Jah Guidance vol.2 written by 打越文彦 "おみごと"
時は、新鮮な経験を与え続ける 良い事も 悪い事も
2009年12月6日水難事故により 新しい旅が誕生した。
海との関係
1964年静岡の小さな港町に生まれ育ち 子供の頃から いつも海は大きな遊び場だった。
十代でサーフィンと出会い 板を持ち海の旅に出て全日本選手権静岡2区の代表として出場やアメリカのNSSAも参加した
生活リズムの中で太陽に照らさた海で遊び戯れるている事が何よりも心地よかった
海では、時にスリルと満足感を味わえる遊び場であり 日頃の毒を抜く温泉の様にリラックスできる広場だった
四十を超える今でもサーフィンは、生活全体のモチベーションを確認するのに欠かせないものとなっていた。
楽器を演奏して 旅をして 音楽の可能性と神秘に魅了されている今の今まで俺の生活に関わっていたのは、いつも海だった。
奢り(おごり)
前日から 友人の結婚パーティーで音楽仲間やサーフィン仲間 様々な友達が集まり
友人夫婦の新しい門出と数多くの再会に幸福感に満ち溢れた宴が続いていた。
12月6日午後1時過ぎ海へ
海のコンディションは、晴天で冬なのに暖冬と言われているせいか暖かい
風は、オフショアが強く波も小さいが みんなで波乗りが楽しめる状況は整っていた。
早速ウエットスーツに着替え 駐車場での煮詰まらない冗談話に花が咲くも早々に海に出てた
みんなで笑い合う 1本 2本いつもと変わらない波に乗りひと時を夢中にして遊んだ
新しい経験を与え続けている時の流れのことさえ忘れ 緊張のかけらも失い ただ楽しいだけのその時を楽しんでいた
板を持っていない友達もウエットスーツに着替え海に向かって来るのが見えたので乗っていたサーフボードを海で手渡し
俺は、水面を浮いたり泳いだりボディーサーフィンをしたりして楽しむ事にした。
今日は、一段と綺麗に観える空と海の青い水平線 光を弾く水面は、全ての物の色を鮮やかにして 波に飛び散るしぶきにも虹を映していた。
そろそろあがろうと2、3歩 岸に歩き始めた時だった
立って胸位の水深の場所で腰あたりまで潮が引いてきた
(波が来る)
いつもと同じ様な波だろう そんな時に間が差した
いつもの様に戯れ(たわむれ)よう そんな時に魔が指した
いつもの慣れが奢りを造りだし 深い海の底の様な新鮮な現実が牙を剥いていた。
次の瞬間に 過去に無い新たな経験が来ることなど想像もしていなかった。
終焉の領域
楽しみながら波に揉まれていると海底の砂地に頭が少しかすり電気の様な物がかすかに走った
「seeee÷・・・?」
音が消えた
目蓋が動いていない
目は、見開いたまま目の前の景色を映し出す
脳を通して鮮明に記憶に焼き付きだしたのは、
水中眼鏡を掛けた様な澄み切った海の底で水面を通した光がオーロラの様な幕を作りだし
一瞬で時間の歩みが変化してしまった事からだった。
「すべてがいままでと違う ありえない 空間の感触と感覚は未だ味わった事がない」
いつもの様に水面へ行けない 時間軸も宇宙の鼓動すら止っている事が感じ取れる
自分から見た腕の位置が見当もしない所にあることも 海水がごくごくと胃の中に入り込むことも感じ取る事ができている
いままで海に選ばれ 海で亡くなった友は、同じ様な経験を通っていったのだろうか?
意識と体の線は、プッツリと引き裂かれ苦しみも痛みも感じ取れない
たぶん身体の麻痺か経験や知識でない事が痛みや苦しみから逃避させているのだろう。
今の状況を知るよりも
この現実を直視する意欲と理解力が心を冷静にさせる
不思議と恐怖や不安は、何もなかった
生まれてから何回も探した 生死の不思議と疑問
あの経験 その知識 この現実
この世を離れ未知への覚悟を受け入れ
迷わない様にと微かな意識がこの世の希望と愛からの旅立つ道を探し始めた
【これってこの世での生は、終わりかもな】
過ぎ去る過去は、記憶とともに消えてゆく走馬灯の様に思い出も そしてこのいまも
(未来の希望も過去の経験からの産物か・・・いま
時間では計れないほど 水中を漂っているのか・・・
いま いま いま
【今は、まだ生きている】)
その瞬間 波に煽られ強い衝撃に身体が上下に揺さぶられ目蓋が動いた 大自然の鼓動の働きを感じだした。
この波で首から先 顔の三分の一位の所だろうか水面から運良く浮き上がった
『すぅ!』
空気が入ってきたと同時に身体の様々な部分が痺れていると叫んでる
反射的に呼吸した 体が赤子のように甦り生存の原始的本能を呼び起こす
『たすけ・・・て』
(声が出ているのか?誰かに届いているのか?届いていなければ俺も本当の終わりだな)
視覚は、再び水の中へと吸い込まれて 水面の光が 変る代わるに落ちてく
水中に沈む体 水の動きに合わせ踊りだす手足
ゆったりとした異質な時の流れの中
灯りが薄れて少しずつ消える視覚
終は、新たに始まりる有機物から無機物への最終変化
終は、誕生の鐘が鼓動を創り溢れ流れ出す前兆
一瞬の流れ星の様な人生は、終焉の領域に入っているのだろう
『覚悟を決めよう 迷わぬ様に』
バラバラに散らばった 精神と肉体と自意識の関係を離れた自由な場所から観察しているもうひとつ自分が存在する
美しいものを思い浮べていたのと同時に数多くの愛に包まれているようだった
心は、満たされ高揚していく感じがゆっくりと少しずつ波紋のように広がる ある意味とても魅力的感覚なのかもしれない
この先の導きを示しだしている もうそろそろ永久の河を越えるのだろう想像や知識でない本物の奴
『生命の一線として数多くの物を失ってるだろう でも、映るものは理解できているし意識は、まだ一瞬たりとも失っていない
この瞬間を鮮明に記憶してたい最後の最後まで』
【いま思い起こすとこの時の俺は、異常なほど貪欲だった】
ひとつの感情がクモの糸のように意識とこの世を結んでいたと思う。
(死というものは、苦しみ悲しみから解き放たれるための自由なものではないと思う
それは生きてれば死んでしまいたくなる時だってある終わりたい時も数多く
生きなきゃ有るのか無いのかも意味もへったくれも知ったこちゃない 幸福なんて遥か彼方で叶わしないんだ
くれぐれもこの生命の終わりのことは、意味を違わないでもらわければならない
生かされ生き続けられる最後の所まで辿り着かなければならないのは、命あるものの最低の性だからだ)
甦る感覚
体を抱き上げられたのは、そんな瞬間
口の中の海水が吹き出す
息苦しさを感じたと同時に強い痛みが全身を走る
『!!! うっ!!』
一瞬とも思える異様な流れの空間は、消え去り再びこの宇宙に帰ってきていた
{ザァー} 突然 波の音 泡の音 浜辺の音が耳に突き刺さる
(あっ 音が聴こえる)
やばかった俺まだ生きてたんだ 戻って来れたんだ
『あっぶ っねー』第一声がこれだった
(おっ 少し息苦しいが呼吸ができている)
「大丈夫ですか?」
助けてくれたのは、通称 博士 サーフギアを創るアーティストの友人だった
『駄目だ頭を打って全身が動かない』・・・あれ 話せている
「じんさーん・・」博士が珍しく大きい声を出してる感心するほど珍しい事だ
じんさんと他の友人もこっちに駆け寄ってくる
重い体を安全な所に運んでもらう途中 思わず言葉が出ていた
『俺 死んだと思った』
俺の足を抱えジンさんが話し掛けてくれる
「どうした どうなってるだー?」
少し吐き気と悪感を感じるな
『俺 首の骨折れてると思う』
そうこう会話していると この体を大切に地上に寝かせてくれた
少し落ち着いてから 高台になったコンクリートの防波堤の上に移動してもらうと
その直後にもと居た砂浜に上げ潮の第一波が押し寄せた
「上に揚げといて良かったな」 誰かの声が聞こえた (本当だなー!しかし完璧なタイミングすぎる)
しばらくジンさんの膝の上で色々な顔を眺めてた
消防署に二人同時に連絡を入れてくれる人
防波堤に掛かる階段を駆け上がる人 遠くを見詰めてなにか考えてる人
映る景色の奥に綺麗な富士山を観た時 丁寧に地面に首を置いてもらった
青空に飛行機雲が走ってた。
救急車を待つ間
言葉を掛け励ましてくれる人 身内や多方面に連絡を取ってくれる人
辺りの人は、それぞれにこの命を救うことに協力してくれていた
完璧とも思える連帯感は、異様な空気と高い緊張感の中に生まれていた
このまま全身が麻痺していても 最悪なことが未来に想定できたとしても
生き続けている喜びが心を支え 恐怖に包まれることなどはなかった 冷静でいられた
失うものを失いきっている囚われているもの等なく単純に、これからもっと自由にすべての出来事にありがたく感謝と理解ができるんだ
『生きれるとこまで生ききってやる』
サイレンの音が止ったと気がついた時
目の前には、救急隊員がいた
自分の意識を確かめられると症状を伝えることに夢中になった
隊員達の真剣な眼差しと周りの緊張感 生命に危険があることを十分に感じ取れる。
(でもこのとき自分の命がこの事では、無くならない事が解っていた 生命が繋がっていく事を確信していた)
走る救急車の中で痛みが襲い続けるが気持ちは、勇気に満ちていた
楽しい時も苦しい時も時が流れていることは、慣れているつもりだ お気楽極楽の性格で我慢できたのかもしれないのだが
本当に勇気の支えになっていたのは、この命にたずさわる多くの人達の想いや行動にどっぷり身をゆだね
いつか来るこの時この今を迎える想像ができたからこそ痛みに耐え受け入れられてたし
この時 痛いという刺激は、生きているとゆう喜びにも感じ取れたんだ。
病院搬送 検査CT MRI
病院に着いたときには、麻酔の様な全身麻痺 腕の部分では、腕を取ってほしくなるほどの痛み 首から上は、激痛が次々と襲ってくる
それでも体の感覚はが少しずつ帰って来ている このが痛みが広がることで確信できる。
診察されてる間に体がカチカチに硬直している
緊急外来の医師の目が俺の瞳の奥深くをのぞき込んでいる 観察に集中する眼差しは、俺の総てを看られているようだった
「ごめんねこれ脱げないから切りますね」
看護士さんは、ウエットスーツをバラバラに切り刻んでいるようだ
真っ裸の身体 ダラとした手足があちこち動かされている
片手に点滴の針 もう片手は、血圧やら脈やらを取ってくれている そして下半身にオムツ
硬直しているところ以外の場所は、筋肉が緩みきっている
力が何処にも入らないと言うよりも力の入れ方が解らなくなっていた
自分の身体は、ただ重いだけの肉の塊 身動きひとつできない
そんな中 痛み止めの薬だろうか激痛から少々解放されていた感じがした
CT MRI検査に院内を走り回るベットは白い天井のレールに乗って、映画以上にリアルなスリル 脳神経病棟の個室までこの体を運ぶ
応急処置後の室内では、思わぬ想像をかき立てる
もう一度寝てしまえばそのまま起きて来れないような気にさせる。
生きているからこその不安を感じる
(何故か不思議なのだが生かされている様にも思えるし 新しく生まれ変わっている感もある 只の事実は、まだ続いているとゆう事だけだ)
記憶にある様々の人の顔が浮かぶ
思い出の中の喜びの笑顔がこちらを向いて心配している
笑顔で過ごそうと約束してた明日がこちらを向いて心配している
どのような立場に在ろうとこの念に包まれている間違いなく生きる今が幸福そのものだ
おかしな話だが事故が起きた日 眠りに落ちるまで幸福感で一杯になっていた
自分が何処まで鈍感なのかそれともずぶといのか いまになって思えば相当な変わり者の馬鹿だ それも相当前向きの。
ここに繋がれた様々な命は、数多くの祈りや想いと素朴な愛により大地と結ばれている
このひとつの灯が消えてしまわないことがはっきりと観えたしすべてに安心していたんだ。
入院
12月8日
個室のベットに横たわる俺は、大人の身体の赤ん坊
真っ裸にオムツ 身体は、ゆう事を利かず首も座ちゃいない。
午前 怪我の検査結果がでた 【脊髄中心性損傷 頸椎骨折】
その場で手術を受ける事を決め数時間後 手術の日が決まった
薬で炎症の症状が少し落ち着けば二日後の午前から開始の予定を聴く
そして頭を固定させるため頭に穴をあけボルトの様なものを差し頭を固定させけん引した
【あと二日か・・・】
身をゆだねよう流れの中を 風に舞う木の葉の様に 風に乗ってる古の葉の様に流れる他にない
『秘技 現実逃避の術』
唯一景色は無機質な白色の天井の板 その白を眺め空想に耽(ふけ)る
外の天気は、晴れなのか雨なのか? 山は、冬色の景色に変化したのだろうか?
そんなどうでもない事が無性に知りたくなる 想像してみる
葉が落ち乾いた山が風に靡(なび)いている
微かに聞こえる鳥の声 想像してみる
北風が来ると笑ってる そんな話に聴こえてくる
不思議な想像力が冴えている気持ちのもっていき方や構想は、どうかなっちまっているのか?それとも薬の効き過ぎか?
【俺の空想も陶酔しきって狂っているのかもしれないな】
重力に押さえつけられた手足 昨日までのものとは、訳が違う
身体の麻痺は、何かの感触は感じていても
強く触っているのか弱く触れているのかなんて解らない
体中が正座で痺れているようだ 昨日までの身体の感覚は、もう失った
今日の感触からまた新しい感覚を育ていかないと この先大変な人生になりそうだ
覚悟を決めてまっすぐに真剣に取りくまないと 取り返しが効かなくなりそうだ
体中の筋や筋肉 血液に細胞 足の指先から耳の鼓膜 目ん玉の奥の奥 身体隅々まで細かく話し掛けていく
答えは帰ってこなくても一方的に話し掛けた
『感じてくれよ 少しでいいから動いてくれ』
届いている事をイメージした微かな答を見逃さない様に集中する
願わなければ叶わない 動き出さなければたどり着けないのは、当たり前の事だ
今を精一杯生きたいのだからそうしよう。
【しかしすでに俺の身体は、回復への道を歩き始めていた
その証拠にこの頃には、筋肉がしかりと働いて呼吸もしかりしていた事を後から思い起こされる】
手術室と麻酔からの解放
12月10日から12月14日集中治療室
手術のことは手術室に入った所から憶えていないが
午前十時から午後七時過ぎまでの約十時間の手術だった
麻酔から覚め 激しい嘔吐の中意識が戻った
看護師さんの問に答える中 手術が終わった事を知り現実の世界といまの立場を把握すると
目の前にうっすら映ったのは二人の姉だった 俺の顔を覗き込みて泣きそうになっているのがよくわかる
(大丈夫 心配ないよ)と伝えたいが意識が朦朧(もうろう)として何もできない ゴメン
心電図の音がメトロノームのように空間を刻み 耳鳴り音は、かすれたメロディーを奏でている
生きて感じられるからこその音の魔法 これもまた幻聴なのか?
酸素吸入のゴムが鼻の穴に刺さり 首の固定器具は、アメフトさながらのゴツイ奴
胸から電気コードが何本か出て機械に繋がれ 左手に点滴のチューブが三、四個の袋に繋がり必要な栄養と改善の薬を投与されている
健康でない不完全な肉体 医学の力が無ければ既に息絶えているのだろう
俺の意思表現は、麻痺した右の末端に有る呼び出しボタンだけ
噎せ返る胃液に右手を握り 口の中を吸引してもらう
鼻が詰まり息苦しさにまた手を握り 呼吸を楽にしてもらう
ここ集中治療室に居ると体も経験も一人前の大人が子供の様になってしまうのか こころが寂しく切なくなる
こんな想いがいつまで続くのだろう?
そんな気持ちの中 運命は、ひとつの山を越えていたのかもしれない
術後は、集中治療室で二時間おきに意識レベル 血圧 体温 様々な検査を繰り返す
自分の氏名 生年月日 場所 今日が何月何日であるか看護士さんに答えると眠りにつく
これが四十八以上時間続いたのだが
はじめの何時間後からか目が覚めるごと身体が変化していった
指の先から手首の関節 次には、足先から膝の関節と少しずつに意識が通じる
【動く様にになってきた 少しずつ少しずつ答えが返りだしたんだ!】
失ったものを取り戻す喜びに命があるという奇跡は、格別に嬉しすぎる。
三日目の朝 個室に移る前には、不器用だが両手を上げ握ったり開いたりするところまで出来ていた。
薄暗いこの数日間 いままでの価値観を覆す貴重な体験が次々と流れて行った。
素朴な愛との出会い
12月12日
自我欲等の想いも寄せ付けない素朴な働き
看護士達の真剣で献身的な働き
命を繋げるために
心身の病や痛みから解放するために
より多くの笑顔のために
数多くの希望のために
きっとそれだけではないだろう
この働きにの元にどれほどの想いと願いが隠されているのだろうか?
睡眠時間も驚くほど少ないのに働き続けている
白衣の天使ならぬ白衣の戦士が走り続けている
命を救う無償の愛は、涙が出るほど力強い
それは果てしなく強く俺の心を打ち勇気を振るい立たせる
素朴な愛の存在に触れた気がした。
腕の痛み 指先からの麻痺
12月13日
何処まで回復出来るのだろう
この身体はもう回復の見込みがないのか?
掻き消そうにも心の隅に蔓延る(はびこる)不安が重くのしかかる
以前の様に楽器を奏でたい 歩きたい 笑いたい
このベットから立ち上がる事が座る事が出来るのだろうか?
スプーンを握り自分の口に食べ物を運べるのだろうか?
いつになったら いつになったら いつになったら
過去は、とうに過ぎ去ったのに 流れる時の歩みは止っているようだ
想い巡る未来の希望は、自欲となり自身のストレスを重ねて最悪の覚悟ばかりを決意させるだけだった
いま現在だけを観つめよう 生きてるだけで十分じゃないか
先の事に囚われない様にしよう そう考えれば幸せがポツリポツリと現れてきた
肩から肘に掛けての痛みは 筋肉注射の針を刺したままグリグリと針を動かされているようだ
神経過敏と言うそうだが空気の揺れを感じただけで その痛みが腕中を走る
痛いという言葉の代わりに歯を食いしばる息ができないくらいに
こんな痛みとこの先ずっと付き合ってゆくのか なんとか上手くやり過ごさなければ
何か良い方法を編み出せないか 考えてみる 意識の持って生き方でと色々試してみる
【あー出来る分けないか!】
いまは、お医者さんの言う様に痛み止めに頼ろう 明日の挑戦のためにも!
医師のひとこと
12月14日
「早く元気になって仕事に戻れる様 みんなが待っているのだから」
何かの役に立って生きたい
個室への引っ越し
回復の喜び
12月15日聴こえる詩は、聖なる叫び
ベットを離れ車椅子に
集団生活への調和
12月17日
権力者から貧困の人 善悪を定める者から裁かれた人 侵略者から囚われた人
統一され 教育され 指図され 時代の価値に流され
決まり事に囚われ自分自身の答えを失い 周囲の上下左右に現世の方向感覚を見失い
法律や社会のすきまを探して生きようとしてる人がどれだけ居るのだろう
楽をしようと情熱を忘れかけている人がどれだけ居るのだろう
未来の幻に夢を見て現在を失っている人がどれだけ居るのだろう
この星に蔓延る怠慢な思想がいくつ居るのだろうか?
世界は、いつから社会的統一価値感を強め個人の道徳観を疎かにしはじめたのだろう
原始時代の様な野性的な殺し合いから
現代の権力争いと正義と信義の争いは、生命の真理を偽っているの事は、明確だ
答えは、私心の最善とする思想へ忠実に自信を動かして行く事だ
戦い事を嫌い平穏を望むならば自身の世界から奪い合う事を止め争う事を自分の中から消してゆけばいいだけだ
立派な大樹を育つとすれば 土に祈りを込める所から始まる
永い時大地を観極め気候を観極め 適した種が現れ願いを込めなければ
大樹は、自然との共存が許されない
大樹は、必要な時に葉を落とし土を肥やし 果実を育て大地を造りだす
植物は、存在する事で大自然の役目を果たし
動物は、生きる事で大自然の役目を果たし
生きる者は、自我の消えた願いと祈りで大自然の役目を果たして行く
『ただ今があるがままに』様々な思想家や哲学者がよく使う言葉だが
確実にこの表現が的確であろう
自分の歩けると言う事
12月21日
クリスマスカード
12月23日
看護師さん達からのクリスマスカード
リファビリテーション
12月26日
PTSDの恐怖
過去にに善かろうと悪かろうと現在に来てしまっては、どちらでも少しも変わりない
ならばここに起こるひとつひとつの出来事を新鮮に直視すれば全てのものに基礎的理解力を広げることが出来るのだろうか?
思ったよりも身体的に植え付けられた記憶とゆうものは、心の気ずかぬ頃に潜んでいる
プラスティクのコップに入っている水を見るだけで身体が震えだす
眠りに落ちた時に出てくるあの場面に呼吸ができなくなりテルミンの様な音が不協和音を奏でる
いつも同じ悪夢 これも生き続ける糧になるのだろうか?
フラシュバックは、あらえる方向から単純な事から深いものを感じさせ想像させる
あの瞬間 漂う水の中で見た折り重なる光 水平線は、万華鏡のトンネルを造り渦を巻き初めいている様子をみる度
死ぬ事を想像させられ 生きている事すら忘れさせられてしまう
ある時テレビ画面に海が映し出されたのをにた瞬間 吐き気を催すほどの凄まじいトラウマ
人は、時間が解決するのでしょうと慰めの言葉を掛けてくれるが そんな風には、思えない
ずっとずっと付き合っていくならば苦しまぬ様に受け入れなければ
このトラウマが何処から来るのか理解しなければ苦しみからは、解放されない様な気がする。
現在に存在しない恐怖これも何かの教訓かもしれない。
年末の帰郷
音楽への情熱
12月14日早朝パソコンとテープレコーダーを手に脳外科病棟の個室 ベットの上で書き始めていた。
旅に出たいと思っていませんか?
この大きな旅の途中で
変化をしたいと思っていませんか?
この不変の無い世界で
これからも自分の経験は、本質的真理だと少しも思いません
過去は、過ぎ去りいずれ 消えてゆくのだから
今と言う時だけが 新鮮で他にない体験であるから
同じ事など有るはずは、ないのですから
私は、今この時 真剣にに作り上げていきたい
何にも囚われず自由に答えと出会うために生きたいから
過去のある王族は、名を残し地に刻んだ
過去のある文明は、神を差し教えを解いた
過去から個人は、骨を土に血を水にして帰ってゆく 大自然の流れの中で
そして未だに個人は、生き様を手探りで探し続けていく 現世に解き放たれた意識の中で
何の差別も無く 囚われた壁も無く
与えられたひとつにひとつを魂を磨きを掛けて この世の時を駆けぬけてる
どれだけの物質が追求されても精神が発展しても不変であろう
この世でたった一つの不変なもの 魂の大河(流れ)出会えた気がする。
もしもあなたがこの世から解き放たれる前に 大地に遺志を刻むとしたら何を残しますか?
希望は、経験の産物 過去と比較した幻の幸福
欲望は、経験した過去を移した幻の自我
ならば
未来と過去に迷わされてしまわぬように今を理解していきたい
自身の心を極めよう悪しきもののないそれぞれ宇宙に帰るために
解き放たれた後の安住の地は、自信の魂が作る
理解に努めよう 出会う時すべてに
瞬間そのものを幸せに感じるため集中しよう
美しいきものに夢中になり
愛しものに無我を知ろう
無我夢中に生き続けよう許される場所まで
石の上に座り続ける苔の様に
2009年12月6日水難事故により 新しい旅が誕生した。
海との関係
1964年静岡の小さな港町に生まれ育ち 子供の頃から いつも海は大きな遊び場だった。
十代でサーフィンと出会い 板を持ち海の旅に出て全日本選手権静岡2区の代表として出場やアメリカのNSSAも参加した
生活リズムの中で太陽に照らさた海で遊び戯れるている事が何よりも心地よかった
海では、時にスリルと満足感を味わえる遊び場であり 日頃の毒を抜く温泉の様にリラックスできる広場だった
四十を超える今でもサーフィンは、生活全体のモチベーションを確認するのに欠かせないものとなっていた。
楽器を演奏して 旅をして 音楽の可能性と神秘に魅了されている今の今まで俺の生活に関わっていたのは、いつも海だった。
奢り(おごり)
前日から 友人の結婚パーティーで音楽仲間やサーフィン仲間 様々な友達が集まり
友人夫婦の新しい門出と数多くの再会に幸福感に満ち溢れた宴が続いていた。
12月6日午後1時過ぎ海へ
海のコンディションは、晴天で冬なのに暖冬と言われているせいか暖かい
風は、オフショアが強く波も小さいが みんなで波乗りが楽しめる状況は整っていた。
早速ウエットスーツに着替え 駐車場での煮詰まらない冗談話に花が咲くも早々に海に出てた
みんなで笑い合う 1本 2本いつもと変わらない波に乗りひと時を夢中にして遊んだ
新しい経験を与え続けている時の流れのことさえ忘れ 緊張のかけらも失い ただ楽しいだけのその時を楽しんでいた
板を持っていない友達もウエットスーツに着替え海に向かって来るのが見えたので乗っていたサーフボードを海で手渡し
俺は、水面を浮いたり泳いだりボディーサーフィンをしたりして楽しむ事にした。
今日は、一段と綺麗に観える空と海の青い水平線 光を弾く水面は、全ての物の色を鮮やかにして 波に飛び散るしぶきにも虹を映していた。
そろそろあがろうと2、3歩 岸に歩き始めた時だった
立って胸位の水深の場所で腰あたりまで潮が引いてきた
(波が来る)
いつもと同じ様な波だろう そんな時に間が差した
いつもの様に戯れ(たわむれ)よう そんな時に魔が指した
いつもの慣れが奢りを造りだし 深い海の底の様な新鮮な現実が牙を剥いていた。
次の瞬間に 過去に無い新たな経験が来ることなど想像もしていなかった。
終焉の領域
楽しみながら波に揉まれていると海底の砂地に頭が少しかすり電気の様な物がかすかに走った
「seeee÷・・・?」
音が消えた
目蓋が動いていない
目は、見開いたまま目の前の景色を映し出す
脳を通して鮮明に記憶に焼き付きだしたのは、
水中眼鏡を掛けた様な澄み切った海の底で水面を通した光がオーロラの様な幕を作りだし
一瞬で時間の歩みが変化してしまった事からだった。
「すべてがいままでと違う ありえない 空間の感触と感覚は未だ味わった事がない」
いつもの様に水面へ行けない 時間軸も宇宙の鼓動すら止っている事が感じ取れる
自分から見た腕の位置が見当もしない所にあることも 海水がごくごくと胃の中に入り込むことも感じ取る事ができている
いままで海に選ばれ 海で亡くなった友は、同じ様な経験を通っていったのだろうか?
意識と体の線は、プッツリと引き裂かれ苦しみも痛みも感じ取れない
たぶん身体の麻痺か経験や知識でない事が痛みや苦しみから逃避させているのだろう。
今の状況を知るよりも
この現実を直視する意欲と理解力が心を冷静にさせる
不思議と恐怖や不安は、何もなかった
生まれてから何回も探した 生死の不思議と疑問
あの経験 その知識 この現実
この世を離れ未知への覚悟を受け入れ
迷わない様にと微かな意識がこの世の希望と愛からの旅立つ道を探し始めた
【これってこの世での生は、終わりかもな】
過ぎ去る過去は、記憶とともに消えてゆく走馬灯の様に思い出も そしてこのいまも
(未来の希望も過去の経験からの産物か・・・いま
時間では計れないほど 水中を漂っているのか・・・
いま いま いま
【今は、まだ生きている】)
その瞬間 波に煽られ強い衝撃に身体が上下に揺さぶられ目蓋が動いた 大自然の鼓動の働きを感じだした。
この波で首から先 顔の三分の一位の所だろうか水面から運良く浮き上がった
『すぅ!』
空気が入ってきたと同時に身体の様々な部分が痺れていると叫んでる
反射的に呼吸した 体が赤子のように甦り生存の原始的本能を呼び起こす
『たすけ・・・て』
(声が出ているのか?誰かに届いているのか?届いていなければ俺も本当の終わりだな)
視覚は、再び水の中へと吸い込まれて 水面の光が 変る代わるに落ちてく
水中に沈む体 水の動きに合わせ踊りだす手足
ゆったりとした異質な時の流れの中
灯りが薄れて少しずつ消える視覚
終は、新たに始まりる有機物から無機物への最終変化
終は、誕生の鐘が鼓動を創り溢れ流れ出す前兆
一瞬の流れ星の様な人生は、終焉の領域に入っているのだろう
『覚悟を決めよう 迷わぬ様に』
バラバラに散らばった 精神と肉体と自意識の関係を離れた自由な場所から観察しているもうひとつ自分が存在する
美しいものを思い浮べていたのと同時に数多くの愛に包まれているようだった
心は、満たされ高揚していく感じがゆっくりと少しずつ波紋のように広がる ある意味とても魅力的感覚なのかもしれない
この先の導きを示しだしている もうそろそろ永久の河を越えるのだろう想像や知識でない本物の奴
『生命の一線として数多くの物を失ってるだろう でも、映るものは理解できているし意識は、まだ一瞬たりとも失っていない
この瞬間を鮮明に記憶してたい最後の最後まで』
【いま思い起こすとこの時の俺は、異常なほど貪欲だった】
ひとつの感情がクモの糸のように意識とこの世を結んでいたと思う。
(死というものは、苦しみ悲しみから解き放たれるための自由なものではないと思う
それは生きてれば死んでしまいたくなる時だってある終わりたい時も数多く
生きなきゃ有るのか無いのかも意味もへったくれも知ったこちゃない 幸福なんて遥か彼方で叶わしないんだ
くれぐれもこの生命の終わりのことは、意味を違わないでもらわければならない
生かされ生き続けられる最後の所まで辿り着かなければならないのは、命あるものの最低の性だからだ)
甦る感覚
体を抱き上げられたのは、そんな瞬間
口の中の海水が吹き出す
息苦しさを感じたと同時に強い痛みが全身を走る
『!!! うっ!!』
一瞬とも思える異様な流れの空間は、消え去り再びこの宇宙に帰ってきていた
{ザァー} 突然 波の音 泡の音 浜辺の音が耳に突き刺さる
(あっ 音が聴こえる)
やばかった俺まだ生きてたんだ 戻って来れたんだ
『あっぶ っねー』第一声がこれだった
(おっ 少し息苦しいが呼吸ができている)
「大丈夫ですか?」
助けてくれたのは、通称 博士 サーフギアを創るアーティストの友人だった
『駄目だ頭を打って全身が動かない』・・・あれ 話せている
「じんさーん・・」博士が珍しく大きい声を出してる感心するほど珍しい事だ
じんさんと他の友人もこっちに駆け寄ってくる
重い体を安全な所に運んでもらう途中 思わず言葉が出ていた
『俺 死んだと思った』
俺の足を抱えジンさんが話し掛けてくれる
「どうした どうなってるだー?」
少し吐き気と悪感を感じるな
『俺 首の骨折れてると思う』
そうこう会話していると この体を大切に地上に寝かせてくれた
少し落ち着いてから 高台になったコンクリートの防波堤の上に移動してもらうと
その直後にもと居た砂浜に上げ潮の第一波が押し寄せた
「上に揚げといて良かったな」 誰かの声が聞こえた (本当だなー!しかし完璧なタイミングすぎる)
しばらくジンさんの膝の上で色々な顔を眺めてた
消防署に二人同時に連絡を入れてくれる人
防波堤に掛かる階段を駆け上がる人 遠くを見詰めてなにか考えてる人
映る景色の奥に綺麗な富士山を観た時 丁寧に地面に首を置いてもらった
青空に飛行機雲が走ってた。
救急車を待つ間
言葉を掛け励ましてくれる人 身内や多方面に連絡を取ってくれる人
辺りの人は、それぞれにこの命を救うことに協力してくれていた
完璧とも思える連帯感は、異様な空気と高い緊張感の中に生まれていた
このまま全身が麻痺していても 最悪なことが未来に想定できたとしても
生き続けている喜びが心を支え 恐怖に包まれることなどはなかった 冷静でいられた
失うものを失いきっている囚われているもの等なく単純に、これからもっと自由にすべての出来事にありがたく感謝と理解ができるんだ
『生きれるとこまで生ききってやる』
サイレンの音が止ったと気がついた時
目の前には、救急隊員がいた
自分の意識を確かめられると症状を伝えることに夢中になった
隊員達の真剣な眼差しと周りの緊張感 生命に危険があることを十分に感じ取れる。
(でもこのとき自分の命がこの事では、無くならない事が解っていた 生命が繋がっていく事を確信していた)
走る救急車の中で痛みが襲い続けるが気持ちは、勇気に満ちていた
楽しい時も苦しい時も時が流れていることは、慣れているつもりだ お気楽極楽の性格で我慢できたのかもしれないのだが
本当に勇気の支えになっていたのは、この命にたずさわる多くの人達の想いや行動にどっぷり身をゆだね
いつか来るこの時この今を迎える想像ができたからこそ痛みに耐え受け入れられてたし
この時 痛いという刺激は、生きているとゆう喜びにも感じ取れたんだ。
病院搬送 検査CT MRI
病院に着いたときには、麻酔の様な全身麻痺 腕の部分では、腕を取ってほしくなるほどの痛み 首から上は、激痛が次々と襲ってくる
それでも体の感覚はが少しずつ帰って来ている このが痛みが広がることで確信できる。
診察されてる間に体がカチカチに硬直している
緊急外来の医師の目が俺の瞳の奥深くをのぞき込んでいる 観察に集中する眼差しは、俺の総てを看られているようだった
「ごめんねこれ脱げないから切りますね」
看護士さんは、ウエットスーツをバラバラに切り刻んでいるようだ
真っ裸の身体 ダラとした手足があちこち動かされている
片手に点滴の針 もう片手は、血圧やら脈やらを取ってくれている そして下半身にオムツ
硬直しているところ以外の場所は、筋肉が緩みきっている
力が何処にも入らないと言うよりも力の入れ方が解らなくなっていた
自分の身体は、ただ重いだけの肉の塊 身動きひとつできない
そんな中 痛み止めの薬だろうか激痛から少々解放されていた感じがした
CT MRI検査に院内を走り回るベットは白い天井のレールに乗って、映画以上にリアルなスリル 脳神経病棟の個室までこの体を運ぶ
応急処置後の室内では、思わぬ想像をかき立てる
もう一度寝てしまえばそのまま起きて来れないような気にさせる。
生きているからこその不安を感じる
(何故か不思議なのだが生かされている様にも思えるし 新しく生まれ変わっている感もある 只の事実は、まだ続いているとゆう事だけだ)
記憶にある様々の人の顔が浮かぶ
思い出の中の喜びの笑顔がこちらを向いて心配している
笑顔で過ごそうと約束してた明日がこちらを向いて心配している
どのような立場に在ろうとこの念に包まれている間違いなく生きる今が幸福そのものだ
おかしな話だが事故が起きた日 眠りに落ちるまで幸福感で一杯になっていた
自分が何処まで鈍感なのかそれともずぶといのか いまになって思えば相当な変わり者の馬鹿だ それも相当前向きの。
ここに繋がれた様々な命は、数多くの祈りや想いと素朴な愛により大地と結ばれている
このひとつの灯が消えてしまわないことがはっきりと観えたしすべてに安心していたんだ。
入院
12月8日
個室のベットに横たわる俺は、大人の身体の赤ん坊
真っ裸にオムツ 身体は、ゆう事を利かず首も座ちゃいない。
午前 怪我の検査結果がでた 【脊髄中心性損傷 頸椎骨折】
その場で手術を受ける事を決め数時間後 手術の日が決まった
薬で炎症の症状が少し落ち着けば二日後の午前から開始の予定を聴く
そして頭を固定させるため頭に穴をあけボルトの様なものを差し頭を固定させけん引した
【あと二日か・・・】
身をゆだねよう流れの中を 風に舞う木の葉の様に 風に乗ってる古の葉の様に流れる他にない
『秘技 現実逃避の術』
唯一景色は無機質な白色の天井の板 その白を眺め空想に耽(ふけ)る
外の天気は、晴れなのか雨なのか? 山は、冬色の景色に変化したのだろうか?
そんなどうでもない事が無性に知りたくなる 想像してみる
葉が落ち乾いた山が風に靡(なび)いている
微かに聞こえる鳥の声 想像してみる
北風が来ると笑ってる そんな話に聴こえてくる
不思議な想像力が冴えている気持ちのもっていき方や構想は、どうかなっちまっているのか?それとも薬の効き過ぎか?
【俺の空想も陶酔しきって狂っているのかもしれないな】
重力に押さえつけられた手足 昨日までのものとは、訳が違う
身体の麻痺は、何かの感触は感じていても
強く触っているのか弱く触れているのかなんて解らない
体中が正座で痺れているようだ 昨日までの身体の感覚は、もう失った
今日の感触からまた新しい感覚を育ていかないと この先大変な人生になりそうだ
覚悟を決めてまっすぐに真剣に取りくまないと 取り返しが効かなくなりそうだ
体中の筋や筋肉 血液に細胞 足の指先から耳の鼓膜 目ん玉の奥の奥 身体隅々まで細かく話し掛けていく
答えは帰ってこなくても一方的に話し掛けた
『感じてくれよ 少しでいいから動いてくれ』
届いている事をイメージした微かな答を見逃さない様に集中する
願わなければ叶わない 動き出さなければたどり着けないのは、当たり前の事だ
今を精一杯生きたいのだからそうしよう。
【しかしすでに俺の身体は、回復への道を歩き始めていた
その証拠にこの頃には、筋肉がしかりと働いて呼吸もしかりしていた事を後から思い起こされる】
手術室と麻酔からの解放
12月10日から12月14日集中治療室
手術のことは手術室に入った所から憶えていないが
午前十時から午後七時過ぎまでの約十時間の手術だった
麻酔から覚め 激しい嘔吐の中意識が戻った
看護師さんの問に答える中 手術が終わった事を知り現実の世界といまの立場を把握すると
目の前にうっすら映ったのは二人の姉だった 俺の顔を覗き込みて泣きそうになっているのがよくわかる
(大丈夫 心配ないよ)と伝えたいが意識が朦朧(もうろう)として何もできない ゴメン
心電図の音がメトロノームのように空間を刻み 耳鳴り音は、かすれたメロディーを奏でている
生きて感じられるからこその音の魔法 これもまた幻聴なのか?
酸素吸入のゴムが鼻の穴に刺さり 首の固定器具は、アメフトさながらのゴツイ奴
胸から電気コードが何本か出て機械に繋がれ 左手に点滴のチューブが三、四個の袋に繋がり必要な栄養と改善の薬を投与されている
健康でない不完全な肉体 医学の力が無ければ既に息絶えているのだろう
俺の意思表現は、麻痺した右の末端に有る呼び出しボタンだけ
噎せ返る胃液に右手を握り 口の中を吸引してもらう
鼻が詰まり息苦しさにまた手を握り 呼吸を楽にしてもらう
ここ集中治療室に居ると体も経験も一人前の大人が子供の様になってしまうのか こころが寂しく切なくなる
こんな想いがいつまで続くのだろう?
そんな気持ちの中 運命は、ひとつの山を越えていたのかもしれない
術後は、集中治療室で二時間おきに意識レベル 血圧 体温 様々な検査を繰り返す
自分の氏名 生年月日 場所 今日が何月何日であるか看護士さんに答えると眠りにつく
これが四十八以上時間続いたのだが
はじめの何時間後からか目が覚めるごと身体が変化していった
指の先から手首の関節 次には、足先から膝の関節と少しずつに意識が通じる
【動く様にになってきた 少しずつ少しずつ答えが返りだしたんだ!】
失ったものを取り戻す喜びに命があるという奇跡は、格別に嬉しすぎる。
三日目の朝 個室に移る前には、不器用だが両手を上げ握ったり開いたりするところまで出来ていた。
薄暗いこの数日間 いままでの価値観を覆す貴重な体験が次々と流れて行った。
素朴な愛との出会い
12月12日
自我欲等の想いも寄せ付けない素朴な働き
看護士達の真剣で献身的な働き
命を繋げるために
心身の病や痛みから解放するために
より多くの笑顔のために
数多くの希望のために
きっとそれだけではないだろう
この働きにの元にどれほどの想いと願いが隠されているのだろうか?
睡眠時間も驚くほど少ないのに働き続けている
白衣の天使ならぬ白衣の戦士が走り続けている
命を救う無償の愛は、涙が出るほど力強い
それは果てしなく強く俺の心を打ち勇気を振るい立たせる
素朴な愛の存在に触れた気がした。
腕の痛み 指先からの麻痺
12月13日
何処まで回復出来るのだろう
この身体はもう回復の見込みがないのか?
掻き消そうにも心の隅に蔓延る(はびこる)不安が重くのしかかる
以前の様に楽器を奏でたい 歩きたい 笑いたい
このベットから立ち上がる事が座る事が出来るのだろうか?
スプーンを握り自分の口に食べ物を運べるのだろうか?
いつになったら いつになったら いつになったら
過去は、とうに過ぎ去ったのに 流れる時の歩みは止っているようだ
想い巡る未来の希望は、自欲となり自身のストレスを重ねて最悪の覚悟ばかりを決意させるだけだった
いま現在だけを観つめよう 生きてるだけで十分じゃないか
先の事に囚われない様にしよう そう考えれば幸せがポツリポツリと現れてきた
肩から肘に掛けての痛みは 筋肉注射の針を刺したままグリグリと針を動かされているようだ
神経過敏と言うそうだが空気の揺れを感じただけで その痛みが腕中を走る
痛いという言葉の代わりに歯を食いしばる息ができないくらいに
こんな痛みとこの先ずっと付き合ってゆくのか なんとか上手くやり過ごさなければ
何か良い方法を編み出せないか 考えてみる 意識の持って生き方でと色々試してみる
【あー出来る分けないか!】
いまは、お医者さんの言う様に痛み止めに頼ろう 明日の挑戦のためにも!
医師のひとこと
12月14日
「早く元気になって仕事に戻れる様 みんなが待っているのだから」
何かの役に立って生きたい
個室への引っ越し
回復の喜び
12月15日聴こえる詩は、聖なる叫び
ベットを離れ車椅子に
集団生活への調和
12月17日
権力者から貧困の人 善悪を定める者から裁かれた人 侵略者から囚われた人
統一され 教育され 指図され 時代の価値に流され
決まり事に囚われ自分自身の答えを失い 周囲の上下左右に現世の方向感覚を見失い
法律や社会のすきまを探して生きようとしてる人がどれだけ居るのだろう
楽をしようと情熱を忘れかけている人がどれだけ居るのだろう
未来の幻に夢を見て現在を失っている人がどれだけ居るのだろう
この星に蔓延る怠慢な思想がいくつ居るのだろうか?
世界は、いつから社会的統一価値感を強め個人の道徳観を疎かにしはじめたのだろう
原始時代の様な野性的な殺し合いから
現代の権力争いと正義と信義の争いは、生命の真理を偽っているの事は、明確だ
答えは、私心の最善とする思想へ忠実に自信を動かして行く事だ
戦い事を嫌い平穏を望むならば自身の世界から奪い合う事を止め争う事を自分の中から消してゆけばいいだけだ
立派な大樹を育つとすれば 土に祈りを込める所から始まる
永い時大地を観極め気候を観極め 適した種が現れ願いを込めなければ
大樹は、自然との共存が許されない
大樹は、必要な時に葉を落とし土を肥やし 果実を育て大地を造りだす
植物は、存在する事で大自然の役目を果たし
動物は、生きる事で大自然の役目を果たし
生きる者は、自我の消えた願いと祈りで大自然の役目を果たして行く
『ただ今があるがままに』様々な思想家や哲学者がよく使う言葉だが
確実にこの表現が的確であろう
自分の歩けると言う事
12月21日
クリスマスカード
12月23日
看護師さん達からのクリスマスカード
リファビリテーション
12月26日
PTSDの恐怖
過去にに善かろうと悪かろうと現在に来てしまっては、どちらでも少しも変わりない
ならばここに起こるひとつひとつの出来事を新鮮に直視すれば全てのものに基礎的理解力を広げることが出来るのだろうか?
思ったよりも身体的に植え付けられた記憶とゆうものは、心の気ずかぬ頃に潜んでいる
プラスティクのコップに入っている水を見るだけで身体が震えだす
眠りに落ちた時に出てくるあの場面に呼吸ができなくなりテルミンの様な音が不協和音を奏でる
いつも同じ悪夢 これも生き続ける糧になるのだろうか?
フラシュバックは、あらえる方向から単純な事から深いものを感じさせ想像させる
あの瞬間 漂う水の中で見た折り重なる光 水平線は、万華鏡のトンネルを造り渦を巻き初めいている様子をみる度
死ぬ事を想像させられ 生きている事すら忘れさせられてしまう
ある時テレビ画面に海が映し出されたのをにた瞬間 吐き気を催すほどの凄まじいトラウマ
人は、時間が解決するのでしょうと慰めの言葉を掛けてくれるが そんな風には、思えない
ずっとずっと付き合っていくならば苦しまぬ様に受け入れなければ
このトラウマが何処から来るのか理解しなければ苦しみからは、解放されない様な気がする。
現在に存在しない恐怖これも何かの教訓かもしれない。
年末の帰郷
音楽への情熱
12月14日早朝パソコンとテープレコーダーを手に脳外科病棟の個室 ベットの上で書き始めていた。
旅に出たいと思っていませんか?
この大きな旅の途中で
変化をしたいと思っていませんか?
この不変の無い世界で
これからも自分の経験は、本質的真理だと少しも思いません
過去は、過ぎ去りいずれ 消えてゆくのだから
今と言う時だけが 新鮮で他にない体験であるから
同じ事など有るはずは、ないのですから
私は、今この時 真剣にに作り上げていきたい
何にも囚われず自由に答えと出会うために生きたいから
過去のある王族は、名を残し地に刻んだ
過去のある文明は、神を差し教えを解いた
過去から個人は、骨を土に血を水にして帰ってゆく 大自然の流れの中で
そして未だに個人は、生き様を手探りで探し続けていく 現世に解き放たれた意識の中で
何の差別も無く 囚われた壁も無く
与えられたひとつにひとつを魂を磨きを掛けて この世の時を駆けぬけてる
どれだけの物質が追求されても精神が発展しても不変であろう
この世でたった一つの不変なもの 魂の大河(流れ)出会えた気がする。
もしもあなたがこの世から解き放たれる前に 大地に遺志を刻むとしたら何を残しますか?
希望は、経験の産物 過去と比較した幻の幸福
欲望は、経験した過去を移した幻の自我
ならば
未来と過去に迷わされてしまわぬように今を理解していきたい
自身の心を極めよう悪しきもののないそれぞれ宇宙に帰るために
解き放たれた後の安住の地は、自信の魂が作る
理解に努めよう 出会う時すべてに
瞬間そのものを幸せに感じるため集中しよう
美しいきものに夢中になり
愛しものに無我を知ろう
無我夢中に生き続けよう許される場所まで
石の上に座り続ける苔の様に
明日東風波希望。
明日ノ予報ハ東風。
波情報ハ諦メ気味。
ドコヲ見テモ
スネヒザスネオ。
諦メナイデ。
情報ハ、アクマデ情報。
本能ヲ呼ビ起コセ!
風ヲ潮ヲ波ヲ
感ジルンダ。
波ハ必ズヤッテクル。
東風ト言ッタラ……。
アノポイント。
チェックシテミマショウ。
波情報ハ諦メ気味。
ドコヲ見テモ
スネヒザスネオ。
諦メナイデ。
情報ハ、アクマデ情報。
本能ヲ呼ビ起コセ!
風ヲ潮ヲ波ヲ
感ジルンダ。
波ハ必ズヤッテクル。
東風ト言ッタラ……。
アノポイント。
チェックシテミマショウ。
