匿名組合の会計基準 | よく分かるSPC(特別目的会社)の会計・税務

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匿名組合の利益計算はどういった基準に基づいて会計処理がなされるのでしょうか。

会社であれば、会社法の計算規則ですね。

匿名組合の準拠法は商法(詳しくはこちら)ですから、やはり会社法になるのでしょうか。



実は、組合の会計基準は明確に決まっておりません。

逆に言うと、契約で決めた会計処理に従うということになります。

「じゃあ、やりたい放題だね」ということにはなりません。

やはり誰が見ても理解できる会計処理でなくてはならず、そうなると自ずと一般的な会計処理が採用されることになります。

細かい部分では特殊な処理を契約に盛り込むことはありますが、大枠では「一般に公正妥当と認められる会計処理」に基づくことになります。

そもそも、営業者である合同会社は会社法に準拠した利益計算を行うわけですから、それと異なる会計処理をしてしまうと、合同会社に利益とTKの利益が一致しないということになりかねません。

そうなると、投資家に利益を帰属しきれない利益が合同会社に残ってしまう可能性もあるわけです。



ということで、やはりTKの会計処理は一般的な会社の会計処理と大きく異なることはないということになります。

ただ、よくある会計処理として、法人税法上の課税所得計算と会社計算規則が異なる場合には、課税所得計算を優先するという取り決めがなされることがあります。

法人税法上の利益(課税所得と言います)と会計上の利益は多くの項目で相違します。

例えば、会計上、売掛金や未収入金が回収不能と見積もられる場合には費用計上する(貸倒引当金の繰入と言います)ことになりますが、税務上では一定の要件を満たさないと損金(税務上の費用です)として認められません。

会計上は引当金の金額分だけ投資家への利益分配額を減りますが、営業者である合同会社ではその引当金の金額が損金とならず、結果として営業者に利益が残り、そこに対して法人税がかかることになります。

この税務と会計の乖離については様々なものがあるため、この場では説明しきれませんが、要はこういう場合に法人税法上の課税所得計算に準拠しておけば、営業者に課税される利益が残ることはなくなるわけです。

ちょっと最後のほうがややこしくなってしまいましたが、契約で会計処理について定める場合には、税務についても留意してもらえればと思います。



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