この通常国会に提出されることが決まっている「離婚後共同親権」法案について,朝日新聞2024年(令和6年)1月31日付記事で以下の解説がされており,インターネット上で大きな話題となっています。

 

 

 

 

 

 

 

「朝日新聞2024年(令和6年)1月31日付記事より

 

 

 

 

 

 

 

委員からは「(父母の)対立の渦中に子どもを置く」ことになるとして,父母の合意ができた場合に限定するべきだとする意見があった。

 

 

 

 

 

 

一方,父母の合意を条件にすれば,子と同居する側が「事実上の拒否権」を持つことになり,対立を助長するおそれがあるという指摘もあった。

 

 

 

 

 

 

要綱案は,家裁が親権者を定める際,子の利益のため,父母と子の関係や父母の関係などを考慮して判断することとし,父母の合意を共同親権の要件とはしなかった。

 

 

 

 

 

(中略)要綱案には,親権の有無に関わらず,父母が子の利益のため,互いに人格を尊重し,協力することが明記された。

 

 

 

 

 

 

相手を理由なく排除するような行動があれば,親権者として不適格な事情として考慮されることになる。」

 

 

 

 

 

 

 

この朝日新聞記事で,「相手を理由なく排除するような行動があれば,親権者として不適格な事情として考慮されることになる。」とされている点は,いわゆる「フレンドリー・ペアレント・ルール」が導入されることを意味しています。

 

 

 

 

 

 

現在大きな社会問題となっている①子の連れ去りや,②別居親と子との面会交流の拒否は,いずれも「相手を理由なく排除するような行動」に該当すると考えられます。この1つの条文が民法に加わることで,①や②を行った親は,逆に親権者として不適格であるとの評価が行われて,親権を失う可能性が生じることになります。

 

 

 

 

 

 

この「フレンドリー・ペアレント・ルール」は諸外国では既に導入されており,日本法への導入が求められていたものです。私はこの「フレンドリー・ペアレント・ルール」の規定が1つ加わるだけで,現在の親子法の運用は,「親のための親子法」から「子のための親子法」(チルドレン・ファースト)へと180度転換すると考えています。

 

 

 

 

 

 

まず第一に,親と子とが引き離されず,直接かつ自由な面会交流が保障されることで,親と子との触れ合いが継続するだけでなく,万が一同居親が交通事故や病気などで子の養育を行うことが困難となった場合でも,速やかに別居親による子の養育へと移行することができます。普段から親子の触れ合いがされていることで,子が突然の環境変化を受けることもないのです。

 

 

 

 

 

 

 

第二に,子が両親と同じように直接触れ合うことで,子の脳には「オキシトシン」と呼ばれる「愛情ホルモン」が分泌されることになります。「オキシトシン」が分泌されることで,子は自己肯定感が高くなり,人とのコミュニケーション能力も高くなることが,科学的な調査で分かっているのです。

 

 

 

 

 

 

 

第三に,現在全国で行われている多くの面会交流調停が不要となる,と私は考えています。親と子との直接の触れ合いを制限したり拒否したりすると,逆に自分が親権者として不適格であるとの評価がされるようになるのですから,当然子と同居する親は,別居親と子との直接の面会交流について積極的になると思います。それにより,上で述べた第一と第二の効果がますます増加し,裁判所での面会交流調停も不要となるのです。

 

 

 

 

 

 

 

このように,「フレンドリー・ペアレント・ルール」は「離婚後共同親権」制度と同様に,「チルドレン・ファースト」な法律制度の創造において必要不可欠な条項であると言えます。両親の離婚は,子ども達にとっては自らの意志や努力では動かすことができない事柄です。その事柄により子ども達が不利益を受けない法律制度が1日も早く成立することを,心から願っています。