陥穽!ドリームハウス | An Ulterior Weblog

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お茶の間を楽しくしてくれる家関係の番組として、リフォームを募って取材する『大改造!!劇的ビフォーアフター』と全くの新築の取材をする『完成!ドリームハウス』が双璧だろう(後者はテレビ東京なので視聴できない地域あり)。

つい最近放送された後者の番組の物件はいろいろな意味で考えさせられ、興味深い例だった。


『完成!ドリームハウス』では建築士ではなく建築家と言われる人たちが設計した物件が扱われる。一般の人で建売やハウスメーカーの注文住宅といったレベルを越えた一味違う家を求めて建築家にお願いするのであるが、ネット環境の充実により、それがどんどん拡大している。前世紀で建築家にお願いするとなると、お金にゆとりがあるか、知合いの家を訪問してとか、限定された条件がついていたが、今は敷居が低くなっている。また、建築家たちもそうやってアピールしていかないと食べていけないのが実情だ。


今回の物件は施主が建築家だった。しかも、父親が建築界で有名な建築家のご子息。調べると、渋谷にある父親の名前を冠した事務所のトップ運営者になっており、家業として引き継いだ形になっている。ただし、40歳になるまでの担当住宅物件(ビル関係などは不明)は十数軒と少ない。それもおそらく、父親との共同だろうと思う。


上記の2つの番組で建築家が自分の家を手掛ける例は初だ。何故なかったか不思議な気もするが、とにかくなかった。番組を見終わったあと、いい加減だなぁ~と同時に、大変だなぁ~と思った。前者は無茶な設計ぶりに、後者はそこに住む家族と、こうまでしないといけない建築家の置かれている状況にである。

渋谷に小さいながらも事務所を構えるのはアトリエ建築家(デザイン関係で個人名を売りにしている建築士をこう呼ぶ)としては大変で、それなりの物件数を消化していかないと続かない。ビル設計監理中心ならわかるが住宅も視野に入っているとすると十数軒は少なすぎる。東京五輪景気はあるにせよ、それは主にビルで、アトリエ事務所ではお零れに預かる余地はあまりなさそうだ。ゼネコン内で処理されることが多いだろう。

となると、今の勢いを利用して、住宅の仕事を引き寄せるのが目的なのではないかと思う。つまり自作自演の宣伝のように思えた。そのための冒険的作品が今回のお宅ではないかと。


あるいは、名の知られた父親の後を引き継ぐに際し、自分らしさをここで新たに確立したい、それを示す作品にしようという意図があったのかも知れない。そう思うような試行的なものが随所にみられた。

台所には専用換気扇が全くない。フードもない。臭いなどは天窓から出すというが、冬に雪が降ったときはどうするのか。横に24時間換気扇と思われるものだけで取ることはまず無理である。

その新たな家は八王子にあり、事務所が渋谷。施主との打合せはどちらか近い方で行うようにするそうだが、この新居を見てお客は不安になるのではないだろうか。打合せはおそらく広いダイニングかリビングのどちらかを使うだろうが、臭いが残っている中で行うことになる。

大開口の窓があるから排気は簡単にできるが冬や夏にそれは辛い。特に夏冬が厳しい八王子では尚更だ。その辺りは同じ市内のアパートに住んでいた施主にはわかっているはずだが、経験住宅軒数の少なさの故なのか何なのか。


玄関框が土間と平らで靴の脱ぎ場所がそのタイル張りの中央に入った目地のようなステンレス板が境目とか、20m近い連続の軒先は出が1.5mもあり、その下に一切の支えがない。山の斜面に建つこの家に春一番などが入り込んだときや台風のときに最近の異常気象を考えると無事に済む気がしない。せめてどこかで途切れていればいいが、風の逃げ場がない。しかもブーメランのように折れ曲がっているのでより中央に風が呼びこまれる。どうぞ屋根を持って行ってと言わんばかりだ。

外壁のレッドシダーは軒が深い南面を除いて、残り3方向ともに軒の出がほとんどない。しかも横張りで下見にもなっていないから良く濡れて水切りも悪い。腐っていくのが早いだろう。

暖房は薪ストーブと床暖とエアコンのようだが、リビングがピット式で低く、基礎に近い。たしかここにも床暖房を入れているようだったので、シロアリが危ない。

大開口の複数の窓は合せに隙間があるとか、高気密高断熱志向の最近の住宅事情と真逆の方向には驚くばかり。合せ部に細くてもいいから柱1本あれば全く違うのに。断熱材は100mm厚だが、あれだけ隙間があるとあまり意味はないだろう。その意味で結露はあまりしないかもしれない。

などなど、何だか、昭和40年代か50年代の少々変わった、今の時代ではとても奇妙な、家のつくりだ。もちろん、その当時でも不便な家で人々は暮してはいたが。。。


デザイン的には父親の作った実家の影響もみられるが、むしろ、吉村順三やルイス・バラガンを意識したのではないかと思える点がいくつかある。あるいは中村好文も取り入れているようにも思えた。正直なところ、あまり本人の自主的なところでいいなと思えるような部分は見当たらなかった。せいぜい、家を折り曲げてまで私的空間のデッキを北側に配置した程度か。台所の換気扇を無くしたのは画期的かもしれないが。。。


もしかしたら、最悪、渋谷の事務所を引き払うことも視野に入れているのかもしれない。しかし、それなら土地が安かったとは言え、高齢とか体が不自由な施主とかを玄関まで30段以上の結構きつい階段を登らせるのはちょっと酷ではないかと思う。

家そのものは、そのうち、手が入って少しずつリフォームしていくのではないかと思う。ビフォーアフターを自ら演じることになる気がする。

今回の番組を見て、あるいは実際に訪問して、この建築家にお願いしようという施主は現れるだろうか。。。