以前に少し触れましたが、大学の卒論からコンピュータグラフィックスの研究をしてました。
当時のコンピュータはようやく16ビットのパソコンが85万円出せば買えるような時代になったばかり。
助教授のポケットマネーで買ったパソコンを借りて研究させてもらいました。
最初はマシン語で、ベーシック言語になり、何とか形を整えて卒業。
洋服の試着マッチングソフトのベースです。
会社に入ると副業で、開発業務の他にプログラミングチームに入れられ、自動ブレーキテストのデータを転送し数値計算し自動グラフ化させるソフトを作ったりしました。
当時は MS DOSが出たばかり、以前よりはやりやすくはなっていましたが。
ワープロもない時代。
そのパソコンで使える一太郎ソフトを披露したら、そちらの方が驚かれたくらい。
報告書作成はタイプライターだった訳ですから。
その後目を付けたのは、有限要素法解析(FEM)です。
ソフトが出始めていまして調査をしていました。
1990年ころです。
ちゃんとした3Dのソフトが数千万円。
一番安くてデータの信頼性が高く、メニューも豊富な米emrc社のソフトを選びました。
ソフト開発者は150人で、インド人でした。
インドの優秀な方は、とても頭がいい(数学が強い)のです。
計算式は、簡単に言うと行列式のオバケ。
四面体の節点に作用する力や熱やらの釣り合い状態を行列式で解いていく。
節点数が3500になると、コンピュータがないと、とてもじゃないが知能指数200でも、将棋の名人でも解くのに100年かかると。
行列式に力を入れるのか、熱を入れるのか、流れを入れるのかによって行列式+公式でどんな伝導問題でも解ける。
考えた人は天才。
行列式の中で伝達がゼロが並ぶ部分は、時間短縮で飛ばすようにプログラムしてあったり。
線形応力、非線形応力、定常熱伝導、非定常熱伝導、披露破壊、流体、固有値、周波数応答、と何でも揃っていました。
ただマニュアルは、 A4-60サイズで6冊、英語表記で、苦労しました。
最後に取り組んだのがこちらの足跡です。
3Dの四面体要素での非線形摩擦応力解析です。
ドラムブレーキのブレーキサーボ力をシミュレーションしました。
右側に回転しているドラムを、摩擦係数0.3で踏んだときの内部応力の算出です。
当時はプログラミングが無かったので、C言語で摩擦係数が入れられるようにソフトを改造して組み込み、摩擦材とドラムの節点に摩擦係数を1000点くらい入れて計算させ成功しました。
当時の300万円の32ビットのワークステーションで500GBのデータやり取りで3時間くらいかかった記憶です。
FEM初の摩擦解析をやって遂げました。
入力側の応力が高くなって表示されているのがドラムブレーキの機構によるサーボ力です。
こういう解析や研究は日常的に行われております。
今はこのソフト会社はなくなりました。
開発費がかかる業種ですので体力が持たなかったのでしょう。
現在は、NASTRN、 ANSYS、なども吸収合併され、実力ソフトABAQUSくらいしか残っていません。
現在のFEM用パソコンなら、2分もかからず計算するでしょう。
理屈通りに行かないので、何度もパラメータを変えては計算し、実地試験で計測して合わせ込みしますから、計算時間が早いとやり直し時間が幾らでも取れますから、良いですね。
今はきっと、CRT上でドラムがくるくる回りながら計算できると思います。
時代が進むと、機器も人間の頭も進化します。
フット材の開発には、固有値解析をしました。
機器による測定は、様々なバラツキが出ますので、数値計算により理論値の推定をし、データの信頼性を高めるために利用されます。
車や部品の設計は、殆どのものが、実機での実験と計測の他に、有限要素法を使った検証が行われます。
カタログに載せている計測データは、お客様に"ちゃんとやってるよ"と示すためのもので、理屈に合っているかどうか、重要な特性は数値計算による中央値の見極めがされていると言うことです。
ありがとうございました。