義理というか
頼み事をされると
断れない相手がいるんだが
その御仁が
海に連れてけと仰せなので
行って来たさ。
どこの海でもいいよ、
とのことだったんで
どうせ行くならうんと暑いとこ、
ワタシの好きな浜へ
連れてってしまえ。
遠浅の、
小さなひなびた、しかし
大西洋沿岸独特の
明るい雰囲気を持った村。
自国スペイン人の観光客より
太陽に飢えたドイツ人が
知る人ぞ知る、って感じで
多く来てるとこだった。
十数年ぶりに行ってみて
腰抜かした。
すっかりリゾート開発されてた…
小さい村々を縫うように
むかしの街道を延々と走って
やっと行き着く村だったのに
片道2車線の高速道路が
どどーーんと開通してて。
高速下りたら
村の入り口がすぐそこだ。
その村の入り口も
記憶よりはるかに手前にあり、
大型スーパーまで出来てた。
村の建物もおおむね新しくなってて
昔の面影なんぞどこへやら。
旧市街へも車では入れなくなってるし
これは大変なことになっとるね。
ホテルも、
予約した時点では
おぉ昔より快適そうなホテルが
出来たもんだねと
軽く思っただけだったんだが、
まぁこりゃいやはや。
食事はホテルの外に出て
浜辺の庶民的なレストランで
夕涼みしながら…
なんぞと思ってたのに、
旧市街に車で入れないなら
かなりの距離を歩くことになる。
やめたやめた。
ホテルのグリルで食事だ。
うめー。
別に安くはないが
外のレストランと変わらない値段で
いいもの出してくれるよここ。
質と量と値段を天秤にかけて
評価するなら、はっきり安い。
隣のテーブルの親子連れも
ウエイターに「外に出たらさ!
飛んでもないぼったくりでさ!
こんなことならホテルで食べた方が
安くていいもの食べられるよねって
帰って来たんだよ!」と
力説していた。
残念でしょうがない。
あの小さくて明るくて
気さくだった村が。
すっかり
観光客を餌にする
浅ましい村に変貌してしまったのか。
悪い意味での一期一会、
どうせ一度限りのご縁、
二度と来ない観光客にどう思われようが
この機会を逃さず
ふんだくらねば。
不動産バブルが崩壊して
EU全体を巻き添えにしかねないほどの
不況・失業・経済危機に
陥っているスペイン。
高速道路が通り
四つ星ホテルが乱立し
そうして出来上がった
大量の観光客の受け皿が
これから徐々に
閉鎖し廃屋と化して
行くのだろう。
その頃果たして村人は
昔のような純朴な心を
取り戻せるのだろうか、それとも
バブルに乗じて
安易に拡大した事業が破綻し
返せない借金を抱えて
絶望の淵に立たされることに
なるのだろうか。