始まり内容が変わって行ったようだ。80年代以前の往年の受験生たちが今の本誌を見て何を感じるだろうか。


大数の特色のもう1つは「特別研究室」のコーナーだった。入試問題などの数学的背景に切り込むもので高校の範囲を逸脱した進んだ内容がほとんどだったと思う。今もこれはときどき出てくるのだろうか。それが見当たらなかった点も何となく受験に向き過ぎていて受験対策デパートの印象を受けるのだろう。まあ、昔は逆に受験生の役に立つのかというような記事があったが、それは進学後も有益だったものが多かった。それを処分してしまった今、後悔している。今の本誌は将来にわたって保存しようという気が起きない。

自作の良問を精選した新作問題演習も出さなければ、大学の先生の貴重な連載記事をまとめた単行本も出していない。大学受験に限らず中学受験までフォローする体制は昔とは比べ物にならないぐらいの充実度だし、時代のニーズに敏感に対応しているのだろうが、受験生取り込みの商売中心で東京出版は日本の学校数学教育の礎では無くなってしまった気がする。



STAP騒動はこんな雑誌にも影を落としている

http://xwin2.typepad.jp/xwin2weblog/2014/03/daisuerjjm.html

もっとも、私の受験の頃でも早大理工は図抜けて難しいという印象はなかったが。。。


※※

通っていた予備校に受験数学では全国的に有名な講師の方がいらした。その講師は大数のやり方が気に入らないと公言していた。あるときざっくばらんにどうしてか訊いてみた。「たしかに見事な解き方を示している。身につければ強力だ。しかし、大数はそれ以外の方法を見下している傾向がある。全ての受験生がその方法に馴染むわけでもないし、概して高度だ。伸び悩みで困っている多くの下の方の受験生を蔑ろにしている。だから、自分は今の方法を取っている。」

この講師の授業では立ち見どころか通路にも座り込みで廊下にまで食み出て、他クラスからの潜りこみも多く、追っかけもいた。いわゆる信者が多い。残念ながら、私はこの講師の授業からは興味あるものを引き出せなかったが、あとになって上の話を聴いて納得した。


※※※

増進会(今のZ会)やオリオンの通信添削もやっていたので、数学の問題を見ることができたが、あまり面白くない感じで、数学は『大学への数学』1本にした。今の受験生の動向はわからない。

通称、黒本とか黒数とか言われていたと思うが、同じ名前の研文書院の書籍があった。1冊だけ買ったことがある。難しい問題もあったが、やはり難易度は雑誌の方が上だった。月々にいろいろな情勢によってダイナミックに記事内容が変化し、受験生と向き合っていた感じの当時の『大学への数学』は抜き出ていた。


難関国立大に限られているが数学の過去問といえばこのサイトの右に出るものはないだろう。

http://server-test.net/math/