
今年もライチが八百屋さんの店先に並ぶ季節になりました。
青みの残るライチを見ると、ああ、もう夏になったんだなあ、と思う私です。
ライチを初めて食べたのは、30年以上前のことです。
台湾の日月潭に行った母が冷凍のライチを買って来たのです。
その後、中華街の市場通りの八百屋さんに行って、ライチがあるかと聞くと、
いつも無口なおじさんが、冷凍庫の中の、カチカチに凍ったランプータンや
マンゴスチンと一緒に、凍らせたライチを出してくれたものです。
半解凍状態のライチを、娘に剥いてやると、四つ目くらいから
凍傷になりそうでした。
そのライチが新鮮なまま枝ごと売られるようになったのは、
20年位前からだったでしょうか。
ライチの季節になると、その八百屋さんに行き、今年も夏になったわね、なんて
毎年同じ話をしながら買ったものでしたが、紅花が閉店する三年ほど前に
ご夫婦で、もう商売をする年でもないからと、閉店して町を去ってしまいました。
今は何処で何をしていることやらでございます。
この八百屋さんだけでなく、中学時代から行っていたレコード屋さんも、
嘗て同級生のお父さんが経営していた、黄金の竜があったお店も
おばさんが長い棒で、餡をこねていた中華饅頭屋さんも、
同級生のお父さんがやっていた床屋さんも、
消えてしまいました。
歳々年々人同じからず(劉廷芝)
況や町をして であります。