スマートニュースで見つけた、乗用車のパッドとローター、ブレーキ鳴きの記事のこと。



本文はメンテナンスのことなのだが、写真から見た解説を少ししてみようかと。



まず、振動に追従させて曲がり、鳴きにくくするためのパッドのスリットのこと。



縦に入っているのと、斜めに入っているのがありますね。



これ、実は材質によってスリットの形が違います。




5-10年かけて、その車専用のパッドを開発する話はしたと思いますが、それもフロントとリヤではブレーキ圧力配分が7対3であるため、違う材料違う形で違うチームが開発します。



まあ、100-200人開発実験員がいるので。



スリットの入れ方には数種類のパターンがあって、カーメーカーから許可されています。



もちろん、新規形状の場合には、実験結果を持って申請が必要ですが。



斜めに入っているスリットは、ローターの外側になるほど収束モーメントが速くなるために、それに追従させる形にしてあります。



どちらが鳴きにくいかは、もちろん室内試験の他に、FEMやモーダル解析をして判定しますが、実車試験で、何年もかけて鳴かないか調べます。



また、パッドの採用は3社オリンピック方式で、1位が純正組付、2位が純正補修、3位は落選となります。



なので、わかりやすく言えば、新車に1位のパッドが付き、車検で摩耗交換するときにディーラーで客から指定しなければ2位のパッドが付けられます。



だから、パッドのスリットの形が違う?なんて気がついた方はそういう理由なんです。





2つ目。



これは、市販パッドとローターですね。



ブレンボは、日本のカーメーカーはどこも検討していないので、オートバックスとか町の整備店に依頼して付けたのだと思います。



日本で純正で競合しているのは、僕がいた日清紡ブレーキの他、曙ブレーキ、トヨタ系列のアドヴィックス(TAOCのある旧アイシン高丘)の3社くらいしかありません。



ブレンボはレース用パッドの会社ですから、乗用車に付けるのはお勧めしません。



もちろん、純正品でないという点もありますが、一番心配なのは、日本の一般道と高速道でのその車でのあらゆる試験をしていないからです。



良くあるのが鳴き。



鳴くということは、摩擦係数がその車に合ってない証拠で、急な摩擦力低下や摩耗による不具合事故があるかもしれません。



経験上、高速対応のパッド材料設計をすると、一般道の遅い速度で、予想しなかった不具合が出ます。



先の、雨でブレーキが効かないとか、急に摩耗したとか。



何せ、重要保安部品を変えてしまうのは、依頼した客の責任なので。



この写真で特に気になるのが、穴空きローターです。



これ、バイクでやる方法であって4輪車は✖️です。



バイクは軽いので、ブレーキ圧力も必要ないので、デザインを重視して設計出来ます。



なので、摩擦係数は下がりますが錆ないステンレスを使い、穴を空けてカッコ付けます。



雨の日の水切りと車雑誌に書いてあることもありますが、雨とは無関係で、理由はデザインだけです。



話は戻りますが、乗用車の特に制動力のかかるフロントに穴空きローターは✖️です。



ヒートクラックを促進させますので、大変危険です。



乗用車のブレーキの平均寿命は、11年です。



11年不具合が起きない設計をしています。



1レースしかもたせない設計のブレーキでは。




以前、書いたと思いますが、僕が開発した商用車用パッドがありますが、レース用の焼結合金パッドを買って、同じ形状に作り、室内試験で箱根降坂テストを繰り返したら、僕のパッドは0.5mm摩耗しましたが、レースパッドは5mm摩耗しました。



そのくらい材料技術が違います。