私が担当させていただいている東京地裁での離婚後単独親権制度違憲訴訟が,令和2年11月11日の期日で結審しました。

 

 

 

 

 

同期日では,被告国がさらに主張を行いたいと述べたのに対して,裁判所の判断でそれが認められなかったという出来事がありました。私は国を被告にした訴訟を多く担当してきたのですが,国がさらに主張を行うと述べているのにそれが認められなかったのはとても珍しいことです。

 

 

 

 

 

その珍しい出来事が,原告が主張している「親の子に対する親権は,親の基本的人権である。離婚は配偶者との関係の清算であり,親子関係の清算ではない。それにも拘わらず,現在の民法819条2項は離婚裁判に際して,離婚後は単独親権しか選択できない。それは親権を失う親の基本的人権を侵害することである。」という内容が,裁判官の心に響いた結果だといいな,と思っています。

 

 

 

 

 

判決日は,令和3年2月17日午後1時15分から,東京地裁526号法廷で言い渡される予定です。

 

 

 

 

 

原告の主張や,そこで引用した裁判例が美しく描いた,親と子との基本的人権が保障されるような判決を期待して,その日を待ちたいと思っています。

 

 

 

 

 

1 静岡地裁浜松支部平成11年(1999年)12月21日判決は,以下のように判示している。

 

 

 

 

 

 「かくて,子との面接交渉権は,親子という身分関係から当然に発生する自然権である親権に基き,これが停止された場合に,監護に関連する権利として構成されるものといえるのであって,親としての情愛を基礎とし,子の福祉のために認められるべきものである。」
 

 

 

 

 

2 この判決の内容からも,親権が,親子という身分関係から当然に発生する自然権であり基本的人権であることは明白である。
 

 

 

 

 

すると,基本的人権は合理的な理由なくしては制限されてはならない性質を有する権利なのであるから,自然権であり基本的人権である親の子に対する親権を制限できるのは,親から子に対する暴力行為があるなどの,合理的な理由がある場合に限定されることになる。
 

 

 

 

 

そして,離婚はあくまでも夫婦関係の清算させる制度であり,親子関係を終了させる制度ではないのであるから,それが自然権であり基本的人権である親の子に対する親権を制限できる理由に該当しないことは明白である。
 

 

 

 

 

さらに言えば,仮に親から子に対する暴力行為があるなどの,親の子に対する親権を制限する合理的な理由がある場合であっても,民法には,親権喪失の審判制度(民法834条),親権停止の審判制度(民法834条の2),管理権喪失の審判制度(民法835条)が設けられているのであるから,離婚に際して親の子に対する親権を失わせなくても,親の子に対する親権を制限する合理的な理由がある場合には,それらの民法上の制度を用いることで対応が可能である。
 

 

 

 

 

よって,離婚に際して一方の親の親権を当然に失わせる現在の民法819条2項が,自然権であり基本的人権である親の子に対する親権を保障している憲法に違反して無効であることは明白である。