真夜中に、といっても、当時の子どもにすれば、午後八時過ぎくらいのことで、外で人の声がすると、
今しも、体中包帯だらけの男が家の中を覗いているような、そんな気がしたのです。
そう思いながらも、私は、ハヤカワSFシリーズが好きで、よく読みました。
その作家、H.G.ウェルズは、1866年の9月21日 今日が誕生日です。
H.G.ウェルズは、アインシュタインが相対性理論を確立させる前に、小説の中で既に、
四次元というものを作り出し、また、核兵器というものを作り上げているのです。
1938年10月30日のハロウィンの日に、これから始る、ラジオ劇場の、ウェルズの宇宙戦争の内容を、
キャスターが、ニュース速報のように脚色して流したことから、本当に火星人が攻めて来ると信じ、
全米中がパニックに陥った、という事件があります。
その時のキャスターの名は、奇しくも、H.G.ウェルズと同じ、オーソン・ウェルズ。
彼は、この後、当時の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルに自ら脚本した市民ケーンを初めとして、
第三の男、白鯨など、多くのアメリカ映画に、時には脚本家として、時には俳優として、関っています。
多分、英語の教材のCMなどで、彼の髭の顔に見覚えのある方も多いことだろうと思う。
オーソン・ウェルズは、23歳のそのときに、もし、宇宙戦争の中の文章に現実味を持たせたら、と、
空想したそうです。
そして、空想は現実になったわけです。
鉄腕アトムを描いた漫画家は、人が想像したものは全て実現する、といっていたことがありました。
実際、彼が描いた高速道路はそのままに、今あります。
空想は、理想の姿なのかもしれません。
理想といえば、理想科学という名前の会社が作った、プリントゴッコという、当時は画期的だった一つの分野が
終焉を告げると、今朝、ニュースで報じられていました。
このプリントゴッコが世に出たのは、1977年。
その44年前の、1933年の今日、9月21日に亡くなった宮沢賢治は、銀河鉄道の夜によって、
宇宙を空想しています。
ただ、賢治は、空想を空想のままにして、時空を彷徨うことを楽しんでいたように思えます。
それもまた賢治の理想であったような。