明日からお盆休みという日、
給与の支払いも早々に終えて、
夕方から慰労の宴をし、
ほろ酔い加減で歌番組を観ていたら
緊急報道が入り、飛行機が一機いなくなったという。
そんなバカな。
飛行機が一体何処に消えるの?
そんな話をしていると、その飛行機に搭乗していた人の名前がテレビの画面に流れ出し
この日の夕方、我が家に見えるはずだった人の名前が私の目の前を通り過ぎた。
十二日、行かれなくなった。
なんで?
兎も角、十九日に行くから。
私その日いないよ。
いなくてもいいよ。社長にそう伝えておいて。
ジ、ュ、ウ、ク、ニ、チ、解った?
そうして電話は切れた。
既に酔って、二階で休む夫に彼の名がテレビに映ったことを告げると、
階段を駆け下りてきた。
もうすぐ父親になると、二人で祝杯を上げたばかりだ。
夫はテレビの画面を見つめたままそういうと、再び二階に戻り、翌朝まで降りては来なかった。
その人を紹介してくれた義兄に電話をすると、
大丈夫だよ、彼は運が強いから、
帰ったら、どんな風だったか聞けばいいよ。
それに、乗ってない可能性だって有るんだから。
翌朝、九時を待って会社に電話をすると、
女性が、まだ連絡が取れないんです、と、悲鳴に似た声を上げた。
その会社から、二人の人が大阪に向かっていたことを知った。
二人とも、お互い小さな会社の頃からのお付き合い。
彼の会社は、大手のグループ会社に参入し、同じ時、私の夫の会社は、有限から株式に変わった。
彼の遺体は、8月19日、奥様により 家族の元に帰った。
一周忌、彼が待望していた赤ちゃんが
彼がこよなく愛した女性の膝に座っていた。
笑い顔が彼に似ていた。
あれから二十四年。
お子さんも立派な青年になられたことだろう。
しかし、Yさん、経理のけの字も知らない私に、建設業の帳簿を付けることを命じたとき
大丈夫、俺が一生守ってやるから、って約束は、どーしたの?
まあ、、お陰で私は、苦節30年、世の中で何よりも嫌いな数字と、
毎日毎日睨めっこをして、先日、漸く、自力で決算を組むことが出来たのだから
感謝するべきなのかな?
そのうち夫も私もその世に行くでしょうから、そのときはまた
あの頃みたいに、夫と社長さんと、一緒に逝かれた同僚とで、
お酒飲んで、義兄の作った鮪のお刺身食べて、日本の未来を熱く語りましょうか。
そのときは、日本なんかじゃなくって、宇宙の未来かな。