グラウンディングとは
意識が「今・ここ」の身体に正しく定着し、人生の現実と調和している状態のことをいいます。この状態にあると、私たちは不安や怒りに飲み込まれず、自分の内側に戻ってこられる。呼吸が深く、筋肉の緊張がほどけていく。身体感覚がはっきりし、五感が研ぎ澄まされる。判断力が戻り、「自分はどうしたいか」が自然にわかるようになる。
しかし、グラウンディングが崩れていると──
思考が過去や未来へ暴走し、感情も浮遊する。
体の輪郭が曖昧になり、「何をすればよいか」がわからなくなる。
自律神経が乱れ、不眠・冷え・動悸・めまいなどが生じやすくなる。
外界の刺激に過敏になり、小さなことで爆発的に疲れる。
これは、ホルモンバランスの変化とリンクする更年期において、特に起こりやすい状態です。
わけがわからなくなるのはこんなわけです。
だからこそ、意識して
“地に足をつけ直す”ことが必要になるのです。
グラウンディングを、日本人の言葉で言い換えるなら
「グラウンディング」という言葉は、どこか西洋的で、スピリチュアルな印象を受けるかもしれません。けれどこれは、
私たち日本人が古くから
何気なく行ってきた
“身体と心を結ぶ所作”に他なりません。
たとえば──
畳に正座してお茶をすする。
玄関で靴を脱ぎ、床のひんやりした
感触にふと立ち止まる。
神棚に塩や榊を供え、
手を合わせて静かに息を整える。
朝一番に雑巾で床を拭きながら、
「今日」を迎える準備をする。
靴を磨く。包丁を研ぐ。
干し野菜を手で揉む……
これらの所作には、言葉にならない集中と呼吸が流れており、自分の内側を静かに
“地に降ろしていく”動きが宿っています。
なんと雅な日本人的な美しい
グラウンディングでしょう。
今、日本人の魂が入る器である肉体が弱っているのは、このような民族的アイデンティティの破壊と関係するのかしないのか…。
つまり、グラウンディングとは、祈りのように手を動かすこと。身体を通して魂を整える、“和”の叡智でもあるのです。
グラウンディングは、身体に何を起こしているのか?
生理学的に見ると、グラウンディングは
末梢神経(足・手)からの触覚刺激を脳幹に送り、自律神経の興奮を抑える。筋肉や関節の固有受容器を刺激し、身体の位置と重力を感じさせる。副交感神経を優位にして、呼吸・心拍・消化を穏やかに整える。自然物に触れることで、セロトニン・オキシトシンの分泌を促進する。
つまりこれは、“肉体と意識をひとつに結び直す”本能的な治療法です。
作業的グラウンディングの代表格が「草むしり」
草むしりは、まさに最も原始的で確かなグラウンディング行動です。草を根ごと引き抜く。呼吸にあわせて身体を動かす。風や土のにおい、鳥の声や葉の揺れを感じながら、「今ここ」に戻ってくる。
とくに、怒りや我慢をためている人にとっては、この“無言の作業”に感情の圧をそっと流し込むことができます。草を引き抜くという単純な行為が、「抑圧された衝動を外へ出す安全な器」になるのです。
草むしりが終わったあとのあの感覚──静かで、呼吸が深くて、頭がからっぽで、そして少しだけ誇らしい。それこそが、魂が身体に還ってきたときの“実感”なのです。
庭がなくても、神殿は整えられる──室内でできるグラウンディング
草むしりは理想的なグラウンディングですが、現代の暮らしでは「庭がない」「外に出られない」日もあります。けれど、グラウンディングとは地面に触れること以上に、魂が“今ここ”の肉体に完全に宿る感覚を取り戻すこと。
それは、家の中でも──手を使い、音を聴き、素材に触れ、呼吸を意識することで、十分に可能なのです。
むしろ、室内でのグラウンディングは、自分という“内なる神殿”を整えるための、静かな祈りの時間になり得ます。
身体を通して“自律神経を鎮め、魂を呼び戻す”ための、7つの室内ワークをご紹介します。
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