539条落としは不覚
民法第二問
一 小問1について
1 設問前段について
(一) BA間においては、BC間における絵画の売買代金再建を
甲債権の弁済のために支払う代物弁済契約(481条)が成
立している。もっとも、甲債権を発生させた売買代金債権が
Bの錯誤のため無効となるから、Aの80万円の受領は法律
上の原因がなく不当利得(703条・704条)であるとし
て、CはAに対して80万円の支払いを求めることができる
か
(二) まず、甲債権の発生原因たるAB間の売買契約はBの錯誤
(95条本文)により無効である。にもかかわらずAはCよ
り80万円を代物弁済をとして受け取っておりこれは「利得」
といえる。そして、無効である以上CはAに払う必要はなか
ったのであるからCにはこれに対応する「損失」がある。そ
して、かかる利得と損失との間には社会通念上の因果関係も
認められる。
では、「法律上の原因がない」といえるか。
思うに、「法律上の原因がない」とは形式的には正当視され
る財貨の移動が実質的には正当でないことをいう。
前述のとおり、AB間の売買契約が錯誤無効となる以上、
これを原因とする代物弁済契約も無効となるから、CのAに
対する80万円の支払いは「法律上の原因がない」といえる。
(三) したがって、CはAに対して不当利得(703条・704
条)に基づき80万円の支払を求めることができる。
2 設問後段について
では、CはBに対して不当利得に基づき80万円の支払を
求めることができるか。
思うに、前述のようにAB間に置いて錯誤無効があったと
してもBは何ら受領しておらず、「利得」がそもそもない。
したがって、CはBに対して不当利得に基づいて80万円の
支払を求めることはできない。
二 小問2について
1 設問前段について
(一) CはAに対して、BC間の売買契約を詐欺取消(96条1
項)により遡及的に無効になった(121条本文)になった
として、不当利得(703条・704条)に基づき80万円
の支払を求めることができるか。
(二) まず、Aは80万円を受領しており「利得」がある。さら
にこれに対応する「損失」がCにあり、この間には社会通念
上の因果関係も認められる。
では、「法律上の原因がない」といえるか。
この点、Aは代物弁済(481条)として受領しているた
め、AがBC間の詐欺について善意であれば詐欺取消前の第
三者(96条3項)として保護され、CはAに対して詐欺取
消を対抗できない。この場合には、「法律上の原因がない」
とはいえない。
したがって、AがBC間の詐欺について善意であれば不当
利得(703条・704条)に基づいて80万円の支払を求
めることはできない。
もっとも、AがBC間の詐欺について悪意であれば詐欺取
消前の第三者として保護されることはないから、この場合は
「法律上の原因がない」といえ、不当利得(703条・70
4条に基づいて80万円の支払を請求できる。
2 設問後段について
(一) まず、AがBC間の詐欺について善意であり、AにBC間
の詐欺取消を対抗できない場合にはAB間の代物弁済契約は
有効となるため、甲債権は消滅することになるからBに利得
があり、「法律上の原因がない」ともいえる。
したがって、CはBに対し、不当利得(703条・704
条)に基づいて80万円の支払を求めることができる。
(二) これに対し、AがBC間の詐欺について悪意の場合にはA
は96条3項で保護されず、甲債権も消滅しない。とすれば、
Bにはそもそも「利得」が存在しない。
したがって、この場合にはCはBに対して不当利得に基づ
いて80万円の支払を求めることはできない。
再現率80%