令和6年1月から始まる通常国会に,現在法制審議会で検討されている法務省が提示した「離婚後共同親権」法改正案が提出されると言われています。

 

 

 

 

 

 

 

この法改正が必要となった社会事象の変化や現行法制度の不備について,ブルームバーグの記事「親の離婚で子どもが板挟みに―共同親権導入に賛否の声」が公表されました。

 

 

 

 

 

 

 

ブルームバーグの記事「親の離婚で子どもが板挟みに―共同親権導入に賛否の声」

 

 

 

 

 

 

 

この記事では,私のコメントも掲載していただいています。以下の内容です。

 

 

 

 

 

 

 

「作花法律事務所の作花知志弁護士によると、「片方の親が勝手に子どもを連れ去ってしまい、会わせないと主張した場合、現状の法制度では、子どもを取り戻すことは非常に難しい」という。最高裁のデータによれば、この10年間に約1000件の「子の引き渡しの強制執行」が認められたが、引き渡しに成功した割合は約3割にとどまる。」

 

 

 

 

 

 

 

この記事では,これまでの離婚後単独親権制度の下では,離婚して親権を失った親が子に会えなくなることが多かったこと,離婚が増えて,少子化が進んだことなどの社会事象の変化と,それに対して現在の法律制度に不備があり,国民の要請に対応できていないことが,とても詳細に記載されています。

 

 

 

 

 

 

 

令和6年1月からの通常国会における「離婚後共同親権」の法改正の議論を見守る上でも参考になる記事だと思いますので,ご関心をお持ちの方はぜひご覧ください。以下では,記事の一部を引用させていただきます。

 

 

 

 

 

 

この記事の中で,私が最も印象に残った内容は,「1993年から断続的に日本に居住し、日本における離婚に関する著作がある人類学者のアリソン・アレクシー氏は「日本では、片親を失うことで子どもの心がどれほど傷付けられるかについて十分な認識がない」と述べた。過去40年間の調査60件に関する2018年の分析は、共同親権の対象となった子どもは心理的・身体的健康により良い影響が認められると結論付けている。」という部分でした。

 

 

 

 

 

私達は,現在の法律制度が子ども達の心をどれだけ傷つけているかを知り,重視しなければならないはずです。

 

 

 

 

 

 

 

子ども達からすると,両親の離婚は,自らの意志や努力では動かすことができない事柄です。その事柄から,子ども達が両親の板挟みにならないような法制度が求められています。親のための「親子法」から,「チルドレン・ファースト」の「親子法」への法制度の創造はもうすぐです。1日も早くそれが実現されることを期待して,令和6年1月からの通常国会を待ちたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ブルームバーグの記事の一部を引用させていただきます)

 

 

 

 

 

 

 

日本は主要7カ国(G7)で唯一、離婚した夫婦に法律上の共同親権を認めていない。離婚の大半は協議か調停で解決されるが、合意できなければ裁判を行う。8割以上のケースで母親が親権者となっており、調停や裁判離婚に限れば、この割合は9割に上る。裁判所が命じる面会交流は1カ月につき数時間に限られることもある。

 

 

 

 

 

 

 

一方の親が他方の親の同意なしに子どもを連れて出ていくことは珍しくない。家庭内暴力(DV=ドメスティックバイオレンス)が疑われる事案などもあることから、正当な行為だと見なされることが多い。日本の裁判所や法律は、主に育児を担っている親が子どもと別居する行為を容認している。一方、残された親が子どもを連れ戻そうとすれば、違法な連れ去りと判断されることが多い。 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、こうした状況が近く変わるかもしれない。家族法制を他の国々の制度により近いものにする画期的な提案が昨年11月に法務省から示された。離婚後の共同親権を導入する案も盛り込まれている。(中略)

 

 

 

 

 

 

 

 

日本では20世紀前半ごろまで、ほぼ全てのケースで父親に親権が与えられ、離縁された妻は実家に戻るよう迫られた。父系中心の19世紀の「家制度」に由来している。

 

 

 

 

 

 

 

しかし第2次世界大戦後、単独親権の制度が導入され、裁判所が子どもの親権を主たる監護者に与える傾向が定着していった。日本経済は1946年から76年の間で55倍に飛躍した。しかしこの経済成長の背後で、長時間労働の「サラリーマン」の台頭に伴う配偶者控除といった制度は、女性を家にとどめるか、働く場合でもパートタイム労働にとどめるよう促すインセンティブとして働いた。働く女性は減り、母親に親権が与えられるケースは急増。その一方で養育費の未払いに対応する制度が不十分なこともあり、夫と別れて子どもを引き取った女性の生活は苦しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

この数年、単独親権制度を巡る批判がますます高まっており、離婚後も子どもと関わりたいと訴える親たちによる集団訴訟が相次いでいる。北九州市立大学の濱野健教授(文学部)は「日本人は従来、離婚して子どもに会えないのは仕方がないことだと諦めていた。今では多くの人が諦めることができなくなっている」と述べた。

 

 

 

 

 

 

 

2021年1月、上川陽子法相(当時)は、養育費が支払われない問題や親子交流の断絶といった子の養育への深刻な影響に懸念を表明。昨年11月、国の法制審議会の部会は「家族法制の見直しに関する中間試案」を取りまとめた。その中で、共同親権の選択肢のほか、一定の養育費を支払う義務が生じる新しい制度や、養育費の請求にかかる負担を軽減するための試案も示されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

未成年者の人口が減少している日本で、両親が離婚した子どもの数は年間約20万人と、50年前の2倍に増加。21年の政府調査によれば、そうした子どもの3分の1は別居親との関わりが最終的に絶たれているという。

 

 

 

 

 

 

 

 

1993年から断続的に日本に居住し、日本における離婚に関する著作がある人類学者のアリソン・アレクシー氏は「日本では、片親を失うことで子どもの心がどれほど傷付けられるかについて十分な認識がない」と述べた。過去40年間の調査60件に関する2018年の分析は、共同親権の対象となった子どもは心理的・身体的健康により良い影響が認められると結論付けている結論付けている。

 

 

 

 

 

 

 

早稲田大学・法学学術院の法学部教授で、法制審の部会委員を務める棚村政行氏は、「家族に対する国家介入はしない方がよい、家族自身がやればよい」との考え方から「日本の家族法では家族が責任を負ってきた」と説明。「離婚後も共同で養育する選択肢が一切ない現状の制度は、社会の実情にそぐわない」ため、共同親権の選択肢も含め「さまざまな家族や親子の在り方に合った法的な仕組みが必要」だと述べた。(中略)

 

 

 

 

 

 

 

 

子どもの親権や面会交流を巡る争いはますます激化している。最高裁判所によれば、2020年には子どもに関する調停・審判の数が07年の2倍余りに増えた。調停の平均期間は約10カ月と、過去最長となった。

 

 

 

 

 

 

 

神奈川法律事務所の大村珠代弁護士は「面会交流を申し立てても半年や一年以上かかることもある。その間に良好な親子関係が崩れてしまう危険性が高い。別居したらすぐに会える仕組み作りが不可欠だ」と話す。

 

 

 

 

 

 

 

作花法律事務所の作花知志弁護士によると、「片方の親が勝手に子どもを連れ去ってしまい、会わせないと主張した場合、現状の法制度では、子どもを取り戻すことは非常に難しい」という。最高裁のデータによれば、この10年間に約1000件の「子の引き渡しの強制執行」が認められたが、引き渡しに成功した割合は約3割にとどまる。

 

 

 

 

 

 

 

日本ではそうした命令を他国と同じようには強制できないと、同志社大学のコリン・ジョーンズ教授は指摘する。家庭裁判所の判断は「最終的にあまり意味がない」という。

 

 

 

 

 

 

 

斎藤健法相は親権制度について、現時点で大臣として意見を言うべきではないとし、「多くの人の意見に耳を傾けながら、結論を出していきたい」と述べた。