法制審議会の部会が令和5年12月19日に開かれ、法務省から「離婚後共同親権」の法改正の素案が提示されたことは,昨日のこのブログの記事でご紹介しました。

 

 

 

 

 

 

その昨日行われた法制審議会の部会では,「離婚後共同親権」の法改正の素案の他にも,重要な議論がされています。それは,別居している親子が定期的に会う「面会交流」について新たな枠組みを盛り込んだ民法改正要綱の原案が示されたことです。

 

 

 

 

 

 

 

その民法改正要綱の原案では,面会交流の具体的な権利や義務の規定を設けることが提案されています。

 

 

 

 

 

 

 

また,その民法改正要綱の原案では,これまで父母のいずれかにしか認められていなかった面会交流の家裁への申立人の範囲を「祖父母ら」親族にも広げることが提案されています。

 

 

 

 

 

 

 

毎日新聞令和5年12月19日付記事/別居の親子の面会交流、祖父母らも申し立て可能に 法制審部会

 

 

 

 

 

 

 

この法制審議会での法改正の記事を拝見して,私はとても嬉しく感じました。なぜならば,①諸外国では,両親の間の面会交流は基本的人権とされており,それを実現するための具体的な権利義務規定が設けられているのに,日本ではそれがされていないことで,別居親と子との面会交流ができなくなっている。それは,国会(国会議員)の立法不作為である,という主張と,

 

 

 

 

 

 

 

②諸外国では,祖父母と孫との面会交流は基本的人権とされており,それを実現するための具体的な権利義務規定が設けられているのに,日本ではそれがされていないことで,祖父母と孫との面会交流ができなくなっている。それは,国会(国会議員)の立法不作為である,という主張は,

 

 

 

 

 

 

 

いずれも私が担当させていただき,現在最高裁判所に係属している「自由面会交流権訴訟」において,原告側から行っている主張の内容そのものだからです。

 

 

 

 

 

 

 

この「自由面会交流権訴訟」では,東京地裁においても,東京高裁においても,「同居親に,別居親と子との面会交流の同意権や許諾権を認めた法律規定は存在しない」という判決が出されました。でも,私の考えでは,それだけでは不十分なのです。

 

 

 

 

 

 

 

両親がそれぞれに対して,自分と子との面会交流を実現するための権利義務規定が現在の日本の法律に設けられていないからこそ,いとも簡単に面会交流が拒否されてしまうのです。「申立人が主張している面会交流は法律上の根拠がない」と判断されるからです。さらに言えば,面会交流の合意や審判の前の段階で,面会不履行慰謝料訴訟を提起しても,請求が認められない理由も,そこにあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

とするならば,日本の国会(国会議員)が行うべきことは,諸外国で基本的人権とされている面会交流を現実化するための権利義務規定の創造であることは明白だと思います。基本的人権とは,人が人として生まれることで当然に有する権利であり,それは国家が与えたものでも,憲法が与えたものでもありません。憲法は,ただ人が有する権利を確認しているだけなのです。

 

 

 

 

 

 

 

諸外国において基本的人権とされる権利が,日本においてだけ具体的権利義務規定がないために実現できないことは基本的人権の性質上背理です。なぜならば,基本的人権が多数決でも奪えないものである以上,国会議員の多数派があえてそれを立法しないことで基本的人権を制限することは許されないからです。

 

 

 

 

 

 

 

さらに申すと,イタリアでは,法律で,祖父母と孫との面会交流は,親と子との面会交流を補う重要な権利とされています。そしてそれも基本的人権とされているのです。アメリカでも全ての州で,法律により祖父母と孫との面会交流が保障されています。諸外国で基本的人権とされている祖父母と孫との面会交流が,日本だけ国会議員の多数派があえてそれを立法しないことで制限することは許されないことは明白だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

令和5年12月19日に行われた法制審議会の部会が終わり,いよいよ令和6年1月から始まる通常国会において,家族法の改正法案が提出されると言われています。「離婚後共同親権」「面会交流の具体的権利義務規定」「祖父母と孫との面会交流」など,私が担当させていただいた憲法訴訟において,「子どもに会いたい」と,必死の思いと願いで原告の方が行った主張の内容が,社会的因子となり影響を与え,新しい法制度が創造される日は近いと信じています。

 

 

 

 

 

 

 

原告の方々のご主張は,私達の心の中にある「正義と公平」に合致しています。そして何よりも,その原告の方々のご主張は,両親の離婚という,自らの意志や努力では変えられない事柄により片親と会えなくなり,とても寂しい思いをされている子ども達を笑顔にしてくれる内容だと思います。1日も早い新しい法制度の創造を期待して,令和6年1月の通常国会を待ちたいと思っています。