比強度という単語をご存知だろうか。

カーボン繊維をボディに使った飛行機やクルマなど、軽いけど鉄より強度が高いという説明に使われますが、科学屋から言わせれば卑怯な単語ではないでしょうか。


比強度とは、"重さに対する強度"のこと。

比強度で比べると、スチール(鉄にグラファイトを1-2%添加した材料)よりも、カーボン繊維(炭素繊維とも言う)強化プラスチック(2成分ハイブリッド材料)の方が高いから、飛行機や車のボディーに使うと、軽くてより安全性があるという説明。

私はインチキだと思ってます。

比強度って何よ! 


技術文献からの抜粋で、
カーボン繊維強化プラスチックの等方性の強度は、820MPaです。

スチールも等方性で、1,600MPaでスチールの方が2倍も強度が高いです。

カーボン繊維を2倍の厚みにしないと、スチールと同等の強度にはなりません。

でも重さ当たりの強度=比強度に換算すると、
カーボン繊維強化プラスチックは50,000mで、スチールは2,000mとなり、カーボン繊維強化プラスチックの方が比強度が高い、という説明である。

しかも軽いと。

違います。

カーボン繊維強化プラスチックを使うと軽くなるが、強度はスチールの方が強い、と説明するのが正しいはず。

スチールと同じ強度を保つならば、50,000/20,000=2.5倍の厚みにしなければ危ない、
と説明するべきかと。

今や、比強度という単語は、複合材料の教科書にも定義されている単語ですが、ずるい使い方を考えても私は騙されません。

カーボン繊維の車を買うときがあるなら、厚みをどうしたか聞かないと危ないです。


チタンもそうです。

1,300MPaですから、スチールより強度が低い。

でも比強度だとスチールより50%も高くなります。

アルミは550MPaしかないですが、比強度にするとスチールと同等に。

でも流石に怖くて、アルミの比強度はスチールと同等だから大丈夫だとは誰も言いません。


ありがとうございました。