線材には、銅と銀のどちらが適切か?

ただ結果として、どちらを選ぶかは主観によります、

物理化学の観点から、真面目に考察してみます。

因みに、元ブレーキ摩擦材の専門家としても、金属の構造や性質や分析など、なくてはならない知識でしたので。

考察する観点は以下の点。

1.電気電導特性

2.耐腐食性

3.寸法と電導性

まず、1.電気電導性ですが理科年表を見ますと、電気抵抗率で表してします。


  0℃,  100℃
銅 1.55,  2.23
銀 1.47,  2.08

温度が高くなるほど電導性が悪くなります。
また、銅の方が約10%電導性が悪いとわかります。

寒い時の方が電導性が良いということですから、理論的には冬の方が音が良いことになりますので、逆転する温度があることになります。
(何だか損益分岐点のような。)

気がつくレベルでしょうか?


次に2.耐腐食性です。

銅は、空気中の酸素と結合し酸化銅になります。

腐食した銅線の断面。


表層だけが酸化しています。

実は酸化膜は中の銅を守り、これ以上錆が進まないよう保護する性質があります。

スピーカー線に使ったときも、バナナプラグ接点となる表面だけサンドペーパーで磨けばokです。

ビニールを剥いで裸線にする際に指紋が付くと錆が早くなると気にする必要性は低く、表面の腐食は中を守る膜になります。

気になるならば、2年に1回、裸線を新しいものに交換して検証までしましたが、私には音の差はわかりませんでした。

一方、銀の方は空気中の硫化水素と反応し硫化銀になります。

銀の腐食は厄介で、銅よりも何倍も早い速度で進行し、また中まで腐食して行きます。

ブレーキ摩擦材ではブレーキ温度を測定するため、アルメルとクロメルの熱電対を差し込んで計測します。


昔は熱電対の先に銀を溶かして巻いていましたが、1週間保管し使わないでいると中まで腐食し起電力が10%低下し使用不可となります。

一方、銅を溶かして巻いた熱電対は、半年は起電力が落ちません。

(手で触ると銅が腐食するので手袋をはめてという人がいるという話を聞きますが、必要ありません。
熱電対は手でベタベタ触っていましたが、起電力が落ちたりしません。)

どうせ落ちて一週間で同等になるならと、銀は昭和の時代に使用不可になりました。

つまり、銀線の正味期限は1週間ということになります。

一週間で銅と同じ電気電導率に下がり、それ以降は逆転します。

ですので、銀線は1週間ごとに新しい線に交換しないと銅に負けることになります。

また、ビニール被覆による腐食の防止策でどれだけ中の寿命が伸びるかですが、銀は中まで腐食して行きます。

先報のように、電気は線の中を通り、外側は電磁界です。


最後は、3.寸法と電導性です。

電気抵抗は、線の太さと長さの関数です。

中学の物理で習っています。

お忘れでしょうか?

忘れちゃいますね、昔昔のことです。

今、2m同士、2mm径の単線と、1mm径の2本依線の電気抵抗を計算してみます。

抵抗率を1と仮定します。

2mm径の単線の抵抗率は、0.64になります。

1mm径の2本は0.8になります。(2本で倍になると仮定して。ならないなら、1.27)

つまり、太い1本にした方が電導性は良くなります。


私が銅の太い単線を選んだ理由です。

現在、無酸素銅で一番太い線は2mm径になりまして、音場表現が良いです。

ただ、頂いたPCOCC Aの2.6mm径がありますが、スピーカー線に使ってみましたら、音が平面的で、電源ケーブルに使ったら良かったです。

結晶構造の問題なのかわかりません。

裏付けは、音を聴き比べて検証となりました。

後は、耐久性、価格、メンテナンス、音質を含めた好みになりますね。

オーディオは頂点がありません、わかりませんので、適当なところで後は音楽を楽しみましょう。