昨年のことになりますが,令和3年12月6日に,東京地裁で,自由面会交流権訴訟の期日がありました。同期日では,被告(国)の主張書面が陳述(主張)され,次回期日(令和4年3月7日午後2時803号法廷)までに,原告側で反論の主張書面を出す予定となりました。

 

 

 

 

 

また,今日の令和4年1月19日には,やはり東京地裁で,子の連れ去り違憲訴訟の期日がありました。同期日では,原告側の主張書面が陳述(主張)され,次回期日(令和4年4月13日午前11時30分626号法廷)までに,被告側で反論の主張書面を出す予定となりました。

 

 

 

 

 

私の方で,両方の訴訟を担当させていただきながら強く感じるのは,①子の連れ去りの発生と②面会交流の拒否の原因には,民法819条が規定する離婚後単独親権制度がある,ということです。以下の論文は,同制度から①と②の問題が発生する理由を的確に指摘されていると思います。

 

 

 

 

 

二宮周平『多様化する家族と法Ⅱ』(株式会社朝陽会,2020年)47-49頁

 

 


 

 

「3 単独親権の問題点と共同親権の可能性
 

 

 

   したがって,父母双方が子の親権者でありたいと思い,調停や審判になった場合には,お互いの監護能力の優劣を争う。そのために過去の言動を事細かに指摘して相手方の人格を誹謗中傷する。監護実績を作るために子との同居を確保し,別居親に会わせない,実力行使で子を連れ去るといった事態が生じることがある。親権者になれないと,子と会うことができなくなるのではないかという不安が,親権争いをより熾烈にする。子は父母の深刻な葛藤に直面し,辛い思いをする。
 

 

 

     離婚に詳しい弁護士は,離婚紛争にあっても,「父母がそれぞれ,子に対してその責任や役割をどう果たしていくべきか」と発想する前に,「いずれが親権者として適当か」の熾烈な争いを招く現行法の枠組みは,時代に合わないと指摘する。」

 

 

 

 

 

離婚後単独親権制度については,私が担当させていただいた離婚後単独親権制度違憲訴訟において,東京地裁令和3年2月17日判決及びその控訴審である東京高裁令和4年10月28日判決は,離婚後単独親権制度は,離婚した元夫婦が常に共同して親権を行使することを義務付けることは,かえって子の福祉に反する可能性がある,という理由を述べて同制度を合憲であるとした上で,ただし,親による子の養育は,親にとっても子にとっても人格的な利益であり,両親が離婚する場合でも,その人格的な利益は失わせてはならない,との判断を行いました。

 

 

 

 

 

 

今日令和4年1月19日には,同じ東京地裁において,「自然的親子権」を保護する立法を国会が行わないことについての憲法訴訟も期日が行われていました。その訴訟で原告側が求めている権利は,まさに,両親が離婚しても決して失わせてはならない,親と子との絆であり,人格的な利益を意味するのではないか,と私は感じました。

 

 

 

 

 

現在全国の裁判所で,様々な訴訟を通じて争われているこの問題ですが,離婚後単独親権制度違憲訴訟の東京地裁令和3年2月17日判決及びその控訴審である東京高裁令和4年10月28日判決が判示したように,「両親が離婚しても,親子の絆には何ら変わりはなく,人格的な利益である親子の絆を失わせてはならない」はずなのに,現実の社会では,容易にそれを失わせる事態が生じており,人格的な利益が失われている事態を国会が適切な立法により救済してこなかったのではないか,という問題が,究極には問われているように思っています。