夏椿 | ミナミのブログ

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2003/07/25 (Fri)  夏椿 

我が家の、空き地とは反対側のお宅のお庭に、夏椿の花が咲いている。

梅雨の鬱々した日に、お隣の生垣の向うから見えてくる

真っ白なその花は、いっときの清涼感を与えてくれる。

夏椿は、その幹が、お釈迦様が悟りを開いたという

沙羅双樹の木と間違えられたことから、沙羅、そして、姫沙羅とも呼ばれるそうだ。

その名からか、お寺の境内でもよく見かける花だ。

椿といえば、椿をこよなく愛した石田波郷は

酒中花という椿の名を題にした句集を出している。

酒中花とは「山吹の芯(茎の随)や、

柳やニワトコの削りかけなどで小さな花を象り彩色し、

杯の酒や杯洗の水に浮かべると開くようにした細工物」なのだそうだ。

その句集に、
ひとつ咲く酒中花はわが恋椿 とあるが、

酒造協会によると

酒中花は、葉月の酒として、夏嗜むものとされている。

俳句の季語でも、酒中花は夏の季語になっている。

そして、椿は春の季語になっている。

勿論波郷は椿の花「酒中花」を詠んだのだから

この句は春のものになるのだが、先に酒中花、という興を知ると

何処となく収まりの悪い感じがしてくるから不思議だ。

それに、酒中花を椿とするのなら、その先の恋椿は重なってしまうことになる。

彼がそれだけ、その椿に焦がれていた、という事なのだろうか。

俳句では、夏椿は、沙羅の花(しゃらのはな)

あからぎ、さるなめ、姫沙羅(ひめしゃら)と書いて、夏の季語になる。

さるなめ、については、昭和九年に高浜虚子の出した歳時記によると

さるなめり、として、夏椿とは別のものとしている。

百日紅に似た木で、その花が夏椿に似ているそうだが、少し小ぶりなのだそうだ

 

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篠という結社に入っていた頃

その主宰の親である伯母から文章を寄せて欲しいと

頼まれて、何度か書いたことが有って

 

その中にこの夏椿、沙羅の話が有る

 

沙羅に胡蝶

 

この沙羅は、当時の主宰に対する私の印象でもある

そして胡蝶はその花に魅せられながら花を移り歩く男

 

彼女が私と会話をするときは何故か命令口調になり

それなのに自分の本当の気持ちを伝えない

 

ある時、二人だけで食事をしたことが有った

当時彼女は一人で暮らしていて

赤坂のホテルの最上階で高速道路を見下ろしながら

特に交わす会話も無く

私は高速道路を過ぎる車を見ながら

彼女はいつもの不機嫌な顔でシャブリを飲んでいた

 

時には無理に作り出した私の戯言に薄笑いを浮かべ

 

帰りに私が一歩先に店を出たところで

お店の人が、先日あちらがお三人で見えた、と

 

私は瞬間、なんで間が悪いんだろうと思った

 

もっとも聞かせたくないであろう言葉を

もっとも聞かせたくない私に聞かれる

 

彼女の中で私を嫌う理由がまた一つ積み重ねられたと思った

 

ほんの些細な宿命でもちゃんとあるんだろうな、と

そう思った

 

従妹に都合の悪い場面ばかり見られる

 

その都合の悪いフィルターが無ければ

従姉と私はどんな風に付き合っていたか想像はつかない

 

しかし、よくよく思い起こすと

案外彼女は自分自身の内面を私にさらけ出していた

そんなふうにも思える

 

彼女が常に真っ向から怒りをぶつけて来たのは

たぶんそんな意識が有ったのだろう

 

唯一彼女の計算違いは

私は同じ土俵で喧嘩をしてあげるほど優しい人間では無かったということ

 

夏の日の午後、庭に咲く白い花を見ていると

白地に赤い小花を散らせた着物姿の、澄ました顔の彼女が浮かんできた