私と,子の連れ去り違憲訴訟,自由面会交流権訴訟,学校国賠訴訟などで共同して代理人を務めてくださっている大村珠代弁護士が,とても興味深いお話をされている記事を拝見しました。「「子の連れ去り問題」って何が悪いの?「共同親権」を弁護士に詳しく聞いたら「そもそも離婚時に『親権を取り合う』仕組みがどうかしていた」という記事です。
「子の連れ去り問題」って何が悪いの?「共同親権」を弁護士に詳しく聞いたら「そもそも離婚時に『親権を取り合う』仕組みがどうかしていた」
記事では,上でお話した3つの訴訟なども踏まえた,大村珠代弁護士のご意見が述べられています。私にとって,とても興味深く感じたのは,以下の内容です。ご関心をお持ちの方は,ぜひ記事を直接お読みください。
(記事の一部を引用させていただきます)
「日本では警察に頼っても「夫婦げんかは民事不介入」と言われてしまうと聞きます。その部分がそもそも違うのですね。
「はい。アメリカを主とする諸外国ではDVに警察が介入し、被害者の安全を守る仕組みが確立しています。いっぽう、日本では110番通報してもその場で分離とはならず、その後の裁判手続きも長くかかります。本当に命に危険のあるDVが起きていたとしても、接近禁止命令は裁判手続きで得る必要があります。証拠を集めて提訴してと、大変な負担と時間がかかります」
そうですよね。身動きがとれない時間が長すぎるという話は、モラハラの取材でもよく聞きます。
「なので、危険がある場合に『逃げる』以外の選択肢がなく、連れ去りが起きます。このように、日本は逃げる原因となるDVに対する支援が薄いことが問題であり、親権が単独かどうかはその次の段階の問題なのです」」
私は,大村珠代弁護士と共同して担当させていただいている3つの訴訟において,以下の主張を行っています。それは,子の成長にとって最も重要なことは,子が両親と同じように直接触れ合う機会を持つことであり,国や法律制度の役割は,その機会を確保することであるにも拘わらず,現在の法律制度は,そのような考慮がされていないことを意味しています。
離婚という,子にとっては自らの意志や努力では動かすことができない事柄に基づき,子が不利益を受けてはいけないのです。離婚する両親が高葛藤であればあるほど,国や法律制度が子と別居親の直接の触れ合いの機会を確保しないといけないはずなのです。
現在の離婚後単独親権制度は,残念ながらその考慮が全くされていないのです。子が自己肯定感が高く,人とのコミュニケーション能力も高く,成長の過程で脳にたくさん「オキシトシン(愛情ホルモン)」が分泌されるような法制度が求められていることは明白です。国も,子ども達にそのような人物に成長してもらう必要があることは明白です。
そのような意味において,令和6年1月から始まる通常国会に提出されると言われている「離婚後共同親権」の法改正の際には,以下の諸点をぜひご検討いただきたいと思います。それが「チルドレン・ファースト」の法制度の創造において,最も求められていることだからです。
(子の連れ去り違憲訴訟,自由面会交流権訴訟,学校国賠訴訟における原告らの主張より引用させていただきます)
①面会交流は,子が両親と同じように触れ合うことで,健全な成長ができることを理念とした制度であること。心理学者の研究により,親が別居している子については,子が別居親と面会ができていればいるほど,子は自己肯定感が高く,また人とのコミュニケーション能力も高いことが分かっていること。
例えば,科学研究費助成事業研究成果報告野口泰彦(研究代表者)他「離婚後の面会交流のあり方と子どもの心理的健康に関する質問紙とPAC分析による研究」には,心理学的調査から,子どもが別居親と交流を持つことは,親への信頼感において重要な要因となることが確認されたこと,
また,別居親と子どもが満足するような面会交流がされている方がそうでない場合よりも,自己肯定感や環境への適応の得点が高いことも明らかになったこと,この結果は,離婚後も別居親が親としての役割を継続していくことが,子どもの経済的・心理的な成長につながっていくことが示されたことなどが記載されていること。
②近時の科学的研究により,子と親が直接触れ合うことで,子の脳にも,親の脳にも「オキシトシン」という「愛情ホルモン」と呼ばれる物質が分泌されることが分かっていること。「オキシトシン」の分泌が,子どもの経済的・心理的な成長につながっていく科学的根拠である。子が自己肯定感が高く,また人とのコミュニケーション能力が高い人物へと成長するためには,子と別居親との直接の面会交流が必要不可欠であること。
例えば,国立研究開発法人国立成育医療研究センター「乳児期における父親の育児への関わりが多いことが,子どもが16歳時点でのメンタルヘルスへの不調を予防する可能性」では,乳児期における父親の育児への関わりが多いことが,子どもが16歳時点でのメンタルヘルスへの不調を予防する可能性が示唆された,との研究結果が公表されていること。
③沖縄タイムス令和2年(2020年)8月20日掲載の記事「[家族のカタチ離婚の時代に]面会交流「同居親の協力が必要」当事者ら議論」においては,「公認心理師で東京国際大の小田切紀子教授は,「日本の家庭裁判所で決定する面会交流の頻度について「一律月1回,数時間程度」とされてることが多いと説明したこと。「子どもの記憶はキャパシティが小さく1カ月に1回だと(別居親)を忘れてしまう。子の年齢に応じた取り決めが重要で同居親の協力も不可欠」と述べたこと。
④その小田切紀子が作成した発表スライド「海外の共同養育に関する研究報告と日本の共同養育・面会交流の課題と提案」(法務省も参加する「家族法研究会」第4回(令和2年5月19日オンラインにて開催)の研究会資料・参考資料において,「ヒアリング資料2」として掲載されている小田切紀子氏の「海外の共同養育に関する研究報告と日本の共同養育・面会交流の課題と提案」)の7枚目には,以下の記載がされていること。
「子どもの年齢に応じた面会交流
・日本では,裁判所が決定する面会交流の頻度は,子どもの年齢には関係なく,1ヶ月1日数時間程度と一律に決定されることが多い。
・諸外国では発達心理学の研究成果に基づいて,子どもの年齢に応じた面会交流の頻度と時間が決められている。
例)アメリカ・アリゾナ州(Arizona Supreme Court,2009)
・0-2歳は平日2回夕方3-4時間+週末半日
・3-5歳は平日2回夕方3-4時間+週末1泊
・6歳以降は平日1回夕方3-4時間+隔週3泊
・長期休暇や祝日は特別スケジュールとして追加。
・子どもの親との愛着関係の発達,心身の発達ついては,外国と日本の子どもに相違はない。日本においても,子どもの年齢に応じた面会交流の取り決めがなされるべきと考える。」