令和5年3月29日付で,警察庁から,「配偶者による子の連れ去り」について,「被害の届出等について適切に対応すること」を求める通達が出されました。

 

 

 

 

 

 

警察庁HP捜査第一課/配偶者間における子の養育等を巡る事案に対する適切な対応について(通達)

 

 

 

 

 

 

 

配偶者間における子の養育等を巡る事案に対する適切な対応について(通達)/PDF

 

 

 

 

 

 

 

通達の内容を以下で引用いたします。

 

 

 

 

 

 

 

「配偶者間における子の養育等を巡る事案に対する適切な対応について(通達)

 

 

 

 

 

 

近年,同居する一方の配偶者が,留守中に子を連れて出て行き,以降連絡が取れず子にも会えない,あるいは,別居していた配偶者が,通園する保育園から子を連れ出しそのまま返さないといった訴え出が,子を連れ出された配偶者からなされる例がみられるところである。

 

 

 

 

 

 

この種事案については,重大な被害に発展するおそれもあることから,平成15年3月18日最高裁判所決定(平成14年(あ)第805号)及び平成17年12月6日最高裁判所決定(平成16年(あ)第2199号)をも踏まえ,被害の届出等への適切な対応に遺漏なきを期されたい。」

 

 

 

 

 

 

 

私が担当させていただいた子の連れ去り違憲訴訟における東京地裁令和5年1月25日判決では,「配偶者による子の連れ去り」について,「立法の不作為状態」があることを認めた上で,そのことで日本が国際的な非難を受けていることなどを踏まえると,国会は法規範の制定を議論するべきだ,との判決が出されています。

 

 

 

 

 

 

その判決後に出された冒頭の通達は,東京地裁の裁判官が,「立法不作為状態」により被害を受ける人たちを救済するために,国会が速やかに動くべきだ,と指摘したことも影響して,行政である警察庁が,「立法不作為状態」を埋めるために,この問題の解決を目指して,第一歩を踏み出したように感じています。

 

 

 

 

 

 

元最高裁判事の団藤重光さんは,法の解釈を支える「社会的因子」が存在している,と指摘されましたが,この通達が出されるに至ったのは,突然子を連れ去られた配偶者の方の心の叫びと,さらには,連れ去られる子の心の叫びが「社会的因子」として,影響を与えているように思います。

 

 

 

 

 

 

 

この通達は,配偶者による子の連れ去りが違法であることの1つの根拠となる存在だと思います。でも,東京地裁判決も指摘されているとおり,「立法不作為状態」は続いているのです。明確な立法で「子の連れ去り」が違法と規定されない限り,人々の心の叫びは続くわけです。

 

 

 

 

 

 

求められている立法こそが,まさに「チルドレン・ファースト」の立法であるということになります。私も,子の連れ去り違憲訴訟の控訴審で,そのような立法を創造できるような判決を導き出したい,そのような訴訟活動を行いたい,と考えています。